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人の気持ちとお金の関係


みなさんこんにちは! こしあんです。

ちょっと前まで、「趣味を仕事に!」といったフレーズをよく聞きましたが、趣味でやっていたものがお金を貰ったとたん急に「面白くなくなった」という経験をしたことはありませんか?

あんなに楽しかったものがどうしてこんなにも苦しく感じるのか。

もちろん、その一方で趣味を仕事にして楽しんでいる人たちもいます。

この違いは何なのか?

それは、あなたが仕事をどちらの規範で捉えているかによって大きく変わってきます。


今では、私たちは2つの異なる世界に生きていると言われています。

それは、1つは金銭がなければ成り立たない世界で、もう一つの世界は金銭は介在しない世界です。
研究者たちはこの2つの世界を「市場規範が規則を作れる世界」と「社会規範が優勢な世界」と呼びました。

実は、この市場規範と社会規範がごちゃ混ぜになると、仕事や対人関係で思わぬ失敗をすることがあります。

今回は、そんな混ぜてはいけない2つの規範についてのお話です。


【社会規範と市場規範】

社会規範と市場規範には大きく3つの特徴があります。
〈社会規範〉
①金銭のやり取りはない
②すぐにお返しをする必要がない
③コミュニティで見られる

〈市場規範〉
①金銭のやり取りがある
②対等な利益や迅速な支払いがある
③ビジネスで見られる

といった特徴です。

この2つの規範はきちんと分ける必要があります。


たとえば、夫(妻)の実家に帰ったとき、義理のお母さんがもてなしてくれて、いろんな料理がテーブルに並んでいるとします。
その時、社会規範で成り立っている世界に市場規範を持ち込むとどうなるのか?

市場規範の思考になっているあなたはこんなことを言ってしまうかもしれません。
「お義母さん、この料理にいくら払えばいいですか?5000円くらいでしょうか?」
相手はムッとするかもしれませんし、呆気にとられるかもしれません。

まぁ、相手のことが嫌いならこの手の方法は効くかもしれませんね(笑)

他には、家に帰ってきて夫(妻)に「1万円で私と寝てくれ」なんて言ったとしたらどうなるでしょうか。
怖くて言えませんよね(笑)

これは極端な例ですが、社会規範を市場規範に切り替えてしまうと大変なことになります。
人は「ちょっと頼みたいことがあるんだけど、聞いてもらえる?」と言われた時、社会規範が働いています。
仲のいい友人なら二つ返事でOKを出すでしょう。

しかし、これが「時給500円でちょっと手伝って」と言われた場合、市場規範の視点で物事を捉え始めます。
そうすると、損得勘定で考えるので「割に合ってないな」と冷静に判断したりするわけです。

実はこれ、個人と企業の間でも起こります。
当たり前ですが会社は儲けを出さなければなりません。
そのため、個人と企業の間には市場規範が成り立っています。
まぁ、普通に金銭のやり取りがあることを考えれれば市場規範で間違いありませんよね。
しかし、最近は「私たちがお手伝いします」や「あなたも家族の一員です」といったフレーズで顧客を獲得する場合があります。

なぜ市場規範であるにも拘らず、社会規範を匂わせながら客に近寄ってくるのか?

これは、その方がお客の信頼を得やすいためこのような戦略を多くの企業が取っています。
社会規範のコミュニティでは、家族や友人のような距離感ですし、多少商品の値段が上がったりしても文句が出にくかったりします。

しかし、どんなに社会規範を謳っても、やっていることは市場規範なので、消費者の負担が大きくなったり、不誠実な対応をされ続ければ酷く裏切られた気持ちになります。
あるときは家族のように扱いますが、一瞬後には利益があるという理由で個人をただの顧客だとみなすからです。
このような関係は「社会的な関係」とは言えません。
みなさんも仲のいい友人や家族に損得は求めませんよね。

だったら企業は最初から市場規範で接し、「企業と顧客」という態度でいいのかもしれません。
そうすれば、追加サービスに割り増し料金を請求されても腹は立たないのかもしれませんね。
企業が顧客に対してどんな価値を提供し、何を見返りに求めるのかをはっきり打ち出していれば、よりスムーズに商売ができるのではないでしょうか。


【会社の中に入り込む社会規範】

今では、企業も何とかして社員を確保しようとその関係性に社会規範を確立しようとしています。
仕事と余暇の区分も曖昧になり、ご丁寧に家でも仕事ができるようにノートパソコンや携帯端末まで支給されます。

なぜ社会規範を適用すれば、社員は熱心に働くようになるのか?

それは、給料や自分の為ではなく、社会や会社に貢献できていると考える方がやる気も出るからです。
みなさんも「あなたのおかげで助かった!」と言われれば、やってよかったと感じるのではないでしょうか。
ただ、無償でなんでもやらせる体制は、やりすぎれば”やりがい搾取”になってしまうので注意が必要です。

また最近の研究では、お金だけでモチベーションを管理するのは酷く困難なことも分かっています。

社員のやる気や忠誠心をあげる社会規範は、ブラック企業がよく使う手口のように感じるかもしれませんが、それは会社が社員を逃がさないための関係性(社会規範)に市場規範を持ち込んでいるからです。

行動経済者のダン・アリエリーは、「企業は、従業員に対するときも顧客に対するときと同じくらい、相手が態度で示す長期的な献身を把握しなければならない」と言っています。

確かに、企業が社員に求めるばかりではいけません。
企業は「給料払ってるだろ!」と考えるかもしれませんが、それだけでは足りません。
家族との約束をキャンセルさせてまで出張させておいて「出張手当出すから」と言われても納得できないこともあるでしょう。
一生懸命働いた社員を病気になったからといって減給したり、不景気だからといってすぐに解雇する会社はどうなのでしょうか?

もちろん、アットホームな感じは一切出さず、市場規範で契約された雇用であれば特に揉めたりはしないかもしれません。
しかし、社会規範から市場規範に切り替えられ、冷たい対応をされれば誰だって裏切られた気持ちになります。

従業員が入院している間の給料を全額保証したり、家族サービスができる勤務体制にしたり、不景気になっても何とか仕事を続けられるようにするのが社会規範です。
それができないのであれば、初めから市場規範で関係を結ぶべきです。

ただ、経営者としては市場規範で関係を続けていくのは難しいかもしれません。
この場合、企業と従業員を結び付けているのはお互いの利害関係だけになります。
そうすると、ちょっと条件がいいところがあれば、人はそちらに流れて行ってしまいますからね。


【一度外れると元には戻らない】

2人の研究者が社会規範から市場規範への切り替わったときの長期的な影響を調べたものがあります。
これは、イスラエルの託児所で、子どもの迎えに遅れてくる親に罰金を科すのが有効かどうかを調査したもので、先に結論を言えば長期的に見ると悪影響があるという事でした。

「違反すれば罰金を科す」という考えは多いと思いますが、これはなぜいけないのでしょうか?

保育園などにお子さんを預けたことがある人は経験があるかもしれませんが、お迎えの時間を過ぎてしまうと「先生に申し訳ないな~」と思ったりしませんか?
ほとんどの人が時間に遅れると後ろめたくなり、その罪悪感から、「今度は時間通りにお迎えにこよう」という気持ちになります。
このとき、先生と親は社会的な取り決めのもと、遅刻に社会規範を当てはめていました。

では、罰金を科したことでどうなってしまうのか?

これは託児所が「社会規範を市場規範に切り替えてしまった」という事になります。
遅刻した分をお金で支払うことで、親たちはこの「遅刻」を市場規範で捉えるようになりました。
違う言い方をすれば、遅刻の権利を買ったとも言えるかもしれません。

意図せず市場規範に切り替わってしまったのですが、その結果、遅刻するもしないも決めるのは自分とばかりに、ちょくちょく迎えの時間に遅れるようになったのです。

では、社会規範に戻せばまたみんな遅れずお迎えに来るようになるのでしょうか?

実際、託児所はこのままでは良くないと考え、罰金をなくし社会規範に戻しました。
社会規範→市場規範→社会規範といった感じです。
このように、親たちも同じように社会規範に変わったのでしょうか?


結論を言えば、親たちの罪悪感は復活しませんでした。

罰金は無くなったのに親たちの行動は変わらず、迎えの時間に遅れ続けたそうです。
しかも、罰金が無くなったことで遅刻する回数はわずかに増えてしまいました。
このように、何の気なしに社会規範を取り去り、市場規範に置き換えるととんでもないしっぺ返しを食らったりします。

みなさんも社会規範と市場規範の切り替えには十分注意してくだいね。


今回はここまで

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それではまた次回お会いしましょう。





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