日々の粒子


窓の外を黒々とした雲が急いでいる。
雨と微かな土の匂い。スコールのきっちり三分前に洗濯物を取り込んだ。
地に突き刺さるような豪雨をベランダで眺めながらぼんやりと煙草を吸う。
気だるさと続いていく日々を思い続けているが、この情景と香りはどこか心地良い。
へどろの様に粘り着いた思考は、何ひとつ洗われることはないけれど。

どこか植物園の亜熱帯ゾーンにいる感覚になる。生命にの生暖かさ満ちたあの空気を記憶でなぞると、いつも見ているこの景色も悪くないように思えた。少し、少しだけ。


昼が夜に溶け合って、境界の曖昧になった空の下を歩く。視界の先に、何を見てる?
ひびの入った器をさも当たり前のように動かしあの子は生きて、昨日も今日も明日も直線上に続く日々を平気な顔で進んでいく。
自らで拵えた籠の中で、私は



水滴が素肌に落ちる、深夜。
宵の風が雨を運ぶ。
私自身でいられない籠の中で、私を一から造り直して、この足で外に出ることが、どうしてこんなにも困難なのだろう。
果てなく、宛もない道を、ただ歩みたい。


私というひとつの生命から生まれる其れの導きによって、また今日も。

己が引き寄せ導くものだけが希望、絶望。光と闇。


明日も、全てが溢れないように、唯揺れ歩く。


おやすみ。


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