ゲ謎を観た、あの村とまではいかないが限りなくあの村に近い環境で育ってきた人間の感想



タイトルのまんまです。
私が観たときに「ウワ〜わかる〜あるあるよね〜^_^」となったシーンがどうやらあるあるではないらしいのでまとめます 因習村ではないですが要は田舎の良いところ育ちのお嬢さん(今回は私のセクシュアリティーを無視し完全なる「女性」としての視点を主軸にします)の苦悩とその描写の巧みさについて触れていこうと思います

当たり前のようにネタバレがあるのでお気をつけて。


1. 普通の人は全員着物で親戚の従兄弟の再従兄弟くらいの規模の集会に招集されない

まずこれです。マジでこれ、ある。

どういった機会にと聞かれればマァ大体「誰々が死んだ」「誰々が帰ってきた」「誰々が子供を産んだ」「誰々が一族に名誉をもたらした」がメインです。


以下私の略歴です
・親や親戚の一存で全て進路を決められ小学生の頃から過酷な教育虐待をしっかり受ける
・中高一貫校に進学するも成績不振で焦った母親が無理矢理私立へと転校させる
・両親のため、一族のためなんかになるかと必死に勉強し東京の私大に合格
・地元から逃げるも精神を病み中退しネイリストになる予定←イマココ

このような人間が一族から出ると、それはそれは酷い目に遭います。

私が産まれた当時、ゲ謎の遺言書読みのシーンのように親戚一同が集い祝ったそうです。何をされたかは知りませんが。その頃からあそこの子供さん幾つだから何時になったらお見合いを、等のことも既に決められていました。(実際にお見合いはしていません。良かった〜)

少し時が過ぎて私が小学二年生の頃、父方の祖父が亡くなりました。祖父は満州生まれの中国人で帰化した者で、とあるスポーツ分野と政界と行ったり来たりする程の所謂“要人”でした。勿論一族にとってもです。葬式代はウン千万を超え、小学二年生の私にもマイクが回ってくる程でした。テレビで見た事がある人も大勢居ました。
あの頃は「お祖父様は凄い人だったのよ」と教えられましたが、イマイチピンと来ないままでした。小学二年生に分かるわけもありません。しかし祖母や祖母の兄妹は皆口を揃えて「惜しい人を亡くした」と語っていたのは覚えています。

教育虐待が始まったのは上記の事が起きてからすぐでした。とある有名塾に押し込まれ勉強漬けの日々。帰るのが夜遅くなる時に親戚が迎えに来ると、運転手さえもが「竹原お嬢様には立派になっていただかないと」と。そうです、私は隔世遺伝のケが強かったため、祖父と同じように期待をされていたのでしょう。この時点でお気付きかと思います、普通は「お嬢様」などとは呼ばれないそうです。東京に出てからびっくりしました。そして私はこの頃から勉強よりも小説を読むことに熱心になっていたので成績が果たして届くのか、という議論がよく家の中で為されていました。
塾に行きたくないと言えばランドセルをゴミ袋に入れられそうになり、「塾に行かないなら学校にも行くな」と教科書さえも捨てられそうになり。過呼吸になりながら土下座して「わたくしが間違っておりました。お許しください、お母様」と懇願したことはよく覚えています。母は忘れています。死ね。

行く学校を親から一方的に決められ最早生きる気力さえ無く抜け殻になっている私は粛々とそれに従いました。が、無理に入った学校です。もしかしたら賄賂なんぞもあったかもしれません。そこでは教師からの虐めがありました。そして、成績不振により焦った母親によって別の高校へと転校させられました。

この時です。着物強制集会。
大人たちがこぞって私を非難し、責め立てました。私は背筋を伸ばして、泣いてはならない、泣いてはならない。その一心で紋付きを握り締めていました。勿論責められるのは私に両親もです。連帯責任。実は父と母は特殊な経緯での結婚で、母は一族から軽蔑の眼差しを受けていました。なんて不出来な嫁なんだ、子供一つまともに育てられないなんて。嫁失格だ。一族の恥だ。大勢の前で、このような事を、です。本当の話です。母は必死に頭を下げて必ずや地元の良い大学へ行かせますからと言い回っていました。異変に気付いたのはこの頃です。

何故彼らは私たちの人生を勝手に決め付けるのだろう?
そもそも一族の恥というのは何なのだろう?
それは私にどう関係するのだろう?

少なくとも私の読んでいた小説——主に村上春樹やハリーポッター、今ではあれらの作品を素直な目では見れませんが——では少年たちは自由に生き、女性も男性も自由に恋愛をし、結ばれる時もあればそうで無い時もある。私には、これが無かったのです。

それから私は人が変わったように勉強をし始めました。目的はただひとつ。指定校推薦で東京の大学に行き、この忌まわしき地元(書き忘れていましたが、私の出身は東北の方です。津波の影響があった辺り、と言えば想像しやすいでしょう)から逃げるため。先生にあと3点だけくれないかと生徒たちの前で泣きながら懇願したこともあります。無事点数を貰えて私は東京の大学に進学が決まりました。

ハイここで強制着物集会。
始まりました、私と母親への一斉非難。
召集令状——要は電話ですが——が来たら終わり、拒めばどんな嫌がらせを受けるかは目に見えています。出席しないことは「有り得ない」のです。東京何ぞに出たら阿婆擦れになって帰って来るに違いない、この親不孝者め、恥を知れ。私の頭の中は東京で過ごすことひとつになっていたのでこの時はそこまで堪えませんでした。然しまた頭を下げ回っている母親を見ると確かに親不孝かもな、と思いました。

集会で褒められるときもありました。
私が文学賞を獲ったときです。その時ばかりは、周りの着物人間どもも優しかったものです。

マァ東京に出て鬱病発症躁転躁鬱確定演出実家強制帰還の今(12月6日現在)は、まだ私が帰ってきている事を知らせていません。どんな目に遭うか分からないからです。恐らくは矢張り東京など行かせるんじゃなかった、ホラ見た事か、傷モノの女を娶るような男がどこにいる、エトセトラ、エトセトラ。容易に想像できましょう。

余談
強制着物集会のおかげで、私は母から15分で自分で着物を着れるようになりなさいと言われ続けて小学生から自分で着物を着ています。最近は集会に行っていないこと、東京に出た事で着物そのものへの嫌悪が無くなりつつあります。良い事です。


2.普通は小さい頃から「さん」付けはされない

次にこれです。
未だに母は私のことを「さん」付けで呼びますし、父からは「娘」と呼ばれています。サヨちゃんの事を見てあの年頃から「さん」付けだったことがすごく、めちゃくちゃ親近感が湧きました(湧くな)
ド田舎では女が産まれれば早く大人になれとばかりに——つまり子供を産めるように、という意味です——家事洗濯料理テーブルマナー等を叩き込まれます。
祖母が箸の持ち方を、両親がナイフやフォークの使い方を、教えてくれました。お陰様で会食の場で困ったことはありません。

ただ、私も母や祖父母から「竹原ちゃん」と呼ばれたかったな、という思いはあります。

小さい男の子は基本的に呼び捨てです。トキヤくんと一緒ですね。あの辺もリアルで良かった〜〜〜!すげぇ分かるの顔になってた。

3.意地悪なお姑がいる

ハイ、乙米のような人間、いる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ちゃんといる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!し何なら全然長田もいる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

私のことや母のことを蛆虫でも見るような視線で刺してくるババア、我が一族(世界一使いたくない言葉)では2、3人います。気になって家の中をひっくり返して家系図を見たらアアこのババアここの嫁さんだったのかヘェそうなんですね〜となりひどく納得しました。お分かりでしょうが、私たち家族は一族の“恥”であり、ストレス発散の的です。子供の教育すらまともにできない嫁と祖父の功績を蔑ろにして後を継がなかった父親と精神病質者で東京に逃げた阿婆擦れ女、これが私たち家族への評価です。

一族とは、如何に功績を残し優秀な子供を産み育てるかが重要です。何故か?土地を守り継ぐため、この血統が途絶えないようにするため、多くの金を手にして少しでも遺産分与で儲けるため……言い出したらキリがありません。オソロシイものですね。

まとめ 水木にめちゃくちゃ同情した

はい。同情しました。サヨちゃんが夢見るのも分かります。私のかつての姿そっくりでした。東京に出れば何か必ず違うはず、と。でも結局その一族の者である以上死ぬまで逃げられないのだと、何処かで悟っていました。私もサヨちゃん怨霊パワーがあれば良いんだけどなぁ。
水木への視線だったり疑いだったり、そういったものはマジで分かります。水木側になって帰って来たときのあの疎外感と周囲の不信感と怒りと。一族に何か悪いものをもたらしそうな者は徹底的に排除されます。私がギリ排除されてないのは「身体が女」だからです。そういう世界なんです。両親にノンバイナリーをカミングアウトしたときもマジで受け入れてもらえませんでした。これ以上一族の恥になる気かと言われました。笑えますよね。そこまでしてあの人たちが守りたいものって一体何なのでしょう。富?名誉?名声?ゴールドロジャーじゃねぇから、お前らは。目ェ覚せよクソボケ老人ども。


次の強制着物集会では「結婚しませんガキ産みません」宣言して除け者にされて自由な人生を歩んでいこうと思います!ゲ謎に勇気もらえました!ぶっ壊そう、ああいう村的なサムシング!!死ね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



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