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効果がある(伸ばせる)療育とは

第11回目の投稿です。
今回は療育を提供している立場として、

「効果がある(伸ばせる)療育」とはどんな療育か

という内容を書きたいと思います。

3月に児童発達支援事業所をオープンして3ヶ月が経過したところです。1/4年が終わったところで振り返ってみると、4~5月から利用してくれているお子さんに対して約1ヶ月分の支援が提供できたところです。1ヶ月分というのはうちの事業所として週2回は来てほしいと思っていたので「週2回×4週=月8回の支援」が提供できた、ということです。

過去にブログでも、週2回以上の療育は長期記憶への定着のしやすさから、望ましいと思う旨の記事を書きましたが、月8回の療育で「やはり週2回で明らかに効果がでる」と改めて思いました。というか、驚くほどの伸び具合で驚愕しています。

宣伝みたいに感じてしまったら恐縮なんですが、子どもがあまりにも伸びているので、つい嬉しくて書きます。また親御さんから「コアラボとして考えているけどあえて言ってない療育の真理」をすらっと言っていただいたので、書いちゃいます(笑)

よく聞く内容として「うちの子言葉が遅いので、STさんがいる事業所を見ています」について。

個人的に「言葉が遅くてSTさんがいる事業所があっている」というのは、なぜそう思ったのだろうか、という点です。時系列的にいつから「言葉が出ない=言語聴覚士(言語療法)」になったのだろうか。10年以上療育経験のある妻としては、2012年時点で既に「言葉が出ない=言語聴覚士(言語療法)」だったそうです(驚)「実際は違うんだけどな~」というのが正直なところだそうです。
確かに、言語療法はSTさんならではで専門的な支援ですが、療育的に「言葉がでない子」に対して言語療法を提供して発語は促されるのでしょうか。答えは「”ほぼ”No」だと思っています。理由としては、以下です。

・言語療法が必要な子は「構音障害」等、音を作る器官自体やその動きに問題がある場合に有効
→音を作る器官や舌の動きに問題がない場合は言語療法は支援としてマッチしない、ということです。

つまり、療育的観点から「言葉が出ない(言語遅滞の)」場合は、その他の能力面で課題があるのではないか、という見立てとなります。そこで簡易的でも客観的な評価とかをしてあげると、課題は可視化されて、親御さんの理解も進みますよね。

その他の能力面で課題ってなんなの、っていう話ですが、人間は土台となる能力がざっくり4つあります。

個人的にはこの4つの土台となる能力全てにアプローチすることが、伸ばせる療育である、と思っています。

・認知能力(遊びのルール等を理解する力)
・運動能力(手先や身体を動かす力)
・言語能力(言葉を発信する、受信する力)
・対人能力(2名以上でやりとりする力)の4つです。


この能力は、人が生活していく上で土台となる能力で、それぞれは独立して成り立っているわけではなく、ジャングルのように根っこから複雑に絡み合っています。

複雑に絡み合っているため、仮に「言葉がでない」場合、言語能力だけが低いわけではなく、その他の運動能力や認知能力もつられて低い場合があります。実際に「言葉が遅い子」は手先や身体の動かし方が苦手なケースが多いです。具体的には三指握りが苦手なため、スプーンで救ったり鉛筆を握ることがうまくできない、といったところです。この場合、両手の分化(左右の手の役割分担)もできていないことが多いので、定規を使って真っ直ぐ線を引くことができません。これ、大人で沢山いますので、履歴書を送る時に書く赤字の『履歴書在中』がうまく書けません。ほっといて伸びるものではないので、大人になって本人が困ります。

ここでお分かりな方もいるかもしれませんが、ここまでくると"言語療法"から遠く離れますよね。内容的には”人間の発達段階”をどれだけ理解しているかどうか、という点です。人の発達を専門とする資格は臨床心理師や臨床発達心理師でしょうか。うちは妻が臨床発達心理師でいわゆる”人の発達”に特化した心理師なので俯瞰的に子どもを見ています。

上記より、子どもを見る上で大事なポイントは「言葉が遅い」等の親御さんでもわかる”表に表れる課題”ではなく、裏側の”見えにくい課題”をどれだけ見れるか、だと思っています。
逆に「言葉が出てる」から発達に問題がないのかというとそうではないですよね。切り替えが難しい場合もあります。もう例をあげたらキリがないんです。

子どもを俯瞰的な目線で見ていくと、実は全然見てなかったところに課題があったりいわゆる凸凹だったりしますので「言葉が遅い=言語療法」という思考の流れになってしまうのは理解できますが、実際はまったく違うよ、というところを書きたかったです。

「言葉がでない」場合は、うちで伸ばすことができますが「(構音障害等の問題があり)言葉がでない」場合は市の発達支援センター言語聴覚士さんへ相談してください、ということです。

うちを使ってくれている親御さんから「言葉が遅いから言語聴覚士、と思っていましたが違いました」というコメントがありました。親御さんがそこに気づくのは、非常に大事(よくお子さんのことを考えている証拠)です。なぜなら、支援の効果を親が目で見て把握していないと、そこに気づけないからです。この勘違いともとれる理解は子どもの発達チャンスを潰してしまう可能性がある、ということを伝えたいです。

ただ、療育の現場で言語聴覚士の専門性が重宝される(レアな)のは事実です。理由は言語療法という専門性が言語の発達を促すと思われているから。レアな理由から、枠が限定的だと親御さんは焦って利用に向けてはしるのも頷けます。ただレアな理由は他にもあります。「小児で療育をやっているSTは絶滅危惧種なみに少ない」からです。私が過去にSTを目指して国リハ受験をした時に面接で学院長から言われてショックを受けました。実態として、STの資格をとっても、まずは大人のリハビリ職が主な就職先だそうで、小児は極稀だそうです(ほぼない)。主な流れとして、まず大人のリハビリをやってからリハビリ業務の中で小児を見ていくことが多いそうです。まあとりあえず非常に少ないということです。本当に療育経験のあるSTさんは正社員ではなく、フリーランスで動いている方が多いように感じます。ニーズとして全然個人事業主でやっていけますので増加するのは納得です。

ということで、効果がある(伸ばせる)療育とは、子どもを全体視野で見て、土台の能力から伸ばすこと(だと思っています)。

どこに特化した専門性は土台の能力を伸ばしてあげた上で専門性を提供するとプラスαな効果が見込めると思います。

そんな事業所になるようしていこうと思います。

また書きます!



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