感触、生臭さを持った温く無色透明のもの



眠れないので久しぶりにここに来てみる
何も変わることのない空間
私の思考だけが宙を舞う埃のようにふわふわと漂い降り積もっている
古い記憶はどことなく湿気て黴臭い
触れることを躊躇する指先が目に入る


何も書く事がない

暗い部屋でキーボードを打つ手は悴み
水分を失った手の甲が何かを訴えている

そう
私はこの状態でも生きてしまえている
穀潰しのように枯れようとも生きていける環境を自ら選び作り身を置いている

それはどういうことか


何も考える事ができない期間が定期的に訪れては去っていく
その期間に拵えた環境が再び己を苦しめる
繰り返し繰り返し

螺旋階段を永遠に降り続けているような感覚から抜け出す事ができない
何度も何度も死ぬまで
死んだように見えるだけで強かに私は生きている

本能的に生物学的にただ無機質に生きるためだけに精神を傾ける
そこに何の意味があるのだろう
ただ体が息をする
そのためだけにその他全ての要素を注いで
体があること以外に何も残らない

最後の希望があるのだとしたらそれはきっとこの身なのかもしれない
そんなことは思いたくもないが

ここまでして
体以外を全部置き去りにして
微かに残った意思すら見向きもしないで
私は行ってしまうのだ


数ヶ月前まで残っていたであろう
頭で考えたことを意志を遂行する力が全くなくなってしまった
本能的にしか動く事ができない今の自分
なるべく精神に響かないよう
考えることをしないように

当たり前だが
何も面白くない
何も感じない

過去を引き延ばしてできた
歩けば崩れる薄い板の上を
綱渡の体裁で歩いている

遥か遠くには何も浮かんではいない
示されているのは
受け取れるのは
“現在”
ただそれだけ


どうやって無に価値をもたらそう
どうやって無に価値を見出そう
差し伸べられた手を取ることなく
奈落へ落ちてゆくイメージが瞼に浮かぶ

終わりが近いようなそうでないような
曖昧な景色に飽きてしまった
馬鹿馬鹿しい空想
粘ついた本能

苦しい
その一点から抜け出す事ができない
ぬかるみの中で踊る事が快感か
もう
終わっている


良いように使われる体
都合良く奏でられる言葉

気持ち悪い
薄っぺらい

殺してしまえよ
売ってしまえよ

殺して楽になりなさい
死んで灰になりなさい

霞んだ目を治そうと
潰れた鼻を治そうと
生まれなおそうと
お前は変われないよ

とっくのとうに分かっているだろう
本当は知っているんだろう

私には分かるよ
お前の全てが

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