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林業のあり方を考える

※このnoteは武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダシップコースの「クリエイティブリーダシップ特論」という、クリエイティブの力をビジネス・社会に活用しているゲスト講師の方々による講義のレポートです。


4/12の講義では、林業という領域で活動されているOutwoodsの足立成亮氏(以下足立さん)、フリーの木こりの陣内雄氏(以下陣内さん)に、お二人が考えている林業のあり方・山と人との関わりについてお話を伺いました。

足立成亮さん  Outwoods Facebook:https://www.facebook.com/outwoods
陣内雄さん      HP: https://jinnyama.world/profile/ 


このnoteではお二人のお話の中から印象的だったことについて書いていきます。



山と人との関係性を変える森林作業道   —足立さん

一言“林業”といっても色々な仕事があるそうですが、その中でも足立さんは「森林作業道」についてお話をしてくださいました。

「森林作業道」とは、山に入ったり伐採した木を運び出すために整備する道のことを指します。(厳密にいうと一般車も通ることのできる道を「林道」、林業規定に基づく林業従事者が使用する道を「林業専用道」、林業規定によらず特定の林業従事者が使用する道を「森林作業道」というそうです。)

通常は“効率“を重視して作られるため大きく木を切って道をつくったりすることもあり、自然や景観を損ねてしまうこともあるとか。そんな状況に疑問を持った足立さんが描くのは「森林作業道」ではなく、「森林作業道を含めた人と山の関わり方全体」でした。


景観を損ねない森林作業道、そしてその道を通って街から林業の現場を見に来る人、林業が終わった現場で行われるイベント、森を少し高い位置から見渡すことができるツリーハウス、、、、などと足立さんは色々な側面から森と人との関わりを描き、実際にカタチにする活動をされています。

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また、足立さんは森に人を“呼ぶ“だけでなく、まちに森を“持ち出す“活動もされています。写真を撮っていた経験を生かし、写真と言葉で表現されているそうです。


足立さんは個人による山の購入・利用が増えていることについての意見を尋ねられると、

山への入り口が増え多くの人が山に関わっていくこと自体は良いと思っている。
現状どう活用していいかわからない人が多いと思うので、自然を傷つけてしまうような間違った使い方をしないようにサポートしていきたい。

というような回答をされていました。
私は、足立さんから「沢山の人が山に来てほしい」という思いを感じました。「林業」という生産者の現場は中々普段の生活からは見えず、知らないことが多いと思います。私自身、今回の講義を受けるまでは「林業」について何もイメージすらできない状態でした。

そんな私たちのために、足立さんは色々な形で山へのアクセス方法を用意してくださっている。伝えるためにはどの媒体がいい、という話ではなくて様々な関わり方をデザインしている。そんな姿がとても印象的でした。


また、山に興味ない人にはどうやって山のことを伝えていくのか?という質問に対し、

本当に山に興味が無い人に興味を持ってもらうのは難しいと思っている。だからこそその人にとって「人」として魅力的であれたらいいなと考えている。本当に伝えたかったらまずはお酒を飲みに行ったりして仲良くなることから始めると思う。

という風におっしゃっていました。この言葉を聞いて、“自分自身”でさえもメディアになるのか、とはっとさせられました。
人間関係において“その人自身“と向き合うことは当たり前のことなのに、ビジネスのようなものになるとついつい“自分のあり方“が意識から外れてしまう。
私もまずは自分自身が魅力的な人間になる、ということを意識していきたいと思いました。




7割が地域に還る建築   —陣内さん


足立さんと同じくフリーの木こりとして活動していらっしゃる陣内さん。
陣内さんは地域で循環する林業についてお話をして下さりました。

材料は地元である北海道でとれる木材を使います。そして通常業者に頼む製材加工の工程も、自分たちで山で行います。そして建築のバックグラウンドを生かし大工さんと協力をして建築をしていきます。ここまでの工程を全て自分たちで行うことで、流通ルートに出せないような木を活用することができたり、地域の人の力を借りて地域にお金を落として建築することができます。

そうしてできたのがパン工房が「jojoniパン工房」です。

(個人的にパンが好きなのでまるで生き物のような安定しない自然発酵のパン、、、食べてみたいです。🍞)


流通にのらないような木材を使ったりするとコストがかかってしまうのではないか?という質問に対し、陣内さんは、

建築は人件費をできるだけ削るのがセオリー。
でも地域にお金が落ちるならOKかなと。

こんなことをおっしゃっていました。モノを売る側に立って考えようとすると、“安くないと買ってもらえない“という考えが頭をちらつきます。
でも本来お金は“価値“に対して払っている、ということを考えると、モノそのものだけではなくそのモノが持つ背景や思想にお金払う、という風に考えることができるのかと改めて感じました。
“エシカル“であることだけでなく、作り手への応援や、自分たちのまちがどうしたらもっと良くなるのかなどと色々な観点で経済活動を考えていきたいと感じました。



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最後に

山にいい木を残したいと思うとやり方を変える必要がある。

人間を中心とした考え方ではなく、大自然の中で生きる人間の暮らしはどうあるべきかーーーーそんな視点で考え、行動されているお二人がとても心に残りました。

ビジョンを描くことは簡単で、実際にカタチにすることが難しい。
しかしカタチにすることで周りの人が理解することができ、その価値観が伝播していく。

そんなことを感じた講義でした。


2021.4.12  こっぺ

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