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条文解説【著作権法第2条(定義)第1項第2号】

著作権法第2条(定義)第1項第2号:
 
「(1) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(ⅱ) 著作者 著作物を創作する者をいう。」
 
第2条は、著作権法において重要な概念となる用語や頻繁に使用される用語の意義をあらかじめ明確に定めることによって、解釈上の疑義を極力避けることを狙った規定です。
 
著作者とは、「著作物」すなわち「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)を創作する者のことです。小説を書いた作家、楽曲を作曲した作曲家、イラストを描いたイラストレータ、写真を撮影した写真家などが、典型的には、「著作者」といえます。
もっとも、創作活動を職業とする人(プロ)だけが「著作者」になるわけではありません。主婦が家事の合間にプログを書けばその主婦が、高校生がスマホで写真や動画を撮ればその高校生が、小学生が宿題で読書感想文を書けばその小学生が、幼児が気ままに絵を描けばその幼児が、それぞれ「著作者」になります。彼らが創作したもの(プログ記事、写真、動画、読書感想文、絵)がうまいか下手か、その文化的(学術的、芸術的)価値の高低、さらには、商業性の有無(市場で売れるかどうか)といったことは、一切関係ありません。
このように、私たちは、誰しも、日常生活の中で、日々多くの「著作物を創作」しています。ただ、その多くは商業的ないし経済的な価値を伴って利用されることがないため、自分が「著作者」であることを意識することが少ないだけのことです。
 
著作権法上、現実に著作物の創作活動に主体的に携わった者が「著作者」となります。作成に当たって単にアイデアや素材を提供しただけの者、補助的な作業をしただけの者など、その関与の程度、態様からして、著作物の作成について自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価できない者は、「著作者」に当たりません。
ある著作物の創作過程に複数の者が関与した場合に、これらの者の中で誰が(又は誰と誰が)「著作者」になるか、ということは裁判上しばしば争われる問題で、実際上その解釈は重要です。この点、判例は、著作物の創作的な表現と認められるところを作成した者は誰か(逆に言うと、著作物の創作的な表現とは認められないところに関与したに過ぎない者は著作者ではない)、という基準で「著作者」を認定しているようです。若干の具体例で見てみると、創作に動因を与えたに過ぎない者(例えば、創作の企画を発案した者、小説家等にヒントやテーマを与えた者など)は、通常、「著作者」に当たりません。著作物の創作を他者に委託した場合の委託者(例えば、絵画やイラスト、写真等の制作を依頼した注文主など)は、その者が創作費用を負担したか否かにかかわらず、「著作者」に当たりません(受託者・受注者が著作者となります)。また、著作物の創作に際し補助的な作業に従事したに過ぎない者も「著作者」ではありません。一般的には、以上のように考えて差し支えないと思います。

【より詳しい情報→】【著作権に関する相談→】http://www.kls-law.org/

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