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キーワード『著作権等侵害罪の一部非親告罪化』

『著作権等侵害罪の一部非親告罪化』
~著作権等侵害罪が非親告罪となる場合があります~
 
著作権や著作隣接権を侵害する行為に対しては、「罰則」(119条以下)が用意されていて、一定要件の下で刑事罰の対象となりえます。ところで、著作権等の侵害罪は、従来より「親告罪」とされていて、著作権者等の「告訴がなければ公訴を提起することができない」とされています(123条1項)。
ところが、著作権等の侵害を取り巻く社会情勢の変化や国際協調(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効)等の観点から、著作権等侵害罪のうち、一定の要件(以下の3つのすべての要件)に該当する場合に限って非親告罪とし、著作権者等の告訴がなくとも公訴を提起することができることとなりました(123条2項3項/平成30年12月30日から施行)。これを「著作権等侵害罪の一部非親告罪化」と呼んでいます。
 
<非親告罪となるための要件>
① 対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること(目的性の要件)
:侵害者が,侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること。
② 有償著作物等について原作のまま譲渡・公衆送信又は複製を行うものであること(原作性の要件)
:有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること。
③ 有償著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる権利者の利益が不当に害されること(不当性の要件)
:有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる「利益が不当に害されることとなる場合」であること。
(注) 「有償著作物等」とは、権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物等のことです(123条3項参照)
 
以上の改正によって、
例えば、「販売中の漫画や小説の海賊版を販売する行為」や、「映画の海賊版をネット配信する行為」などについては、非親告罪となるものと解されます。
一方、「漫画等の同人誌をコミケで販売する行為」や、「漫画のパロディをブログに投稿する行為」などについては、非親告罪とならない(つまり、親告罪のままである)と解されます(これらの行為は、通常、原作のまま著作物等を用いるものではなく(二次創作に当たる)、また、市場において原作と競合せず、権利者の利益を不当に害するものではないと考えられるから)。
AK

【より詳しい情報→】【著作権に関する相談→】http://www.kls-law.org/
 

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