見出し画像

きみの番じゃないよ

やぁ、そこのきみ
なにをしようとしているの?
ちがうちがう
まだきみの番じゃないよ

「Not yet」

自ら命を経とうと意を結し
暗い死の境目で
突然現れた黒い服を着た彼

彼は命の門の番人らしく
何やら黄色い輪を持っている

彼の手により
頭上に輪をかけられた人は
門を潜り白い扉へと進んでいく

未来に何も思い浮かばせることができず
今の生活に嫌気がさし
紐に首を通したはずだった

呆気なく送り返されて
意識を取り戻したぼくは
部屋の床にうずくまり泣いていた

まだきみの番じゃないよ

という言葉だけがぼくの耳に残る

順番抜かしをして
命を終えることはできないらしい

特にやりたいことも
やれそうなことも思い浮かばないけど

ぼくの番がくるその日まで
とりあえず息をすることにした


ここで生きていたら何か変わるだろうか
首の皮一枚で生きることを辞めずに
繋ぎ止めた命だから
何かしたい

何か?

やっぱり、まだぼくの番じゃないみたい

この記事が参加している募集

記事を読んでいただき、ありがとうございます!いただいたサポートは、イラスト制作活動費として、利用させていただきます!