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母の介護

先日から私の家を出て、母の家に泊まる生活をしています。こう書くと夜逃げしたみたいな感じとなりますが、そういうわけではなく、退院したけれど足腰が弱っている母を介護するためです。

三叉神経痛という、顔面に痛みが走る病気の根治のため、母は手術を受けることを決意しました。5年くらい前から顔に痛みが出始め、しばらくは薬で症状を抑えていました。しかしそれも限界があるらしく、だんだんと薬が効かなくなり、ひどい人だとあまりの痛みに耐えきれず自殺するケースまであるそうです。

私も手術内容の説明に同席して、3時間程度で終わる比較的簡易な手術であり、何よりもできるだけ早く手を打つべきと思ったので、受けるべきと母に伝えました。

それでも、頭蓋骨に穴を開けて、痛みの原因となっている神経と血管の癒着を剥がすという手術の詳細を聞いて、母は恐れをなして、なかなかうんと言ってくれません。このままだと死にたくなるほど痛くなるぞと、半ば脅すような感じで説得して、ようやく同意書にサインをしてくれました。

手術当日は私が立ち会いました。朝から始まり、午前中には終わるだろうと、待合室で持ち込んだPCで仕事をしながら構えていましたが、午後になっても連絡が来ません。15時頃にようやく終わりました。なんでも、血管がバネのようにループしていて、なかなか神経から綺麗に剥がすことができなかったそうです。無理矢理剥がして出血でもしたら大ごとです。

術後は1週間もすれば退院できると聞いていました。しかし、病院からたびたび電話があり、頭痛やめまいが治らなかったり、顔面に麻痺が出ていたり、どうも予後が良くない感じの報告を受けました。再度CTを撮ってみると、手術したところに血腫ができていて、これが悪さをしている模様とのことでした。退院はしばらく見送りとなりました。

手術から2週間ほど経って、面会の許可が出たので、仕事をプロジェクトメンバに丸投げして病院に向かいました。母の顔面の右半分が麻痺していて、右目と口が不自然に歪んでいました。バイク事故を起こした直後のビートたけしを想起しました。

ただ、会話の滑舌は悪いものの、内容ははっきりしており、早く家に帰りたいと大声で何回も言っていました。大声なのは耳が遠いためで、それはずっと前からの話です。歩行器を使うと歩くこともできるので、想像していたよりは元気そうで安心しました。

病院としてはリハビリをもう少し受けても良いのではという話でしたが、母自身が早く帰りたいと騒ぐので、できるだけ早く退院させてほしいと伝えました。その数日後に主治医から電話があり、明後日に退院が決まりました。

独力で歩くのは時間がかかりそうなので、車椅子と歩行器をレンタルしました。病院から、介護認定の申請をしておいた方が良いと勧められたので、その申請時に受付からもらった業者のチラシを見て電話をかけると、すぐに家に来てくれて、退院に間に合うよう手配してくれました。日本の介護サービスの充実度を垣間見た気がしました。

家に帰ってきた母は随分とリラックスして、大音量で韓流ドラマを見ている日々です。あとは血腫が消えて、歩けるようになって、顔面の麻痺も消えてくれることを祈るばかりです。ビートたけしよろしく、コノヤロー、バカヤローとでも言われそうな顔つきなので、不謹慎にも笑いそうになるのが困るところです。



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