ファンデルヴァーの失われた鉱山 PCの活躍を伝える試み 第 四 夜 トレセンダー屋敷
眠れる巨人亭前での一件を終えた一行は、手際よく町長や町民へこの場を取りまとめる算段を済ませたが、午後の日も傾いてきたので一旦、宿へと引き返す事とし、翌朝、改めてアジトであるトレセンダー屋敷跡、悪党の根城へと乗り込むことにした。
ファンダリンの町の東端、小高い丘の上にある廃墟トレセンダー屋敷跡、そこにレッドブランドのアジトがあった。
朝一から廃屋の台所から地下へと延びる階段を下ってゆくと、重厚な木製の扉があり、その中からはうっすらと灯が漏れていた。
開け放った扉の先に見えたのは、屋敷用の貯水槽とそこに流れ込む清らかな水流、それと、貯水槽の縁に腰かけて談笑していたレッドブランドの見張り、二人組の姿だった。
剣を構えようとする見張りに瞬く間に間合いを詰め、打ち倒した一行は、見張りの口から大まかなアジトの配置を知る。
西側に続く扉の先をムサシが警戒する中、縛った見張りの男から更なる話を引き出すが、その情報の中で、牢に捕らえられている者がいる事を知る。
その行いに憤慨するヴェイトや、情報の精査に訝しむムサシ、今後の自らの動向を思慮するアリスとウルリッヒの二人だが、ムサシの脅しで得た追加情報で罠の存在も露見し、縄で縛りあげた見張りを床の隅に転がすと、罠のある北側の通路を通り抜け、納骨堂へと一行は足を踏み入れる事にする。
ここで、見張りの口からは出なかったスケルトンに守られた石棺を納骨堂で発見するが、部屋の隅である壁側を通ることでスケルトンをやり過ごすと、牢屋へ続く扉を静かに開けた。
牢屋には、牢の檻の中で鎖を付けられた者を暇つぶしになじっていた見張りのレッドブランドが二人いたが、これも難なく打ち倒すと、捕らわれ、怯えて声も発せなくなっていた親子三人を救出する。
三人は、昨日話を聞いた、殺された木彫り職人ことセル・デンドラーの妻と子供たちだったが、偶然にもセルの妻であるミルナがサンダーツリーの町民だったことが判明する。
アリスの母、エレナを知るミルナから感謝を受けつつも未だ安全の見通せない現状に、三人にはこの場で再び自分らが戻るまで待ってもらう事を了承してもらい、4人はさらに探索を続けた。
納骨堂に戻り、さらに北側へと続く扉から武器庫の存在を確かめるべく部屋を横断しようとすると、石棺にもたれかかっていたスケルトン達が立ち上がって襲ってきた。
石棺を守るよう動くスケルトンどもを打ち倒し、奥へ行こうとした時、石棺の中からするウィーヴ(魔法の織物)の糸が絡み合う気配を鋭敏に感じ取ったウルリッヒが石棺の中を一度確認してみようと進言する。
果たして、石棺の中に眠っていたのは、数百年前に時を止めた亡骸と、その宝飾品、この館の歴代の主を表す印章指輪と共に奉納された品々であった。
朽ちた物や、もはや灰と化した物が多い中、ウルリッヒは魔力の糸の先をしっかりと辿り、「パール・オヴ・パワー」の指輪と「ネックレス・オヴ・アダプテイション」の首飾りを発見する。
印章指輪とマジックアイテム以外を丁寧に整え直すと、石棺を元に戻しながら、この屋敷の由来、トレセンダー家の歴史を披露するウルリッヒに、三人は歴史の重みと共に、行方を追っているグンドレンが言っていたという「失われた鉱山」とその伝説の物語の関連性を深く意識した形となった。
細く短い通路の先にあった武器庫にはこれといったものもなく、行き止まりとなったために一旦南側まで戻り、初めに開けなかった貯水槽のあった部屋の西側、宿直室へと向かおうとするが、武器庫を出た時にアリスが通路の西側に隠し扉を発見する。
用心して開けた先には、今までとはうって変わって薄ら寒く、異質な冷気をまとった空間で、その冷気を利用した保冷所として使われている保管庫兼倉庫のような場所だった。
また、その南側には石畳ではない、自然の石でできた地面と大きなクレバスが、光のない洞窟として広がっており、冷気はどうやらこのクレバスから這い上がってきているようだ。
倉庫の樽を一瞥した後、ヴェイトとウルリッヒが暗闇の奥を見据えると、クレバスの亀裂自体は大きく深いようだが、その亀裂を渡れるように橋が架かっており、ここからもアジトの西側に行けると判断した一行は洞窟に掛かる橋へ進もうとする。
ここで不安を示したムサシと、その言葉にアジトについてからのムサシのこれまでの言動に不信を募らせたアリスが口論しかける。
アリスはムサシの不審と不安をいぶかしみ、制止するムサシを無視して橋に近づこうとするが、それと同時に先頭で洞窟奥の様子を窺っていたヴェイトの脳内に谷間の暗闇から声が響く。
狂ったような奇怪な吃音と共にテレパシーで聞こえたのは、混沌から這い出てきたような声で、ケタケタ笑いながら侵入者であるヴェイト達を食らおうとするささやきだった。
アリスがヴェイトの顔色の変化から何があったかを聞き、ウルリッヒとムサシにも伝えると、ムサシがさらに慎重を促すように語り掛ける。
その様子に逆に不信感を募らせ、アリスは先に暗がりとクレバスで姿のほぼ見えない怪物とその声を無視して橋を渡り始めると、アリスの目に谷から覗くおぞましい視線が飛び込んできた。
大きく、人知ならざる光を宿した単眼に虚を突かれたアリスの顔を見て、とっさに保管所に合った肉片の塊をムサシは掴む。
死に似た感覚を一瞬味わうが、気を取り直して橋を渡り切ったアリスが現れた怪物に弓矢を放つと、その怪物、魔術師の成れの果てともいわれるナシックは絶叫を上げ襲い掛かってきた。
アリスに続き橋を渡たりつつ攻撃するヴェイトと、脅威を排除しようとするウルリッヒの姿を見て、不安の先にあった存在に対して時すでに遅しと考えたムサシも攻撃に加わると共にウルリッヒの護衛に回ると、4人で結束してナシックを撃退する。
ナシックが力尽き谷底に落ちていくと、谷底を窺ったヴェイトの目に人間の死体の姿が飛び込んできた。
見たところドワーフではないが、死体をそのまま見過ごすわけにもいくまいと、ロープを見守るウルリッヒとムサシを未だ訝しむアリスを残し、ヴェイトはムサシと共にクレバスの下、30フィートほど下った底まで降りてみると、そこはさらに冷え込む冷ややかな場所で、石造りの館を引き裂いた亀裂であることが窺えた。
亀裂の底は死霊の気配が強く、周囲からあふれ出す死臭で腐敗が尋常な速度で進む様を見せつける、まだ新しいにも拘らず腐った町民らしき死体、その他、過去に打ち捨てられたかナシックの被害者となったのか分からない遺体の山と、ボロボロになったその者が着ていたであろう衣服が散乱していた。
新しい遺体の遺品を持ち帰ってあげようとヴェイトが木彫りの装飾が施された腕輪を手に取り、死者への祈りを捧げ、二人は、もう一度周囲を窺ってみると、ナシックが宝を詰め込んだボロボロの大きな櫃がひとつ見つかる。
とりあえず朽ちていない品を谷の底から引き上げると、ウルリッヒが驚嘆の表情と共に伝説で失われた剣「タロン」の発見に、持ち主であるトレセンダー家の武勇伝を三人に教える。
この剣「タロン」はオークの軍勢から町を護ろうと奮戦し、激戦の中で倒れたブラックホークことアルディス・トレセンダーの持ち物にして、ドラゴンスレイヤーの剣だった。
また、金貨などに混じってポーション・オヴ・ポイズンレジスタンスとポーション・オブ・ヒーリングの薬が1本ずつ、更には、アブソーブ・エレメンツのスクロール(巻物)1本が見つかった。
そして、一行は更なる敵地への探索のため、行軍再開の準備を整えるのであった。
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