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吊り込み代とは?

今回は、「吊り込み※代」について述べたいと思います。

多くの方が、「縫い代」という言葉を聞いたことがあると思います。
しかし、靴の製作でよく耳にする「吊り込み代」はなかなか聞く機会がないと思います。

「代(しろ)」とは、あることのために必要な部分のことを意味します。

よって、「縫い代」とは縫う部分以外に確保しておく布の部分、つまり縫い目から布の端までの部分で、生地を縫い合わせるために、出来上がりサイズに縫い代をプラスして裁断しています。

また、「吊り込み代」とは吊り込む部分以外に確保しておくアッパー・ライニング革の部分、つまり木型(厳密には中底)から革の端までの部分で、革を木型に沿わせるために、出来上がりサイズに吊り込み代をプラスして裁断しています。

上から見たアッパーを吊り込みを終えたもの
下から見たアッパーを吊り込み終えたもの
すくい縫いを終えたもの

2枚目と3枚目の写真を見ると吊り込み代が無くなっている事がわかると思います。

お客様の目にはまず入らない吊り込み代ですが、製作する人間にとっては非常に大切な部分です。
吊り込み代が少なすぎると革を引く箇所が少ないために吊り込みが困難になります。
逆に多すぎると余分な革が多くなりこれも吊り込みが困難になります。
よって、適当な塩梅で吊り込み代を確保して裁断する必要があります。

Corno bluでは、グッドイヤーorハンドソーン・ウェルテッド製法で靴を製作しているため、すくい縫いが終わると吊り込み代は役目を終えます。
と言うのも、その後の作業で中もの(コルクや革)を接着するため、吊り込み代は余分となり役目を終え不要になるためカットしています。

すくい縫いが終わり、余分となった吊り込み代を綺麗にカットすることを繰り返していると、なんだかもったいない気持ちが生まれたりもします。
しかし、靴を製作する上で必要な余分なんだ、綺麗に吊り込めた、芯材が設定した位置にしっかりと装着できているなどと思ったり、自分の中で感じられるものは多くあるように思います。

note : 村上紀之 

※「吊り込み」とは、靴作りにおいて革を靴の木型(ラスト)に沿わせて形を整える(木型の形状や曲線をラストに合わせる)工程を指します。
靴の最終形状を決定する重要な工程であり、靴のフィット感や外観などに大きな影響を与えます。

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