copywriter_貫太郎

はじめまして。もうすぐ20年の現役コピーライターです。これからコピーライターを目指す人…

copywriter_貫太郎

はじめまして。もうすぐ20年の現役コピーライターです。これからコピーライターを目指す人や、コピーライターになりたての人たちに、小説というカタチでほんの少しだけ役立つ情報をお届けできればと思ってます。駄文ですが、お付き合いいただければ幸いです。

最近の記事

【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第8話

― 第8話 ― デザイン部では、月野が悩んでいた。檜山が立つという情報で、一段と悩ましくなった。何か仕掛けてくるに違いない。そう思うと、自分が何をすべきか見えなくなった。目をつむり、眉間にシワを寄せても何も浮かばない。真っ白い空間の中で立ち尽くす自分が見えるばかり。こうして考えていても時間をムダにするだけだと思い、川口とブレストをすることにした。 「川口くん、ブレストしない?」 「いいっすね。いくつか考えてみたんで、見てほしいし」 打ち合わせブースに場所を移すと、さっそく

    • 【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第7話

      ― 第7話 ― 荒木はヨネテックの会議室にいた。予定通り、ヨネテックの西田と会うためだ。会議室で待っていると西田が入ってきた。 「お待たせしてすみません。前の会議が長引いてしまいまして」 「いえ、むしろお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます」 「今日はバイクの件ですよね」 元々今日は以前納品した原稿のリサイズ作業の話を受けにきた。電話やメールで済む内容ではあったが、可能な限り会いに行くのが荒木のスタンスだった。 雑誌へのリサイズをはじめ、WEBバナーもかなり

      • 【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第6話

        ― 第6話 ― 帰社してデスクに戻ると、すぐに伊佐さんが「どうだった?」と声をかけてきた。ボクはオリエンで聞いたことをできるだけ正確に伝えた。もちろん西田さんの歯切れの悪い語尾の件も。 「なるほどね。最新型の新商品だから競合になったのか。じゃあ、誤植騒ぎはまったく関係なかったってことか」 言われるまですっかりその話を忘れていた。無実の罪を被せられた。あやうく誤植になるところだったのは本当なので改めて文句を言うつもりもないが、少しだけ腑に落ちない気分だ。 改めてオリエン時に

        • 【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第5話

          ― 第5話 ― それか数日後、ヨネテックでのオリエンに参加することになった。荒木さんと林CD、それと伊佐さんの代わりにボク。伊佐さんは参加する予定だったが、急な用事で欠席となった。デザイナーは月野さんと晴人が担当することになったが、人数が多くなるという理由で晴人はお留守番だ。 都内にあるヨネテックの本社ビルに着くと、荒木さんが受付に行き、丁寧な口調で宣伝部の西田さんと打ち合わせであることを伝えた。戻ってきた荒木さんがみんなにゲストカードを配り、それを首からかける。敵地に来た

        【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第8話

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第4話

          ― 第4話 ― 翌日、いつものように朝からデスクに向かって仕事をしていた。すると、デジャブのようにドタバタと荒木さんが駆け込んできた。 「天野!いるか!?」 これも昨日と同じだ。また誤植だろうか。しかし、実際はそれ以上に良くない話だったようだ。 「誤植なんてやらかすから、競合になっちまったじゃないか」 「競合?」 奥の方から海原さんが気の抜けた声で言った。 「そうです。次の除雪機の原稿が競合になってしまいました。今までこんなことなかったのに」 「あらら。まあ、もう少し詳しく

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第4話

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第3話

          ― 第3話 ― 「天野!いるか!?」 血相を変えた営業の荒木さんが、ドタバタと走ってきた。何ごとかと部員全員が荒木さんに注目している。 「電話番号が間違ってんぞ」 今進行している除雪機の新聞5段原稿の出力を突き出した。ボクはその紙面から電話番号を探すと、そこには0がひとつ多い普通ならあり得ない電話番号が記載されていた。思わず「あっ」とひとこと発した。 「あっ、じゃない。どーすんだよ、天野」 横から紙面をのぞきこんできた澤田さんも「あらら」と言わんばかりの表情をしている。

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第3話

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第2話

          第2話 デスクに向かったボクは、アドバイス通りにオリエン資料を見直すことから始めた。ネットで他のメーカーとの違いなども調べ、少しずつ商品の特徴が見えてきた。今回の商品はコンパクトでありながらも、パワーがある。パワーがあるということは、雪を吸い上げる力だけではなく、ユーザーが除雪機を押す力も少なくて済むようだ。素直にコピーにするとすれば… ―コンパクトなのに、パワーに自信― そんなコピーもありだろうが、あまりにもありふれたコピーだ。それこそ広告紙面の飾りにしかならないだろ

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第2話

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第1話

          第1話 クシャクシャに丸められた紙が、ゴミ箱に向かって勢いよく飛んでいく。 「なめてんのか、やりなおせ」 紙くずとなったその紙は、ゴミ箱のフチにすら当たらず床に落ちた。 罵声を浴びているのは、他でもないボクだ。ただ、その紙の行方はどうしても知っておきたかった。その行方を確かめ、視線を目の前にいる上司に戻した。激怒しているというよりは、呆れていると言える表情だった。 「もう1日やるから、やりおなせ。わかったな」 そう言い残すと、椅子から立ち上がり、どこかに行ってしまった。ボ

          【note小説】キャッチコピーが書きたくて 第1話