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1株当たり当期純利益(Earnings Per Share, EPS)とは?

最近はあまり投稿していなかった、お金に関する記事を久しぶりに書きます。

今回は1株当たり当期純利益(Earnings Per Share, EPS)について紹介します。


1株当たり当期純利益(EPS)とは?

1株当たり当期純利益(Earnings Per Share, 以下EPS)は、企業の利益を株主が実際に所有する株式数に対してどれだけ配分できるかを示す指標です。株主が所有する株式のある一定期間における企業の成果を示す指標となります。

指標の求め方

この指標を計算方法ですが、ざっくり計算の場合は「当期純利益÷期末株式数」となり、正確に求める場合には「当期純利益÷期中平均株式数」となります。
期中平均株式数とは、ある一定期間の株式数の平均値を指します。
なぜEPSを求める時は期中平均株式数を使用するのでしょうか?

EPSの計算で期中平均株式数を使う理由

この指標を計算する際に期中平均株数を使用する理由は以下の通りです:

  1. 株数の変動を考慮するため
    企業は通常、期中に新株発行や自己株式の取得、ストックオプションの行使などによって株式数が変動します。期末の株数だけを用いると、これらの変動を正確に反映できません。例えば、期中に新株を発行した場合、期末株数は増加しているため、期末株数のみを用いると実際の利益配分が過小評価される可能性があります。

  2. 正確な業績評価
    期中平均株数を使用することで、1年間を通して企業が稼いだ利益をその期間中の平均的な株主数で割ることができます。これにより、株主が実際に受け取る利益の分配をより正確に反映できます。これは企業の業績を評価する上で重要です。

  3. 比較可能性の確保
    期中平均株数を使用することにより、異なる期間や異なる企業間でのEPSの比較が容易になります。期末株数のみを使用すると、期間中の株数の変動による影響を無視することになるため、企業の業績を正確に比較することが難しくなります。

このように、1株当たり当期純利益を計算する際に期中平均株数を使用することで、企業の利益配分をより正確かつ公正に反映することができます。これにより、投資家は企業の実際の業績をより正確に把握し、投資判断を行うことができます。

計算時の注意点①:自己株式の取り扱い

世の中色んなことを考える人がいるように色んなことが株でも発生します。
このため、EPSを計算する際にはいくつか注意点があります。
まず、一つ目は自己株式の取り扱いです。
おさらいになりますが、1株当たり当期純利益とは「企業の利益を株主が実際に所有する株式数に対してどれだけ配分できるかを示す指標」です。
株主が実際に所有する株式数に対して」の指標なので、期中平均100万株の株を発行していたとしても、期中平均で10万株を自己株式として保有している場合「株主が実際に所有する株式数は期中平均90万株」となります。

自己株式をEPSの計算時の株式数から除く理由

自己株式は会社が保有しており市場に出回らない株です。
正確には、「過去に流通していた自社株を、企業が対価を払って回収したもので、それ自体に価値はない」株となります。
また、会社法453条に「株式会社は、その株主(当該株式会社を除く)に対し、剰余金の配当をすることができる。」と書いており、自己株式は配当もない議決権もない株式となります。
このように自己株式はそもそも企業の利益配分先として認められていないのです。
そのため、自己株式はEPSの期中平均株式数を求める際の株式数に含めないで計算することになります。

計算時の注意点②:潜在株式の存在とそれを考慮したEPS

この1株当たり当期純利益ですが、新しく購入できる株が増えた場合増えた分だけ利益の分配先が増えるので、EPSは減少します。

そして、株の中には今は出回っていないが将来出回る可能性がある株が存在します。
他に何があるのかあまり分かっていませんが、代表的なものに新株予約権というものがあります。

これは名前の通り新しい株を予約できる権利で、例えば、従業員にボーナスを払う代わりに新株予約権をあげるといったことが行われます。
会社にとってはお金を支払わずにボーナスを出せる非常に便利なシステムです。
この新しい株を予約していた権利を従業員が使うと予約していた新株が発行され従業員の手に渡ります。
もちろん、手に入った株は普通に売買できる株なので、これを売って利確することで、従業員はボーナスを手にすることができます。

こういった株は現段階では市場に出回っていないので、当然EPSの計算にも入っていません。
しかし、新株予約権がもし全て発行された場合のことを考えておかないと「ある日突然新株がやたら発行されてEPSがめちゃくちゃ小さくなってしまう」といった事態になるかもしれません。

そこで、それを考慮した潜在株式調整後というものを計算した情報も併せて投資家に伝えることで誤った投資判断をしないように防いでいます。
これも先ほどのEPSと同様の計算方法で将来の株式の増減を含めた期中平均株式数を求めます。

注意点③:潜在株式の計算時に当期純利益の調整をする場合

潜在株式調整後のEPSでは「もし、潜在株式が全部普通株式になったら」という仮定のもと潜在株式を計算しました。
そして、この仮定で変わるのは株式数だけではありません。場合によっては当期純利益も動きます。(色々ありすぎでしょ!)
凄い雑な例えでいうと、「普通株式にする前だったらお金が企業からもらえる時」です。

新株予約権を持っていたら、持っているだけで毎年100円が企業からもらえるようなことがあった場合、潜在株式の計算をするときに全部普通株式にすると仮定するとこの100円はどうなるでしょうか?
単純ですが、新株予約権を持っていたらもらえるものなので、普通株式になってしまうと100円企業からもらえなくなります
逆に企業から見ると普通株式になったことで100円支出が減った結果、当期純利益が100円増えます。(最初に気づいた人マジで天才だと思う)

というわけで、潜在株式の計算をする際にもし普通株式にしたことで払わなかったり、払ったりするものがあれば、その金額の増減分だけ当期純利益の金額を調整したものが潜在株式の計算時の当期純利益となります。

まとめ

今回は一株当たり当期純利益(EPS)について紹介しました。
会社が色々なことをすればするほど、色々な処理が発生する奥深さが伝われば幸いです。(こういうのを色々とパッと判断できると良いなぁと思います。)

なお、勘の良い方や自分と同じ体験をした方なら、EPSの記事を唐突に書き始めた理由を色々と察するかもしれませんが、細かいことは気にしないでください。まあ、そういうことです。

今後もこういった記事をちょこちょこ書いていくつもりです。
見当違いのことを書くこともあるかもしれませんが、気づいた時は優しく教えていただけると非常にありがたいです。(色々と 教えてください 偉い人! by Cosmo)

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