肺の模式図など

 新型コロナのことを考えると免疫なり肺なり医学生物学的な知識が必要になります。中途になっている紹介している論文

紹介論文
Grant, R.A., Morales-Nebreda, L., Markov, N.S. et al. Circuits between infected macrophages and T cells in SARS-CoV-2 pneumonia. Nature (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-020-03148-w

でも肺の構造が分かってないとよく理解できません。肺は呼吸に重要な器官で血中の酸素と二酸化炭素の交換をしていることはほとんどの人は知っていると思います。ただ具体的にどんな構造になっているのかは知らない人が多いのではないでしょうか。今回は少し肺の構造に関しての記事です。イラストを探すのですがなかなか著作権をクリアするものがありません。非常によくまとまっている(医学関係者以外には詳しすぎもしますが)サイトもあったのですがう〜んこれって教科書(テキスト)の図表そのままコピー(転載)ではないかと思われますし出典もありません。世の中の役には立っていますが正直感心しません。肺の構造の概略は中外製薬の「患者さん・一般の皆さま > からだとくすりのはなし > からだのしくみ > 」の説明がイラストも分かりやすくよいと思いました。まずこれを読んでみてください。

次の図は、
Dickson RP, Erb-Downward JR, Freeman CM, McCloskey L, Falkowski NR, Huffnagle GB, Curtis JL. Bacterial topography of the healthy human lower respiratory tract. mBio(2017), 8:e02287-16. https://doi.org/10.1128/mBio.02287-16
からCC BY 4.0のもとで転載した図になります(昨今の論文のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの流れありがたいです)。

肺の模式図

この論文自体面白そうなのですがまだアブストで止まってます。ここで注目して欲しいのは気管支肺胞洗浄(BAL)の模式図です。なんとなく肺洗浄というと肺全体かの気がしますが肺胞洗浄です。肺全体でなく肺のごく一部の末端領域だけを洗浄しているのです(図Aの8や9の場所をみてください)。図Bの右端の内視鏡(管)の先には肺胞嚢が複数あるわけです。
 次の図は、
Nova Z, Skovierova H, Calkovska A. Alveolar-Capillary Membrane-Related Pulmonary Cells as a Target in Endotoxin-Induced Acute Lung Injury. International Journal of Molecular Sciences. 2019; 20(4):831. https://doi.org/10.3390/ijms20040831
からCC BY 4.0のもとで転載した図です。1個の肺胞の模式図です。これがたくさん集まったのが肺胞嚢です。この図だとわかりませんけど一般に動脈は赤色、静脈は青色ですけど肺に関しては色が逆です。興味がある方は肺動脈で調べてみてください。

Screenshot_2021-01-23 ijms-20-00831-g001 webp (WEBP 画像, 3272x2795 px) — 表示倍率 (20%)

話を戻します。肺胞細胞は二種類の上皮細胞からなります。I型とII型肺胞上皮細胞(AT I、AT II)です。これらはSARS-CoV-2の受容体であるACE2を発現しています。RNAレベルので発現量を調べたものですがまずAT II > AT Iで鼻腔のほうがかなり発現が高いです。肺胞は考えればわかるように異物の侵入が多いところです(外気とつながっている)。なので異物を監視するための常駐の組織マクロファージ(別に肺だけではありませんけど)がいて異物を取り除いてくれます(貪食)。どうもSARSやMARSでは報告されていたようですが、このマクロファージもSARS-CoV-2に感染するようです。ただ上のNatureの論文だとACE2は発現しておらす感染の機構は不明のようで、機構はともかく単純に感染や貪食されたウィルスが分解を免れたなどの可能性をあげています。ここからは私の推測ですけど肺胞上皮でウィルスが増殖すると局所的にウィルス濃度が非常に高濃度になります。そういう環境下ではふだん感染しにくい細胞でも感染の確率が跳ね上がることは十分あると思います。

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