見出し画像

トマトが実った。

2021年5月14日、朝起きたら鉢植えのトマトがうっすら赤くなっていた。

発端は2020年11月末。サラダを作ったあとのまな板に、7つぶトマトのタネがくっついていたのだ。指さきでつまんでなにげなくスポンジの切れ端にのせ、ヨーグルトの空きプラ容器にいれて水にひたした。ほんの気まぐれだった。10月に引っ越しし、日当たりのよい南向きの窓ができたから、ちょっと試してみたくなったのだ。

期待もせず 3、4 日が経過したころなんと7粒ぜんぶからかわいいふた葉が芽吹いた。

わーお なんてこった 芽がでたぞ

感染症拡大前のごく早い時期からさいわい夫婦ふたりとも在宅勤務だったのだが、さほどひろくもない仕事部屋はとても殺風景だ。どこにも行けずもんもんと気がつまる。

緑がほしい、家じゅうジャングルみたいになってほしい、家でキャンプしている気もちになりたい、いいからとにかく緑くれ……

この緑への渇望がトマトの神につうじた。プラ容器からひょろひょろ伸びた芽はものの1週間で20cmちかくまで育ち、そのままだと倒れそうだった。ちかくの園芸用品店にかけこみ、園芸のエの字もしらん夫婦が、はじめての園芸セットみたいなんを買ってきて、ベランダでおそるおそる鉢に植え替えをした。

トマトおそるべし。

あれよあれよというまに150cmにまで成長した。うおおおおおおおおい、でっかいなあおまえら、よし新しい鉢だ、追加の土だ、なんかしらんが棒? ねぶし? ねぶしってなんやねん? とにかく一番背の高い棒を買えばええんやな? といいながらまたいろいろ買い込んだ。結局合計 3 回植え替えした。

緑を愛でるのがそもそもの目的だったので、まあ期待はしてなかったわけだが、あっというまに7株のジャングルできあがり (おかげで仕事中めちゃくちゃ癒やされました)。

ふふふふ、私にはな、振り返ればトマトがいる。緑が目に優しいんや。たぶんいつかは食えるしな。いいにおいもして癒やされる。そしていま部屋めっちゃ狭い。

ひとつめの花が咲いたのが2月頃で、はじめての実がついたのが 3 月末、途中家をあけて4日ほど水やりできないことがあったので水やりソリューションをめちゃくちゃ頭しぼって考えて実装し、雨が降れば室内に移動、晴れればベランダに移動、鉢が重くて日当たりのいいところに動かしづらいから台車7台導入、とまあトマトに振り回される生活がつづいた。この間は寝ても覚めても、過保護なくらい頭んなかはトマトでいっぱい。「じゅふーんたーいむ」といいながら歯ブラシでちまちま受粉活動もした。それこそ「初孫のトマト」ていいそうなぐらいトマト漬けの生活。

そうして育てたトマトの実の赤変は唐突にやってきた。5月14日の午後。「はい、16:00 になりましたので今から色づきますね!」とばかりに午前中は真緑だったのが午後には赤くなりはじめ、翌朝はほとんど売り物レベルで赤くなった。あっちゅうまに赤くなった。

あまりにもおもしろかったので、売り物のトマトを並べて色や形や大きさを横において比べてみた。

そうして並んだトマトをみてたら農家の方々に無限の感謝したくなった。

売り物にくらべたらずっと見劣りのする小さくておそらく甘くもないこのトマト。これをわれわれは11月からめっちゃ構いまくって育ててきた。150円とか200円とかで売ってくれよっていわれたら全力で阻止するくらいかまってきた。ところがわれわれはふだん、この苦労を農家のかたにぜんぶまるっとアウトソースすることでうまいトマトをもりもり安く食べてきたんだよな。

いやもう農家のひと、まじ神じゃね。ありがとうありがとう農家のひと。

ということで、いまわれわれのもとには赤く色づきはじめたトマトが 3 つほど控えている。うれしい。市販のトマトと毎日色をくらべ、そのときがきたら食べたいと思う。そしてそのときあらためて、農家のひとに感謝したい。

2021-05-18 追記

朝とれのトマトを朝食にいただいた。きっと水っぽくておいしくないだろうと思っていたらふつうに売り物と遜色なく美味しかった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?