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ダイナミックトレモロの新しい使い方を考えたい

こんにちは。Navy Springsのギター、瀬田コルネです。最近は寒いですね。

去年末ですが、新しいギターを買ってしまいました。
こちらです。

画像1

朱華と名前を付けました。はねず。

買った理由は一目惚れです。

この画像を見た時、90%くらいの人はまず最初に「何だこのギター」と思う事でしょう。
残りの10%くらいは「ああアレね」となる相当な物好きです。

これを作ったのはアストロノーツギターズさんですが、そのモデルになったギターはFenderのマローダーと呼ばれるギターです。
調べてみたところ、1965〜66年に開発されたフェンダーの最上位機種、という立ち位置らしいですが、結局10本くらい試作されただけでコスト面が原因で量産される事はなかったという代物です。

しかし、この攻めたデザイン。
最高です。

ストラトと同じレギュラースケールのネック、ジャガーやジャズマスと同じプリセット回路とオフセットシェイプボディ。ジャガータイプのピックアップ、ムスタングに付いていたダイナミックトレモロ、そこに付くピックアップのセレクタースイッチ。おまけにキルスイッチとセンターピックアップ、リアピックアップの位相反転スイッチまで付いてます。
「男の子が大好きなデザイン!」というものが詰まりに詰まってますね。最高か?
これが量産された暁にはストラトに変わって天下を取っていたと思わざるを得ないビジュアルです。

して、このギターを買ってから大体1ヶ月ぐらい経ちました。
その間、濃藍と一緒に弾いていましたが、このダイナミックトレモロが曲者です。

というのも、今まで濃藍の「ベタ付け設定のシンクロナイズドトレモロ」に慣れきっていたので、「手を離せばチューニングが勝手に元に戻る」という考えで使うと、盛大に音がズレます。
「アームを使ったら元の位置に戻すような操作」が必要になる訳です。
チューナーを使ってちょっと意識して練習すれば、そこそこすぐに出来るようになるかと思いますが、しかし私はこうも思いました。

「こんな簡単にズレるのは、何か意図があるのでは?」と。

そこで一つ仮説を立ててみました。
「他の楽器と一緒に弾く時に簡単にチューニングを合わせられるようになるのでは?」と。

皆さんはチューニングのキャリブレーションというものをご存知でしょうか。
基準になる音が何Hzかを決めるというものです。
ギターやベースでは440Hzですが、他の楽器ではそれと異なり、例えば管楽器では442Hzで合わせるのが一般的だそうです。

基本的にこれらは同じ周波数で合わせないと「同じ音なはずなのに合わさった音がなんか違和感ある」ないし「合わさった音がスゲー気持ち悪い」という事になります。なので、周波数を切り変えるという機能を持ったチューナーも発売されています。

しかし、周波数の設定自体はボタン1つで変えられますが、実際にそれに合わすには6本の弦全てチューニングし直す必要があります。
正直に言えば、それって結構めんどくさいですよね。
しかし「ジャズマスター」という名前のギターがある訳です。ジャズとなれば管楽器も使うでしょう。詳しくないのでアレですが、サックスとかトランペットとか出てくるんじゃないでしょうか。
そしてそうなれば、他の楽器に合わせてチューニングを変える必要が出てきます。

そんな環境で、「ちょっと触るだけで6本の弦のチューニングを変えられるような機能があったら……」と思った人もいると思うのです。
その解決策がダイナミックトレモロでは?というのが私の考えです。
今回のマローダーはブランドの上位機種的な位置付けです。
だとすれば、「ジャズでも使いやすく」と思って開発されていたかもしれません。

そんな訳ねえとは思いますが、今回はこの仮説が正しいかどうか調べてみたいと思います。

※この記事は思い付きと雑な調査で書かれていますので間違っている可能性が高いです。
「そうかもしれない」くらいの気持ちで読んでください。月刊ム○的な楽しみ方をしてくださると幸いです。

という訳で、まずはダイナミックトレモロがいつからあるのか?というところから調べてみます。マローダーについて書かれた資料がネットに少なすぎて困りましたので、外堀から埋めます。
ダイナミックトレモロが搭載されたのは、同じくフェンダーのムスタングが最初のようですね。
ムスタングの発売は1964年なので、マローダーの開発とはかなり近い時期です。
恐らくは当時の最先端の発明を使おう、的な発想だったんでしょう。

という事は、64年の音楽の流行りが分かれば、私の仮説の補強になるかもしれません。
1964年、東京オリンピックの年ですね。日本では美空ひばり、吉永小百合、坂本九など、「歌謡曲」が流行っていた様ですが、洋楽に目を向けるとビートルズ、ローリングストーンズ、ボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクルがこの年にアルバムをリリースしているらしいです。
ロックの影は見えていますが、まだ全体的に見て(私が大好きな)歪んだ音よりも「楽器そのものの音」を使った音楽が多いように見受けられます。

つまり、現代よりももっとアコースティック的な使い方だった可能性は高いです。だとすれば、他の楽器と組み合わせて使う事も多かったと思います。
だとすれば今の私と同じ発想に至った人が世にいた可能性もあります。ニーズがあれば、メーカーは作ってもおかしくはないはずです。
そういう事にしておいてください。そう考えられなくもないじゃないですか。

と、ここまで書いて、もしかしたら!という期待が高まってまいりましたが、そもそもの疑問を思いついてしまいました。
「音は確かに6弦満遍なくズレるけど、本当にそんなビミョーな周波数の差だけ狙ってズラせるのか?」と。
そこを調べてみましょう。

やり方は簡単です。
まず440Hzでチューニングして、わざとアーミングで狂わせる。その後チューナーの設定を変えてみて、それで全ての弦で442Hzにピッタリ!もしくは近付く!という事が分かれば、この論は正しいと言えなくもないです。

ここまで穴だらけの理論かもですが、早速やってみました。

おお???
正直言うと「周波数変えてもズレとるやん!」と言うオチにしようと思っていましたが、なかなかどうして、そこそこ正しいですね。

本体のしっかりした調整、アームの微調整と慣れは必要ですが、慣れれば、3秒もあれば440Hzから442Hzに出来ます。
これは本当に「簡易的に意図的にズラす」というのに向いてるかもしれません。
しかも弦の張力を変える(ペグを操作する)訳ではないので、同じくアームの操作だけで元に戻せます。
とは言え、セッティングによって可変幅に限界はありますが…。

これは是非とも、当時のフェンダーの人に話を聞いてみたいですね…………。もういなくなってしまったでしょうけど…………。

…………。
……今回はまあ、「新しい使い方を見つけたかもしれん」って結論にしておきましょうか。

「次の曲まで10秒しかないのに440Hzでチューニングしちゃった!!! 遅れたら殺される!!」という時はやってみると命が助かるかもしれません。
問題はダイナミックトレモロを積んだギターが少ない事ですね。

という訳で、本日はダイナミックトレモロの使い方の可能性について考えてみました。
出来の悪い学生の卒論みたいですね。トンチキ科学感。
あ、このギターについてはもう少し弾いてから書きます。

それでは、これを読んだあなたが良い機材に巡り会えますように。

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