歯科医師国家試験 勉強法【上巻】
115回歯科医師国家試験が終わりました。114回から難化・新傾向といわれる国試ですが、王道の学習方法で十分に対応できるな、というのが本番を受けた正直な感想です。問題がいくら変化しても、受験母集団のレベルが変わっていないので今まで通りの勉強をしていれば実力順に合格します。
試験本番で出せる実力というのは、以下のシンプルな方程式として表す事ができます。
実力=学力+傾向
たまに間違えて覚えている場合がありますが、実力というのは「実は持っている力」ではありません。実力というのは「実際に出せる力」のことです。
試験当日、問題を解いてる最中に学力が向上することはありませんから、本番において上式の"学力"は定数です。
歯科医師国家試験において、番狂わせを起こす変数は”傾向”だと思います。合否が開示された際に、「エッ、まさかこの人が!」という結末になるのは、この"傾向"がマイナスの値をとったことによると考えられます。
国試の範囲は膨大であり、ほとんどの受験生が範囲内のすべてをマスターすることなく当日を迎えます。この”傾向”という変数は厄介ではありますが、幸いなことに合否に本質的には影響しません。「凡ミス+傾向」という合わせ技が決まってしまったとき、初めて番狂わせという悲劇が起こります。であれば、最大公約数的な知識、つまり「みんな知っている知識」を確実に押さえ、エラーを可及的に減らすことが肝心だと考えます。
では、エラーを減らし本番でのパフォーマンスを最大にするためにはどうすればいいでしょうか。この問いに対して、受験生活を通して私が感じたコツは、コントロールできる要素をしっかりコントロールしきる、というものです。
傾向を読んだ出題予想は、どんなに頑張っても100%になりえません。傾向は残念ながら、コントロール不可の要素なのです。一方で、当日は定数扱いの学力。これはコントロールできる値です。ここから学力という要素を下のように因数分解したいと思います。
学力=学習効率×学習時間
本稿ではこの式をもとに、いかに学力をコントロールするかを4月の受験生に向けて書いていこうと思います。また、下巻を作成中です。下巻では12月の受験生に向けて記事を書こうと考えています。
国家試験は相対評価です。ダメ押しの1点を獲得する一助になれば幸いです。以下、今回の見どころです。
-- 傾向に関する一考察
-- 模擬試験の対策?
-- 学力をコントロールする
-- 浪人だったら(ちょっと厳しめの話)
-- CBTとはちがうんだよね...
-- 思考のスピードをおとす
-- 歯科医師国家試験の不都合な真実
-- 夏に向かって
傾向に関する一考察
傾向はコントロール不可ではありますが、本題に入る前に対応を少しだけ触れたいとおもいます。端的に述べると、問題意識をもって学んでいるかが問われると思います。これからは高齢者が増えるから、出題も増えそう!ではすこしボンヤリ。115回では以下のような問題が出題されました。要素だけ抜きます。
・高齢者
・骨粗鬆症の既往でビタミン製剤を服用
・縦破折
私は単なるイチ受験生なので間違っているかもしれませんが、ポイントは抜歯適応だけどこの薬、やって大丈夫?だと思います。BPじゃないんだから小手術による顎骨壊死のリスクは考慮しない。よって抜歯が正解ではないでしょうか。(まだ解答出てませんが間違ってたらすみません。間違ってても残します。)
この出題にはメッセージがあると思います。骨粗鬆症で服薬のある患者のリスクを適切に測ってほしい、というところでしょうか。Twitterなどでは、整形外科医の歯科医に対する愚痴がたまに見受けられます。そういったやりとりにアンテナが貼ってあると、この問題は解答に結びつくと思います。服薬あるから脳死でオペ回避、なんてモンキーな歯医者にならないでね、という出題者のメッセージではないでしょうか。
この問題自体はそこそこ正答率が良くなりそうです。ただ「服薬→脳死で経過観察」という短絡的な学習をしているひとはもちろん、本番で変に疑心暗鬼になってしまうと、エラーを起こしうる問題だと思います。
ここでポイントとなる学習方法として重要なのは、知識の引き算です。115回時点で骨粗鬆症に関する標準的なインプット事項は、「BPは顎骨壊死のリスクあるから場合によっては休薬するのかも」程度で、ビタミン製剤に気を向けていた人は少ないと思います。ビタミンでMRONJになるなら、BPと併記して学習しているはず。インプットしてないならこの薬はリスクにならないはず。というのが本番の思考回路でした。
模擬試験の対策?
模試の対策として、その模試の過去問を解くことの是非。やらないほうが良い、というのが私の考えです。なんかおすすめする人もいるみたいですが、否定派である理由は2つ。①実力がブレる、②時間の無駄、です。
①実力がブレる
模試ではおそらく使いまわし問題があるとおもいます。そうでなくても聞きたい論点が変わらないこともあるでしょう。
去年の模試を解いて気になったところを調べた。今年の模試にたまたま出て、たまたま点がよくなった。これ、得をするのは周りの受験生です。若干チートだから、と自覚があっても、点数が上がると勘違いして手を緩めてしまうのが人の性です。
都合の悪い方に実力がブレる、これが模試過去問のデメリット①です。模試なんて悪いなら悪いで全然いいんです。結果に対する学習量の評価がブレないことが重要です。
②時間の無駄
国試までに残されたのは半年に満たない、とてもとても短い時間です。一手一手に無駄があると、すぐ時間がつまります。
勉強において時間の無駄となる要因は「知っている知識の確認」と「今覚えなくてよい知識を今入れる」です。模試の過去問は「今覚えなくて良い知識を今入れる」に該当します。
Aという知識が、模試過去問にも模試本番にも出るとします。ポジティブな方は良い復習になる、とか定着する、とか考えるんでしょうが、間違えたほうがより記憶に残ります。
模試の本番でできるインプットを、わざわざ過去問でインプットするのは時間の無駄です。
模試はあくまで目標に対する現在地を示すにすぎません。模試が良くても本番には何も関係がありません。悪くて何も悲観することはない。やり方や分量を再考する、ただそれだけです。
私は第3回模試の2社両方で、臨床が学年ビリでした。そんなに合格率の良い大学ではありません。結局本番まで自分の選んだ選択肢に自信を持つことはできませんでした。結果、国試では得点率78%、偏差値59でした。模試は所詮模試です。
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