催眠療法士の不思議なところ

先日、催眠療法というものの勘違いされていることの多いと思うところを払拭する記事を挙げました。

今回は、催眠療法士がそうやって不思議がられる、ともすれば魔術的だと感じられてしまう例えをひとつ、出してみようかと思います。

実は、現在進行形の私の最近の日記でもあるのですが。

私は現在、セッションとしてはほとんどがオンラインなのですが、私自身、今はとても年数の古い建物の一室に住んでいます。確か、築年数30年以上だったでしょうか…。
壁もなかなか薄いようで、外の音が良く聞こえてきます。

そんな中…つい数週間前、この建物の、しかも窓の真向かい(3、4メートルという距離)で、なんと、アパートの解体工事が始まりました。

私個人、日中はまあ…大変です。
どかんどかん、がしんがしん、がしゃーん!かーん!!
今、鉄骨、落とさなかったか?!大丈夫か?!という勢いです。
機械による掘削音というのでしょうか、これはもう、自分の家が解体されているのではないか、もしくは、歯医者で暮らしているような気分です。

最初は、これで仕事ができるだろうか、もし問題があるようだったらどうしたら良いだろう、工事業者に電話をしたところでどうできる話でもないし…と、思っていました。

…しかし、思い直しました。
これは催眠療法士の腕の見せ所ではないか。


…現在、いつもと変わらず週に何度かオンラインセッションを入れていますが、全く問題ありません。

もちろん、PCのマイクには当然、恐らく私の声と同等かそれ以上に入る音です。
ですので、最初にクライアントさんには内心ご不便お掛けしますという意味で、何が起こっているのか説明はします。
しかし、それと同時に、ある、暗示をかけます。
これが、催眠療法士にできるせめてもの、そして唯一の、クライアントさんが工事の音に妨げられず、セッションを受けることができるための、魔法です。

今のところ、クライアントさんのほとんどは、全く問題なく、寧ろ更に集中できて、セッションを受けることができるようになっています。
ほとんどは、と書いたのは、私の”魔法”の効果がどうであったか詳しく聞いていないだけであって、実際、今のところ全員、全く問題なく、そして気になっていないようです。

前回の記事において、催眠療法士というのは、クライアントさんの潜在的可能性を拓く、そして自己治癒力を極力働かせることができるようになることをお手伝いするものだと書きました。

これも、ただ、その一環です。
数メートル隣の工事の音がまるで気にならなくなる?逆に更に集中して受けられるようになる?そんな魔法のようなと、思うかもしれませんが、ただ、催眠療法士に唯一お手伝いできること…クライアントさんの中の潜在能力を引き出すお手伝い技術を、応用しただけの話なのです。

クライアントさんは、私とオンラインで、セッションを共有するため、つまりセラピーを受け、私の声を聴き、自身の回復に集中するために繋いでいらしています。
私は、クライアントさんに何もしませんが、ただ、クライアントさんがその”目的”を達成できるよう、そちらの方向へ行くことができるためのお手伝いをした、それだけです。

これは…別にクライアントさんにやりたくないことをやらせるわけでも、操るわけでもないですよね。

クライアントさんが”望んでいること”を、お手伝いすることができる(というよりもクライアントさんの潜在意識の計り知れない力の開花に、協力することができる)のが、催眠療法、とも、言っても良いかもしれません。

当然ながら加えておきますが、これは、クライアントさんが一切騒音が気にならなくなるとかどんなうるさい環境でも生きていけるようになる処方箋などでは、ありません。
ただ、私とのセッション中、ご自身の目的、やりたいことを、達成できるようになるだけです。

それはそうですよね、「私は工事の音を気にしたいんだ!うるさいうるさいうるさーい!!とずっと思っていたいんだー!!」というならば、わざわざオンラインで、貴重な時間とお金を使って私のセッションに繋いで電波越しに工事の音を聞きに来なくても、実際工事現場に足を運んでいつまででもうるさいうるさいうるさいと思っていれば良いわけですからね。

催眠療法士はあくまで、クライアントさんの目的を達成するための寄り添い(手助け)と、方向が迷わないためのほんのちょっとの介添えをするものです。

ミルトン・エリクソンは、こんな例えを出しています。

「私が学生の頃、帰り道、私達の目の前にいきなり馬が飛び出してきて、近くの農場へ入っていった。手綱と鞍はついているのに、飼い主が見当たらないので、私は馬にまたがり、馬を落ち着かせ、道へ出た。馬は正しい方向を知っていると思ったのでね。馬はそのまま小走りをしたり、思いっきり駆けたりした。たまに道を走るのを忘れて、近くの草場に入って草を食もうとするから、私はただその時だけ手綱をひいて、馬に今は道を走るんだよと思い出させてやった。
そうしていると、馬を見つけた場所から4マイルほど遠くへ来たとき、やっと馬はある農家へ入っていった。農家の主人が私を見つけて言った。『これはうちの馬だが、この馬はどこにいたんだ?』『ここから4マイルほど離れたところです』『私は君と初めて会うと思うが、どうしてこの馬がうちの馬と知っていたんだね』『僕は何も知りませんでした…馬が知っていたんです。僕はただ馬の注意を道に向けていただけです」

エリクソンは教育現場でこの例を用いたようだが、心理療法とはこういうものではないでしょうかと締めくくっている。


馬が、自分の来た道、自分の家を知っていることが、不思議だろうか?

私(催眠療法士)にとっては、クライアントさん達皆さんの潜在意識が、それぞれに、必ず、自分の方向、行くべき道を知っていることは、まるで不思議なことではありません。

ただ、ひとつだけ、つい不思議に思ってしまうことは、私自身が暗示をかけておきながら、セッションの最中やはり突然、突発的な音が聞こえた時には、私自身がびっくりし、さすがに大丈夫だろうかと思うこともあります。
しかし、私よりも、クライアントさんの方が、断然、気になっていないのです。
暗示が効いただとかなんだとかいう話ではなく、つまりそれだけ、クライアントさんの中には、セッションに集中するという「動機、目的」があり、そしてクライアントさんはそれを自分で「実現する」力をたっぷり心の底に眠らせている、ということなのです。


催眠療法士は、ヒトの脳と心の可能性、可塑性を信じることができる、ありがたい、素晴らしい役割です。


心理セラピー他、セミナーなど拡充しております。来年よりは資格取得講座も開催してまいります。
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