見出し画像

【心の在り方から見る経営①】プロダクトの同質化競争を超える経営

経営課題の源泉は経営者の心の在り方にある
組織課題の源泉は構成員の
心の在り方にある
ゆえに課題への根本的な解消は常に内面の変容を伴う

これは10年近く経営戦略コンサルタントを勤めてきた私が確信したことです。これは私がコーチングをやっていることの大きな理由の一つです。私がなぜこのようなことを考えるに至ったのか、あるいは、コーチとして経営というものをどう観察しているのかの一端をnoteで連続してお伝えしたいと思います。第1回はプロダクトの同質化競争を超える経営というテーマです。

ーーーーーーーー

自社が事業を営む業界に競合が参入すると、同質化競争が始まる。 

同質化競争は、類似サービス同士が、広宣費・販促費の投入、値下げによってシェアを取り合う消耗戦。 値下げメリットを受ける顧客にとっては歓迎できるが、経営にとっては常に頭痛の種だ。 この時、経営者は何を考えるべきか。個人的に思うことを書いておきたい。

まず、悪手としては、経営者の脳内リソースが同質化競争にどっぷりと囚われることだ。これはとてもよくあることだ。

競合の参入は経営者の危機感を惹起する。敵愾心をも刺激する。ゆえに経営者はついつい「(一刻も早く)何とか競合を打ち負かしたい」という発想に捕らわれる。

経営者の焦りを起源とした「(一刻も早く)何とか競合を打ち負かしたい」という発想は、経営者の視野をどんどん狭めていく。

視野が狭まると、同質化競争の発想から抜けられなくなる。なぜなら、根本的な解決ではなく、付け焼き刃の解決方法で状況を打開しようとするからだ。そうして、競争は泥沼化にむかっていく。

「営業がもっと強引に仕掛けるべきだ」「営業トークでどうにかならないのか」「この広告に投資すれば」「もっと値下げしてでも受注すべきだ」と。このような会話が社内でささやかれるようであれば悪い流れだ。

そもそも経営者の脳内リソースは常に有限である。会社を徐々に消耗させていく同質化競争に経営者が一喜一憂する事態は明らかに健全ではない。

内実は同質化競争なのに、そうではないと自ら信じ込んでドツボにハマる経営者も存在する。「顧客第一主義という価値観では当社が一番だ!だから同質化競争ではない!顧客第一主義を理解してもらうことが打開策だ!」という考え方をする。

しかし、たとえ上記が正しくとも、それは主観的な差別化要素であり、それは顧客がサービスを利用してみて初めて実感できるものだ。また、文字通り主観の解釈に左右されるのだから、優位性を根拠づけるには弱い場合も多々ある。主観的な差別化要素を訴えても、同質化競争から逃れるのは難しい。

重要なことは経営者の脳内リソースを同質化競争から、競合参入を期に「製品を本質的に磨きこむことで客観的優位性を構築する」という視点を持てるかだ。もちろん、客観的優位性を構築できるかはわからない。しかし、経営者がかかる視点を持たない限り、同質化競争で勝ち抜く視点から離脱することは難しい。

もちろん、すぐに同質化競争から離脱できるわけではない。同質化競争でしばらく競合他社としのぎを削る事態にも備えておく必要がある。その時の要諦は何か。

これは自分たちのサービスに失点/落ち度がないことだと私は思う。同質化競争下においては、概して顧客にとっての負の体験(不満足)がサービス切り替えの決定打になることが多い。代替可能性があるからこそ、不満足なものは淘汰される。自らのサービスの質をしっかり高めて、敵失を待つのが効果的だと私は思う。というか、少し冷静になって情勢を分析すれば、この程度のアイデアは造作もなく浮かんでくるのではないか。

特に自社が業界の先駆者であれば、上記の戦術は効果をあげるだろう。

後発の競合他社は「儲かりそうだから」という理由で先駆者をベンチマークして類似サービスをこしらえただけのケースが多い。そのような会社には実は志が決定的に欠けていることがある。志が欠けていれば、飽くなき顧客志向は生まれない。そのようなものだから、競合が顧客への不義理で問題を抱えることになりがちなのだ。もちろん断言はできないが。

あなたのサービスが本当に高い志で支えられている自信があれば、泰然としてサービスの質を高め、サービスの客観的優位性を構築することに専心するのが良いだろう。

どうだろうか?至ってシンプルな話だったが、経営者の心の在り方が競争戦略に大きく影響を与える構図を少しご理解いただけたのではないだろうか。同質化競争を回避するべきという話は、経営理論ではもちろん定石だ。だが大抵の企業はそれができない。コンサルタントが同質化競争を回避すべきと主張したところで、なかなかうまく軌道修正できない。なぜなら、同質化競争の沼に経営者を引き入れるのは経営者自身の焦り、不安、敵愾心という内面の作用だからだ。このような内面の作用が無意識に重要な意思決定、日々の差配を方向付ける。だから、経営を心の在り方から観る視点が必要なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?