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学生指揮入門(後編)

学生指揮入門(前編)

3. 指揮の実践

ブレス

バトンテクニックの前に重要なことは呼吸です。管楽器奏者にとっては当たり前のことでしょうが、私自身が弦楽器(息をしなくても、曲がりなりにも音が出てしまう)奏者のため、学生指揮者になりたてのころは感覚的に音楽的な呼吸が身に付いていませんでした。まずはメロディやリズムを声に出して歌ってみることが理解の近道です(声を出すためには必ず息を吸わないといけない)。また管楽器奏者と弦楽器奏者が一緒に室内楽の演奏を楽しむことも、管楽器のブレスの理解、延いては管楽器と弦楽器双方のコミュニケーションの訓練として有用だと思います。

視線

「目は口ほどに物を言う」と言われます。アインザッツの合図には、まずは視線を送り奏者と呼吸を合わせることを心掛けましょう。

バトンテクニック

前項で棒を振ることは学生指揮者としては必須ではないと書きましたが、やはり振れるに越したことはありません。実際の指揮法はきちんとした先生のレッスンを受けるべきだと思いますので、ここではバトンテクニックの基礎といえる<叩き>の訓練の意義について、指揮法の本から引用してご紹介させて頂くことに留めます。
まず<叩き>の原理について引用します。

動きの原理としては腕の重みと反発を利用します。腕というのはそれ自身かなりの重さをもっています。これを利用し、下降は力を抜いて腕の重みで、上行は前腕部の腕橈骨筋の緊張・収縮によって反発し、腕を撥ね上げます。この筋肉の弛緩と緊張を繰り返すことによって<叩き>が行われます。
(斉田好男 (1999). はじめての指揮法 音楽之友社 pp.29)

「腕橈骨筋」とはいわゆる「指揮者の筋肉」のことです。その鍛錬の意義について引用します。

常人は指揮者の筋肉を使うことは極めて稀である。従ってこの筋肉は不随意筋といえよう。これを目覚めさせ、落下するこぶしが点に到達した瞬間、意のままに収縮し、そして緩んでこぶしを跳ね返すことができるよう鍛錬しなければならないのである。(中略)不随意筋を随意筋にということである。指揮法は指揮者の筋肉によるこぶしの操作ともいえるのだから、その鍛錬は重要である。
(高階正光 (2001). 完本指揮法入門 音楽之友社 pp.13)

この<叩き>の習得によって明瞭に打点を示すことができるようになると、ある程度自分の棒に自信を持つことができるようになると思います。

4. プロジェクトとしての演奏会

進捗管理

演奏会には本番という明確な「納期」があります。そこから逆算して、例えば下記のような順番で練習計画を立てていきます。
1. 演奏会本番
2. 指揮者トレーニング
3. 学生指揮者による合奏
4. 分奏・パート練習
5. 個人練習
1〜5までの各レベル間での関係性(トップダウンとボトムアップ)を意識することが重要です。各団員に全体の計画を理解してもらい、個人練習のレベルまで計画を落とし込めるようにできることを目標にしましょう。

何気なく集まって何気なく合奏をしても思ったような成果は上がりません。学生指揮者は全体の進捗を把握しておきましょう。

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