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揺りかごの中


シャッターに隠されている。
静けさが濃くなる方角へ帰巣本能に従って足早に夜道を走っていた。
生い茂る木々の葉を掻き分けるようにして。


途切れ途切れの夜を超え、朝が来た。脳がずっと動き続けているのが分かる。必要でないこの身が邪魔だ。

錆び付いたように軋む体を動かして、病院に行かないといけない。薬があれば眠れてしまうし、眠ってしまえば何も考えなくて済む。そんな時間が長く続けばいい。

日向の暖かさに束の間の安堵を覚える。身体と心はちぐはぐなまま。どちらも要らない。

内側から来る痛みを逃がすことができない、欠陥。


大丈夫だよって言って。



最近はずっと頭と思考にもやがかかって見たいものが見えない。不透明な生活。
解決法を探せど自身の内側に溜まる膿に視線をおいてしまうから、その先へ辿り着けない。
思考を刷り込ませる。好転するその時を繰り返しイメージする。



私達はまともだとか、まともでないとか、自分の中にある小さいものさしで測れるくらいの人間ではない。皆同じである。
毎分毎秒の選択は自身がしているもの。繰り返しの日々、形成された貴方。
責任転換したり、擦り付けたり、不本意に生まれたなどと考える時が心地よいのは逃れているから。

子供の頃、自我なんてものはなくただただ生きようとしている柔らかな存在だった頃。そこにも焦点を当てててしまうのはあまりに酷だ。
その頃の私達はまだ、選ぶということができない。
でもただひたすらに生きようとする。未来なんてものがあることも知らずに、生きるという選択を自然としている。その無垢で孤独に満ちた想いも私達はきっと背負っている。
呼吸をすることを、選び取ってきた。




いつか光を見たい。
私が私であることの証明を自身の手で描きたい。

希望的観測を繰り返し、薄暗い部屋で夢想する。
この稚拙な夢が、いつか叶いますように。

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