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ミロク 【小説】

   ミロク

「やあ、助手」
「はい、センセ」
「今日はバラエティに溢れた方々だなどうも」
「ええ。患者たち、と呼んでも差し支えないかと」
「こら、そんなからかいかたをしちゃいかん。被験者たちではあるだろうが、もっと尊敬を持って当たりなさい。誰が猿たちだ」
「センセのほうが酷いです」
「な。きゃつらは人間なのだからな。なあ助手よ、人間に対してだけではないぞ。研究においても同様の態度で臨むのじゃ。常に冷徹、だが、情熱を裡に秘めよ。そして、対象には常に敬意を示すのじゃ。そうでないと、対象が己の思い通りにならぬなどとぬかすようになってしまうぞ。そうなると研究ではなくただのお遊戯、ママゴトじゃ。そんな風だから時に大穴を開けるかのようなミスをしでかすんじゃ己は」
「ごもっとも。え、では、彼らのご紹介をば。紳士です。右から、セイハチ、キロク、キスケ、ゲンベイ、タヒチ、イハチ、ミロクとなっております」
「ほほう、一人、菩薩がいてはるじゃないか。そりゃ、ミロク的じゃな」
「魅力的、とおっしゃりたいのですね」
「わかるやろ」

(つづく)

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