見出し画像

誰彼

みんな夕陽に見入っていた。
僕も家族連れもカップルも犬の散歩をしてるおじさんも水平線の向こうの夕陽を見ていた。
みんな夕陽に赤く染まり、みんな何も喋らなかった。

夕陽が沈んで徐々に周りが夜の闇に包まれ始めた。
みんなが異質な僕を見ている気がした。
「逃げなきゃいけない」そう思って岩場の方へ歩き出した。

岩場の陰にカップルがいた。
二人に睨まれて狼狽えた僕は何も分からなくなった。
岩場から離れて砂浜から離れて遠くへ遠くへ人のいない遠くへ。

気がついたら海から遠く離れて周りには誰もいなくなっていた。
僕は一人で安堵のため息を漏らした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?