■休憩:結局、マスクは効果があるのか?マスク警察と超情報化社会

コロナウィルス対策のマスクとして、両極端の議論が巻き起こっている。
一言でいうと、「マスクをすることによってウィルス全般または飛沫・飛沫核に対し鼻腔内への到達量または到達率を下げる機能があるか」である。

昔から私の予測はこうである。
「マスクの網目はウィルスよりもかなり大きいだろうからあまり意味なし」

ただし、私たちの多くは無知であり、無知であることも認知できない可能性が大いにあるので、そのために自分の常識を疑い、学びを継続する以外にない。
はてさて私の予測はデータからも得られるものなのか、そうでないのか。
検証していきます。

1.マスクを巡る騒動

それではまず、マスクを巡る騒動から話を進めたい。
騒動の流れ:主にSNS上で、マスクの機能について
①データが明確になかったからマスクを巡る自分の常識による賛成派・反対派に分かれ議論が過熱し、②新たなデータがでるやいなやマスク警察(ウレタン警察含む)が登場する」
という流れになっている。

つまり、①の時点ではディスりの武器は賛成派・反対派共に「自分の常識」であり、②は富岳のシミュレーションその対策(1)(2020.6.30/Youtube)や西村秀一医師の実際の実験(2021.2.3/東洋経済)データを基にしてマスクをしない人、ウレタンマスクの人を攻撃する人が増えたわけである。

私を含めてマスクでウィルスは防げないであろうと考えていた人にとっては、新しくそれなりに真実性の高い実験データがでたので、これまでの考えを少し改めるきっかけになりました。

ただし、私は「真実性の高いと思うデータ」であると判断したからフィルター性能についての考えを改めましたが、真実性が低いデータと思う人がいてもそれはそれで構いません。その真実性が低いと判断した理由が私の常識には見えない可能性も大いにあるのです。
また意見がコロコロ変わるということは一般的に悪いイメージのように思われがちです。
しかしながら、真実性の高いデータに対して一貫した態度をとった結果、意見が変わっただけで、実は大きなルール(真実性の高いデータに対して忠実)に対しては一貫しています。

一方、マスク警察といった部類の人たちは、②のような富岳のシミュレーションや西村秀一医師の実際の実験といった新たなデータがでる前から固定観念が強く自分の考えと異なる人たちを攻撃し、データがでてからも同様に袋叩きを開始します。過去の自分がもし間違っていても、そこはスルーします。
これは、煽り運転者の脳構造と酷似しているかもしれません。
ひとえにこういった人たちは、感情が抑えきれない人達であり、自己中心的思考が出来上がっているので、なかなか自分の間違いに気づくことができない。またはいい言葉ではないが老害と揶揄される人たちも強固な固定概念にとらわれた人たちであるのではないかと推察できます。

新しいデータがでて「なるほど、論理性がある」と感じれば、シンプルに他者に教えることをすればよく、社会全体としても新たな常識を周知することになる。
ただし、ここでは深堀しませんが、現代社会はお金教という絶対ルールのもと成立しています。その論理でいうと企業群が政治にも司法にもメディアにも介入ができてしまうので、逆に「多数派の常識」=「世論」を作るためにデータ捏造・データ詐欺があることを常に想定しておき、妄信することの危うさも同時に持っておかなければなりません。つまり、現代は非常に争い・分断・差別を作り上げやすい社会構造であることを注意しておく必要があるということです。

・ほんの一秒後に常識は変わる可能性がある
・怒りは不要、学びや教育が必要
・常識の多くはメディアや権威者、親、教師からきていることがほとんど

2.マスクの通気穴はウィルスの大きさより広いのでウィルスを防ぐことはできないのではないか?

まず、それぞれの大きさの確認してみたい。
一般的に
・マスクの網目の隙間は10~100μm
・新型コロナウィルスそのものは直径0.050–0.2μm
・飛沫(粒子)は直径5μm以上の粒子
・飛沫核(飛沫が空中で水分を失い空中をしばらく漂うもの)は直径5μm(または4μm)未満の粒子
※エアロゾルは空気中に個体または液体の粒子が浮いている状態を指す

なお、2020年7月9日、WHOは空気(飛沫核)感染は否定できないという見解で、仮に空気感染があるのであれば、室内換気は非常に重要です。

飛沫がインフルエンザ以下の画像は99%カット表示のある不織布マスクを光学顕微鏡で捉えたもの。

画像1

画像引用:東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/32997
以下は、上記画像を加工し、もう少し小さな物体の大きさを示したもの(赤四角が100μm×100μm、10μm×10μm、1μm×1μm、0.4μm×0.4μmをそれぞれ示した)。2枚目は拡大したもの。

画像2

スクリーンショット 2021-02-07 01.29.48


これを見るに、明らかにマスクの網目はウィルスや飛沫核の数十から数百倍の大きさがあり容易に通過するように思われる。
しかし、西村秀一医師の実際の実験(2021.2.3/東洋経済)によると下記のようなデータが得られたといいます。

画像4

画像5

(画像引用:東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/409607?page=2)

つまり、画像で大きさの比較をするとスカスカで通りそうなのだが、実験データでは不織布マスクでは0.3~0.5μmの飛沫核を9割カットしていることになる。残念ながらウレタン製は無残な結果になった。

なぜマスクの網目より小さい飛沫核を9割程度もカットできたのか。その理由を改めて考え直してみた。
マスクの光学顕微鏡の画像ではおおよそ6割程度の面積が繊維。画像は平面であるが、実際は、立体で考えないといけない。また飛沫核は(直進ではなく)角度をつけてフィルター繊維に向かっているのではないか?そう考えると、捕獲率は案外高くなる可能性もなくはない。とはいえ、ちいさすぎることはなかなか払拭はできないが…うーん。

ネットでも検索していると以下の資料を見つけました。
日本エアロゾル学会の発表した資料によると
「①慣性衝突 ②さえぎり ③ブラウン拡散 ④静電気力による吸着」の可能性がマスクのウィルス吸着に影響するようなので、興味のある人は見てみてはいかがでしょうか。

一応、現時点では個人的には不織布のマスクのフィルター自体はかなり優秀で飛沫核の捕獲率も高いという認識になりました(納得はいかないが、実験データを最重要視したため)。フィルター性能自体は・・・ですよ。

さて・・・もう一つの課題、漏れ率を考えなければなりません。

3.マスクと顔の隙間があるから飛沫カットの効果は極めて限定的ではないのか?

前章でマスクのフィルターによる飛沫・飛沫核のカット率は効果的であるという趣旨の話をしました。

本章では、マスクと顔の接着部位にできる隙間について考えてみようと思います。

富岳のシミュレーション(2020.6.30/Youtube)や西村秀一医師の実際の実験(2021.2.3/東洋経済)においても「隙間」については考慮しておらず、あくまでもマスクのフィルターの性能についてのシミュレーション・実験でした。

不織布マスクの種類は大きく2つの種類があります。
プリーツ型と立体型です。

画像6

(画像引用:改善.net https://kaizen1.net/post-13871/)

プリーツ型の多くはノーズフィット搭載で鼻や顔の形状に合わせて装着する広く流通しているものです。
ウィルスや飛沫といった非常にミクロの世界観からすれば隙間は圧倒的に大きく飛沫や飛沫核の侵入があるのは容易に想像できます。というか、飛沫とマスクの網目ですら数十~数百倍の差があるので、飛沫とマスクの隙間では桁違いに大きさの差があることは容易にイメージできます。

ではどれほど飛沫や飛沫核の侵入を許してしまうのか。
ネットでシミュレーションや実験があればと思い探してみました。
あまりデータは見当たらなかったのですが、少し古いもので平成21年11月18日の独立行政法人 国民生活センターのpdfが参考になるかと思います。

スクリーンショット 2021-02-07 05.05.38

(画像引用: http://www.vat.co.jp/images/influenza/mask01.pdf)

この発表によると、「漏れ率 50%とは・・・隙間からの漏れにより、マスク内側に侵入した微粒子の濃度が、外側の微粒子の濃度の半分
であることを示している。数値が大きいほど隙間からの漏れは大きい。」と定義し、大きな数字のブレがあるが、 No10とAであるN95マスクを除いて0.3 μm以上の微粒子数を計測し算出した漏れ率はおおよそ40~100%であるとデータは示している。

画像9


つまり、マスクをつけていても隙間による漏れがあるので、カット率は0~60%しかできていないことを示している。というか漏れ率100%(カット率0%)というと、まったく飛沫・飛沫核の対策としてマスクは意味をなさないことになる。

西村秀一医師は(2021.2.3/東洋経済の記事にて)

「特別なことをしない限り漏れをゼロにすることは不可能です。確かに顔面とマスクの隙間から入るものもあるけれど、密着の意識を持って着けているのであれば入ってくるのはそう大量ではなくなります。」

と仰られています。データはないようですが、密着の意識でマスクをすることで漏れ率の改善はそれなりにできるのではないかというスタンスです。

国民生活センターのデータで留意しておく点は、10年以上前のデータであることと、新型コロナウィルス騒動が起こる前であり、マスクの着用方法の周知ができていない時期であること。ただし、立体型では着用方法に今とそん色ないであろうと思われるので、それなりに真実性があるデータなのかもしれません。

4.マスクの現時点での結論

仮に不織布マスクで吸い込み時の飛沫と飛沫核の漏れ率60%とすると、カット率は40%程度。
一部でもカットできるならマスクはできれば多くの人が着用しておいた方が掛け算的にカットされていくのでよいことはよい。ただし、そもそも多くの人がいれば一空間における飛沫核の総量は増え漏れ率の改善が物理的に難しい点を考えるとマスクの効果はそういう面で正直、限定的と言わざるをえない。「息が吸いにくい=密着度が高い」はずなので、感覚的にもわかるはず。また逆にN95マスクのような密着性の高い医療用マスクは、長時間着用するのは酸欠による健康被害が懸念される。
不織布マスクは会話や咳やくしゃみなどの大きめの飛沫を防ぐため、感染者が直接的に飛沫を飛ばすという意味での感染防止の役割はそれなりに効果が高いかもしれない。
ただし、呼気中の飛沫・飛沫核の割合や、どちらのほうが感染しやすいかなどのデータがでないと何ともいえない。

まとめると、不織布マスクをすることによって飛沫・飛沫核に対し鼻腔内への到達量または到達率を下げる機能はある可能性が高いが、その効果は限定的。ウレタンマスクは漏れ率を考慮しなくても飛沫の90%は流入する。飛沫核ではほぼ100%に近い。

感染症対策としては「飛沫・飛沫核の密度を減らし、量を減らすためには?」を考えることが大事で、例えば、そのためには換気、できるだけ大きな空間の部屋を使うことを意識する、同一空間の総人数を減らす、同一空間に長時間いない、高温高湿を保つことなどが重要となる。接触感染は手洗いの徹底(アルコールでも可)、不織布マスクはフィルター自体の性能はよいものの隙間からの漏れは大きく、やはり補助的なものであるということ。
もちろん屋外ではマスクは外していいし、ランニングするときは酸欠リスクもあるので外した方がよい。


5.時間がない人に…超まとめ

不織布マスクのフィルター性能は優秀で飛沫核をも9割カットできる。咳・くしゃみによる直接的に相手に届く大きい飛沫(飛沫感染)は防御可能。ただし、飛沫核は長時間空気中を漂うため、マスクの隙間からの侵入(飛沫核感染/エアロゾル感染)はあまり防げない
※飛沫感染と飛沫核感染の発生割合は不明。
なので、室内ではマスクを過信せず、換気し・密集地を極力避けることの方がより重要。

6.あとがき

今後、本当に脅威のウィルスが出現した場合、これらを実行すれば被害は最小限に抑え込むことができるので、そのためには、個人個人の意識を高める啓蒙活動が大事。日本人は良くも悪くも人に迷惑をかけない文化が強い。
人は非難してもなにも変わらない。

また本記事はあくまでも現時点(2021年2月7日)に公表されているデータを基にした個人的な見解を含む文章であり、マスクの隙間データなど疑問が残る部分もありますので「不確かさ」を含んでいることは確かです。ニューノーマルなどという訳の分からない横文字造語を覚えるのではなく、感染症対策の知識を身に着けて冷静に対応していきましょう。
また明日にでも最新の真実性の高い実証データがでたら認識が変わる可能性を十分に含んでいる事をご理解いただければ幸いです。

7.その他の参照したサイト群

・フィルター性能関連
【Youtube】スーパーコンピュータ「富岳」記者勉強会 室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策(1)~(4)
https://www.youtube.com/watch?v=Z6EbAO3nLy8
https://www.youtube.com/watch?v=MY_LMJzGZ6k
https://www.youtube.com/watch?v=QOzGDi5waJQ
https://www.youtube.com/watch?v=267HdDdIywI&t=2427s
【Youtube/2020年3月9日】慶應義塾大学・奥田知明准教授 ウイルスのような小さい粒子は本当にマスクで取れないのか?自作マスクの性能は?研究者がガチで調べてみた
https://www.youtube.com/watch?v=T4fhfCUWFL4
【infipwr/2020年5月24日】マスクはどうやってウイルスをろ過してる?メルトブローン不織布など
http://infipwr.com/2020/05/24/maskfilter/
・マスク選びの基準
【LINE NEWS/2021年1月2日】飛沫防止効果が高いマスクはどれ?素材別の比較結果と留意点(マスクのフィルター性能表示、PFE・BFE・VFEなど)
https://news.line.me/issue/coronavirustips/2ef5a0ce0928
【TANTANの雑学と哲学の小部屋/2020年3月31日】PFEとBFEとVFEの違いとは?サージカルマスクの三つの基準の名称の意味と具体的な定義の違い
https://information-station.xyz/19527.html
・マスク利用時の注意点
【マイベストプロ/2020年2月19日】使い捨てマスクにアルコールをかけてはいけない!
https://mbp-japan.com/tokyo/salondemami/column/5047028/
・飛沫中のウィルス量
【自治医科大学付属さいたま医療センター】マスクの効果と正しい使用方法(1回の咳・くしゃみ中のインフルエンザウィルス量の記載)
https://www.jichi.ac.jp/center/sinryoka/kansen/taisaku_04.html
・ウィルス感染経路
【保健センター】感染経路の種類と対処法
http://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/infection_route/


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