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self mind

午前五時。気怠い空気を引き裂く、けたたましい電子音で目が覚めた。昨日から身体の調子が思わしくなくあまり眠れなかったので、朝の支度を一通り終えてから床に就いたのだった。
何もしなくても腹が減る。ただ、食欲はあまりないので氷水を作って一口飲むことにした。よく冷えた水はぐんぐん足の先まで広がって、私を満たしてくれる。グラスに触れた指先の色がどこか心地いい。



昨晩から雨が酷かったので今日の空模様は何となく想像出来ていた。打ち付ける雨粒の音が気分をさらに重たいものにする。何もする気になれない。空の移りと時を同じくして、思考にも一瞬で雲がかかる。世界が怖い。
不安に呑まれた時にいつも、何もかもを忘れて走ってしまう自分のことが、時々本当に心配になる。心をなくしたい。壊れてしまえば楽なのに。



雨の日に夜空を漂う夢を見た。雨を身体いっぱいに受けると、その分の過去が流れて段々空っぽになっていく。空間が大きく波を打って、星空が収縮する。
終わりを肌で感じると、当たり前のように存在していたものへの見方が全てひっくり返って、世界はあべこべになるんだって。
毛先がちりちりと焼けていく音。これは夢?私ひとりがいなくても世界は続くし、あの人は笑っているだろう。これは夢。現実はもう狂ってしまっているから、ただひたすらに星のかけらを集めていた。
綺麗と言ってもらった耳、忘れられない黒髪。拡声器を使って、私の言葉が届いていますか。
グロテスクな夜明けが来る。風が止まない。

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