クレルのクレーム室#1-1 ウィリアム・マッキンリー
「最も暗い敗北の時は、最も勝利が近づいているときかもしれない。」- ウィリアム・マッキンリー -
ベネズエラ・カラカスにて────────
小ベネチアと呼ばれた国。そこに奴隷を買う場所が幾つかある。
仕事で来たクレルは暴走した奴隷を匿う廃工場を訪れた。クレルは大きなピストルで工場を襲う。火、煙が太陽に昇る。一瞬の出来事だ、片がつくのはたったの10分程度。1人の血だらけの男性が言う。「助けてくれ……」そんな言葉を無視して、クレルはその男性を撃つ。その姿を1人の少女が観ていた。汚れていて如何にも奴隷として扱われた女の子だ。見たところ7歳~10歳だろう。手と手をぎゅっと固く握りしめて、震えている。その子はクレルに言った。
おばさん助けてくれるの…… ?
健気な目でクレルに訴え掛けた。すると、ニヤリとしてクレルという女性は少女に応えた。
助ける? お前を助けたわけじゃない。仕事でコイツらを殺すのがおれの役目だ。お前らなんてどうでもいい。
少女は目を背ける。
あたしたちが恐れる物は?
女は燃えている工場に指を指す。
恐れなければいけないのはあいつらじゃない。自分自身、恐れその物だ。
この瞬間、少女の人生が変わる。