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ファンデルヴァーの失われた鉱山  PCの活躍を伝える試み  第 二 夜  ギザ牙族の隠れ家

 ネヴァーウィンターの街を出てから四日目、昨日の山賊の襲撃を難なく退けた一行は清々しい朝を迎えた。
昨晩、アリスが仕上げたオツな肴をつまみつつヴェイトが持ってきたという酒を酌み交わし、改めてそれぞれが胸中を語った。
ムサシの、ファンダリンへと抱く秘めたる思い以外は……

 行程を確認し、急げばその日の夕方にはファンダリンに到着できると思い、足取りも軽く出発した一行は、襲撃された惨状の後を目にする。
曲道で見えなくなっていた先の街道には、2頭の馬の死骸が無残にも何本もの矢を受けて転がっていた。
その光景が飛び込んでくると同時に耳障りな声と共に街道の林道から飛び出してきたのはゴブリン共。
いち早く気配に気づき、戦闘態勢をとる3人。
そしてもうひとり、ウルリッヒは、荷台の上から久々の自然の景色を堪能していた。
彼が悠然と振り返る前、弓矢を放とうとするゴブリン共と近くの木の影から蛮刀で斬りかかろうとするゴブリン共に3人が武器を構えたところで、牛車の近くの林の奥から異様な雰囲気と気配を殺しきれない殺気にムサシが敏感に反応した。
 大物だ。
魔獣ウォーグを駆るゴブリンのボスが待ち構えていたのだ。
ゴブリン共の奇襲は失敗し、あわや乱戦になるかと思われたが、ムサシがウォーグを食い止めたところにヴェイトの重い一撃が深々と食い込み、重い腰を上げる様な気だるげな仕草で放ったウルリッヒの光り輝く魔法の矢弾の雨が降り注いだ。
敢え無く倒れ伏した魔獣の傍らで殺意だけは残っていたゴブリンのボスが打ち倒される頃には、笑顔で振り返るアリスと何事もなかったかのように振舞うウルリッヒの連携で、遠くで弓を構えていたゴブリン達も撃退されている状態だった。

 ムサシが魔獣の牙で深手を負いはしたが、ゴブリン達の強襲を斬り伏せ、一行はこの場で何があったのかと骸と化していた馬とこの周辺を調べると、馬の荷物からはグンドレンの持ち物らしき地図入れの筒が、そして引きずられ、街道の脇にアリスが見つけた獣道を踏みしだいたような踏み分け道へと続く、連行された痕跡とを発見する。
友グンドレンの窮地を知ったヴェイトがゴブリンからの救出を提案すると、他の面々は人それなりの反応で好意的に受け止め、その反応に感謝の意を示したヴェイトの手を取り合い、握手しあい、一休憩がてら牛車を街道脇につなぎとめ、これまでの流れとこれからの行程を整理する一服を終えた一行は、林道から近く雑木林の奥へと足を踏み入れていった。

 追跡行の途中、しっかりとゴブリン達の道を見失わなずに先行したアリスが的確に罠を発見して処理し、難なくゴブリン達の隠れ家にたどり着いてみると、そこには小高い丘のふもとにぽっかり空いた切れ間から流れる小川と洞窟の入り口の場所となっていた。
 ここでまた見張りをさぼって遊ぶ3匹のゴブリン共をムサシが敏感に察知し、あっけなく屠ってから、じっくりと中の様子を窺いみると、高さ6フィート以上の亀裂のような裂け目からなる湿った風が流れてくる鍾乳洞と、その奥から流れ出る冷たい小川は、深いところではドワーフでは高身長であるヴェイトが首までつかるほどで、その小ささと深さに違和感を覚えるほどだった。
実際につるつると滑りやすい岩だなを進んでみると、入り口すぐの部屋には、鎖に繋がれて番犬と化していた狼の寝床用の部屋があり、ゴブリン共の住処で間違いないようだ。
狼を難なく手懐けたアリスと共に狼の部屋をみてみると、この洞窟自体が巨大な鍾乳洞をほぼそのまま使っている雑な扱いと、ところどころ崩れ、瓦礫の崖とかした部屋の端から若干の隙間が奥のさらに上部に空間があることには気づけた。
だが、登るにも危険、奥の様子を見れるかもしれないが通ってその先に行くことは不可能に近いと判断し、部屋から出て川をさかのぼる様に洞窟の奥へと進む事を決める。
部屋を出て進もうとするとすぐに、左手には奥の方は高くて見えないが何とか登れなくはない様な崖、真直ぐ進む川沿いの奥にはとりあえず掛けただけのような橋とその下をくぐるように続く道がみえる。
そして、その橋の上に見張りをするゴブリンが見え、アリスが射掛けた矢で驚いたのか、ゴブリンは慌てて「水だ!敵がいるぞ!水を流せ!」と大声でさけびながら奥へと駆けだして行った。
ウルリッヒが事の次第を理解し、皆に警戒と流水の危険を素早く伝えると、即座にアリスは崖へ、ヴェイトは狼の部屋へ、ムサシは道の先でまだ引き返せていなかったウルリッヒを疾風の速さでヴェイトのいる部屋まで強引に連れ戻すと、その瞬間、轟音を上げて大量の濁流が今までいた川沿いの道を覆いつくし、外へと流れ去って行った。
 その後、経緯を確認しようと舞い戻ったゴブリンを待ち伏せしたアリスが正射必中の構えで貫くと、ゴブリンは絶命して川へと転落し、再び濁流が一行を襲うことはなかった。
 一行は、アリスが登りかけた崖の上に、まだ道が続いていることや、嫌な風の流れを感じ、川沿いの道から逸れ、アリスが駆けあがる崖の先へと歩を進めた。
ヴェイトが川の流れを飛び越えるのや崖を登るのに不安を覚える一方で、崖の上に出たアリスの身に飛び込んできたのは、唐突に現れた人間にビックリして飛び起きるゴブリン達の顔、顔、顔、その数5匹。
崖の上は右手へ繋がる通路と、左手にあった広い空間、ゴブリン共の寝床に繋がっていたのだ。
 アリスが右手の奥の通路を確認しつつ増援の可能性がないのを見て戻る間、敵襲に慌てて武器をとるゴブリン共に隙を与えずムサシが飛び込んであっという間に切り伏せると、それにヴェイトが続き、アリスとウルリッヒも部屋に押し入りながらゴブリン共を駆逐する。
また、この部屋の奥には囚われの身となっていたシルダーが息も絶え絶えに鎖に繋がれていた。
痛ぶられ、慰み者と化していたシルダーを盾に使用としたゴブリンも打ち倒してシルダーを救出すると、1匹だけ降参して生き残ったゴブリンと酷い傷を全身に受けたシルダーの口から、グンドレンは、ここにはおらず、彼の荷物と共にギザ牙族の本拠地である「ギザ牙城」に連れ去られたことを知る。
どうやらグンドレンの発見は、伝説に謳われる「ファンデルヴァーの失われた鉱山」にまつわるものらしい。
アリスは、その匂いを嗅ぎつけた何者かが「ギザ牙族」をまとめるバグベア、「グロール王」と関係を持ち、彼を連れ去ったのではないかと推察した。
ウルリッヒはその未知の知識と歴史上の秘密への発見の可能性に思いを馳せ、ヴェイトは友グンドレンの安否に心を巡らせ、ムサシはその三者の思いを一歩引いたところで眺めつつ、誰にもばれないようにそっと一匹だけ生き残ったゴブリンの喉元を掻き斬った。
とりあえず安全の確保されたこの場に介抱したシルダーを残して、4人は洞窟の右手、この洞窟のゴブリン達の長、バグベア「クラーグ」との決戦へと向かった。
橋を渡り戦端を開くと同時にウルリッヒが鉢合わせたゴブリンを炎の魔法で燃やし、橋の下から回り込んだムサシと息もつかせない勢いでヴェイトとアリスが柵で堰き止められたため池の横を通り抜け、逃げ込んだゴブリンを追ってクラーグの部屋まで一気に突き進む。
そして、急な襲撃に激高するクラーグとその手下共を、勢いそのままに瞬く間に粉砕した。
 クラーグの飼い犬であった狼も怯えて逃げ去り、部屋にあった略奪品の数々を目にした一行は、グンドレンの痕跡が本当に残っていないのを確認し、疲れと憤りを感じつつも略奪品を奪還した戦利品として最寄りの街ファンダリンへと、シルダーと合流すると立ち去ることとした。

 少し遅くなったが、急げば今日の夕飯は、なんとか暖かい宿屋で取れるだろう……

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