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継続

高校時代の友人に、絵を描くのが趣味の男がいる。そいつはTwitterとかで活動もしてて、主に美少女ゲームのキャラクターの絵を描いている。何年か前にそのアカウントを教えられたのでフォローしており、定期的に絵を上げているのは知っていた。

先日、1枚の漫画絵に数千のいいねが付いているのをみた。今までずっと何気なく見ていたけど、多分今までで1番いいねがついていた。

彼は高校の時に初めて絵を描き始めて、そのときは(当たり前だろうけど)決して上手いとは言い難かった。それでも描いた絵を嬉しそうに俺に見せてくれた。俺は俺で中学の頃から絵を描くことが好きだったので、2人で描いた絵を見せあっていた。

当時の俺は、描けば描くほど上手くなっている気がして、毎日アニメやゲームのキャラクターを模写したり、オリジナルのキャラクターを描いたりしていた。中学のはじめから高校卒業まで、ノートを何冊も埋めるほどだった。楽しかったこともあって、俺には何故か過剰に自信があった。

自信があったから、後から絵を描きはじめた彼に対して少し優越感を持っていた。口には出さなかったけど、俺よりは下手だなとか、センスないんじゃないかなとか、今だから言えるけど、正直いつもそう思っていた。

大学に入って、俺は絵を描かなくなった。上には上がいる、じゃないけど、尋常じゃないくらい絵が上手い人がゴロゴロといた。美術専攻の女の子なんて本物そっくりの芸能人を描くし、サークルにいた体育会系のゴリゴリの友人も、その風貌からはとても想像できないような綺麗な絵を描いていた。そういう人たちを見て俺は自分の力の無さに失望して、絵を描くことが楽しくなった。

そんな中、彼はひたすら絵を描き続け、現在は何千もの人々が注目するような絵を描いている。今や彼の絵は線にも迷いがなくて、とても下手とは思えなかった。

側から見れば明らかなメシウマ状態である。今まで見下してきた人の描く絵が、数年後には多くの人に見られている。つぎは俺が人々から見下される番だ。受け入れるしかない。掌を返して彼の絵を絶賛する権利もない。ただただ下から見上げるのだ。ほんとうに、継続とは大事なんだなと思った。

ふと思い立って俺も人の絵を描いた。適当にネットで拾った画像を写してみたけど、いきなり全身像なんか描くもんじゃない。ぐちゃぐちゃである。昔よりは到底楽しいとは思えなかったけど、少しだけあの頃を思い出せた気がした。

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