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コーチングにおける守破離の重要性 ~クライアントの成長を促すために~

当たり前の話だと思うが、優れたコーチになるためには、単に技術やメソッドを習得するだけでは不十分だ。コーチ自身が不断に成長し、クライアントとの関係性の中で柔軟に対応できる力を身につけることが重要だ。そのためのキーワードとして私は「守破離」を重要視している。

「守破離」とは、もともと芸道や武道の世界で用いられてきた概念だ。「守」は既存の型や技を習得する段階、「破」は型にとらわれず自由に技を使いこなす段階、「離」は型から離れて自分独自の境地に到達する段階を指す。この考え方は、コーチングにおいても大きな示唆を与えてくれる。

コーチングの「守」の段階では、既存のコーチング流派のメソッドを学び、その枠組みの中で実践を積むことが大切だ。代表的なものとしては、コーチ・エィの提唱したG.R.O.W.モデルなどがある。これらのメソッドを身につけることで、コーチングの基礎力を固めることができるだろう。

しかし、「守」の段階だけでは、現実には効果的なコーチングは難しい。なぜなら、クライアントには一人ひとり固有の認知構造や経験、特性があるからだ。画一的なメソッドを適用するだけでは、クライアントのニーズに応えることはできない。自分が学んだメソッドを押し付けると、クライアントの内省はむしろ阻害され、セッション体験はぎこちないものになる。

そこで必要になるのが、「破」の段階だ。「破」では、習得したメソッドにとらわれずに、クライアントの個別性に焦点を合わせて柔軟に対応することだ。クライアントの心の内実を丁寧に捉え、その人に合ったアプローチを選択する。そのためには学んできたメソッドの世界観を相対化してクライアントの世界観を虚心坦懐に感じることが必要だ。そうしてクライアントとの信頼関係を気づきつつ、その構造に準拠して適したコーチングを進めていくことが、セッションの体験価値を高めていく。それが「破」の本質だ。

ただし、「破」の段階だけでは、クライアントの真の成長を促すことは難しい。クライアントに寄り添うことは大切だが、時にはコーチからの積極的な働きかけも必要不可欠だ。クライアントは自分の人生を推進するために新たな気づきと学びを求めているのだから。それを提供するのもコーチの重要な役割だ。

そこで重要になるのが、「離」の段階だ。「離」では、コーチ自身の知見や経験、世界観を活かしながら、クライアントの気づきと学びを引き出すことが求められる。コーチは、クライアントに新たな視点や考え方を提示し、その人の可能性を広げる役割を果たすのだ。

例えば、クライアントが自己肯定感の低さで悩んでいる場合、共感的に寄り添うだけでは十分ではない。コーチ自身の人生経験から得た教訓を共有したり、自己肯定感を高めるための具体的な方法を提案したりすることで、クライアントの変容を促すことができる場合は多い。

「守破離」の考え方は、コーチがクライアントとの関係性の中で成長していくプロセスを表している。メソッドを学ぶことから始まり、クライアントの個別性に応じて柔軟に対応し、最終的にはコーチ自身の経験や世界観を総動員してクライアントの気づきと学びを促す。このような段階的な発展が、優れたコーチを育むために不可欠なのだ。

コーチングに「守破離」の概念を取り入れることで、私たちはクライアントとの協働的な関係性の中で、両者の成長と学びを促進することができるだろう。既存のメソッドを大切にしつつ、その枠組みにとらわれない自由な発想を持つこと。クライアントに寄り添いながらも、時に積極的に働きかけていくこと。そして何より、コーチ自身が学び続ける姿勢を持つこと。

そのような「守破離」の精神を実践の指針として活かしていくことが、これからのコーチに求められている重要な課題ではないだろうか。

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