歴史的街並みに想像の余地を感じながら、歩く
晴れてはいるが風はまだ冷たい2月の半ば。歴史的な町並みが残る長野県長野市の松代(まつしろ)地区の中心街を散策してきた。
松代は、真田藩の城下町として知られている。真田といえば、大河ドラマ「真田丸」でも取り上げられた戦国時代の武将一族。もともとは上田と沼田に居城を構え、関ケ原の戦いでは家康の息子である徳川秀忠軍を上田城に釘付けにして遅らせた話は有名だ(このあたり、今年の大河「どうする家康」でどこまで描かれるのか楽しみである)。そんな真田一族のなかで徳川方に付いた真田信之が、大阪の陣の後に上田から移されたのが松代。昨年は信之が松代に来て400年の節目の年で、さまざまなイベントが行われたようだ。
また松代は、第二次世界大戦時に大本営が移される候補地でもあった。跡地の地下壕は一部が公開されているが、今回は城下町風情が残る街の中心部のみを、博物館や城址に立ち寄りながら歩いてみた。(以下、歩いた軌跡の写真が続きます)
古さと新しさが入り交じる松代の街並みを歩きながら、こんなことを考えた。
観光地を名乗る上で、歴史と自然は重要なファクターであることは間違いない。ただし歴史は自然と異なり、当時のままの状態で残すことが難しい。博物館に展示されている古文書や骨董品は当時のままだが、迫力にとぼしい。一方で、観光の目玉となり得る歴史的建造物は、美観や安全を考慮して、立て替えられたり近代的にリニューアルされていることが多い。そりゃそうだろう。
ただ、そうした"上塗り"された歴史は観光地としての価値はあるが、私はあまり好きではない。上塗りされた時点で、過去から現在に至る時の流れがプツッと遮断され、当時の人々の息づかいが感じられなくなるからだ。
だから私は、時代から忘れ去られたような寂れた街なみに、強く惹かれる。それこそ時が止まったように見えるので、昔の人々や暮らしぶりを想像する余地が生まれるのだ。
今回散策した中では、旧松代駅のたたずまいに惹かれた。ここだけがセピア色に見えて、過去から続く時の流れを感じたからだ。駅前に残っていた「煮干しラーメン」の店の跡からは、電車が止まり駅で降りてラーメン屋に駆けこむ人々の姿が想像できた。
そんな時が止まったような「セピア色スポット」が見つかるのも、街歩きの楽しみ。しかし、そんなスポットは年々少なくなり、朽ちていくか失われつつある。昭和の頃の遺物は、一体いつまで残るだろう?100年後には、令和の今が「令和レトロ」などと呼ばれて回顧されるかもしれないが、時の流れを感じる心は失いたくないものだ。
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