15の私へ

成人の日に15の私から手紙が届いたので、返事を書きます

  15歳のあなたにとって、世界は、恋人とネットの友達で完結していたのですね。そこにしか居場所はなかったんですね。手紙を読むまで忘れてはいましたが、鮮明に思い出せます。

  20歳の私は一応、ここにいます。変われたとは思いますが、まだ弱いままです。今にも死んでしまいたまま20歳になりました。

  隣には誰もいませんが、周りには沢山の人がいます。劇団の仲間、職場の同僚……。


  そうそう、あなたはまだお芝居をしていませんね。16歳からあなたは演劇を始めて、17歳の春に社会人劇団に入ります。母は相変わらず賛同しませんが、お芝居を辞めないでください。憧れていた俳優さんたちが、あなたの味方になってくれますから。
  今あなたが小説にしようとしているプロットは、脚本になって受賞し、上演されますよ。


  ひとつのガーベラの花の苗が、唯一の友だったことを覚えていますか。あなたは人間と接するより、植物と触れ合う方が向いているようです。今はそんな仕事をしています。

  それから、あなたの最愛の人はあなたの敵です。なるべく早く逃げなさい。

  ネットの友人らとは、それぞれが進学してサイトから離れていき、自然消滅します。でも、また別の仲間ができますから安心してください。

  明るい手紙にしようとして、自分自身のことがほとんど書けないところが、きっとあなたらしさですね。

  20歳の私は、生きようなんて思えません。あなたと同じです。しかし、あなたよりも、死ぬことの難しさを知っているので、5年歳をとっても死ねていません。死にたくて消えたくてたまらないまま、20歳になっています。ごめんね。

  私には生きたがる強さはないし、死ねる強さもないです。

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