白杖使用者の冒険―電車のホーム(方向編)

1か月に1回とは言え流石にもう慣れた行き帰り、帰りの乗換えで、ホームへ行くまでの位置や道筋もいつもと全く一緒であったのにも拘わらず、反対方向の地下鉄にのった。

ホームへ行くまでの階段やらエスカレーターなど、位置を間違えると向きが変わるため、ホームに着いた時、左右どちらにどちら行きの電車が来るのか判別が難しい。
そのため、どのエスカレーターに乗りどのエレベーターに乗りどの階段を使うか、必ず同じ道で行くのだが(そもそも大きな駅ではないのでわかりやすい)、エレベーターを出て右側の電車に乗って帰るところを、全く自信をもって左側の電車に乗った。

行くときはまず最初の電車はホームに着いて左側、乗り換えた時エレベーターを出て左側(どうやら帰宅時これが頭で再現されてしまったらしい)、帰りは反対方向なのでエレベーターを出て右側、乗換えでホームに出て右側。

ブラインドマップは、こういうところが、覚えるのになかなか混乱しやすい。慣れて少し気が抜けた瞬間やら少し考え事でもした瞬間にこういうことが起こるのだろう。

ちなみに、これはなかなか予想外ではないだろうか。
電車のホームは、非常に人の助けを求めにくい。
そもそもどこに人がいるのかがわからないので話しかけにくいのだが、ホームは特に静かに音も立てず立ち止まって待っている人が多いわけなので、人がどれくらいいるか特定できない(よほど混雑した駅は別だが、それはそれで人が多すぎて方向を特定できず話しかけにくい)。
そして、これも予想外ではないだろうか、駅のホームは、あまり声掛けをいただけない場所のひとつ(私の体験上)。
ただ、我々にとって、駅のホームで両側に線路がある場合、どちらが何番線なのか、どちらにどちら方面の電車が来るのか、非常に判別が難しいことのひとつ(ホーム扉の点字板を探り当てて読めば判別できるが、視覚障碍者の点字識字率は実は非常に低い。私はそれでも点字の読み書きができるが、解読には非常に時間がかかる上、どこで誰が待っているか並んでいるかわからない中で点字表記を探り出して解読をし始めるという行動は非常にしにくい…。)
慣れた場所であっても、我々は電車のホーム表記や行き先を確かめずに、記憶でどちら側のホームか、時として勘で待つ。もちろんアナウンスは大きな手掛かりなのだが、「〇番線に〇〇行の電車が…」と言われても、そもそもどちら側が〇番線だかがわかっていないため、なかなか賭けが多い実情がある。
駅はお急ぎで移動される方もおられるだろう。お急ぎの方はもちろん目的を優先していただきたいが、そのお急ぎで動かれる方の邪魔になったりしてしまわないためにも、もし可能な時は、駅やホームで白杖使用者を見かけたらぜひにも一言で良いのでお声がけいただけますと、非常に助かります。

ふと思えば、今日は帰宅時、乗り慣れているはずの最寄り駅のエスカレーターも、なぜかやたらと長く感じた。
本日、別に体調が悪かった自覚もなければ、心が波立っていたようなこともない。寧ろ調子も良く落ち着いていた。それでも、普段と何やら周囲の把握状態も何か違ったのかもしれない。
我々は、日々、どうしても僅かなことで把握状況に大きく差が出ていたり勘が狂ったりするのだということ、そして慣れた場所でも自信をもって道筋を辿ることができている時でも油断はしてはならないのだと、改めて認識をもった。

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