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「オニミチ」ができるまで

制作のきっかけ

オニミチは、2010年10月頃に発売。
(今となっては実は発売日がはっきりしません…すみません)

アソビジ初のコーポラティブゲーム「オニミチ」

オランダで出会ったコーポラティブゲーム(協同ゲーム)に影響を受けて、
「日本の教室にもこんなゲームをたくさん置いてもらいたい」
という気持ちで初めてつくったのがオニミチです。

参考にさせてもらったのが、カナダのFamily Pastimes社のゲーム。
(そもそもオランダで出会ったボードゲームもこの会社のものでした。)

いくつか遊んでみると、どうしたら「協同」するゲームになるのか、ということが見えてきたので、
「試しに自分でもつくってみよう。」
という気持ちでつくり始めました。

まずは手書きでコピー用紙にボードのデザインを描いてみます。
この時は、鉛筆でただただコマが書いてあるだけ。
ひとりで遊んでいても正直つまらないし、むしろ寂しくなるんだな…と思いながらつくり進めました。

それをもとに、友人の幕内那菜さんにデザインをお願いしたところ
想像以上にすごい貼り絵のボードが出来上がってきました。

プロに頼む、ってこういうことなんだと感動したことが忘れられないくらい、とにかく嬉しかったのを覚えています。

日本であまり広まっていなかった理由を考えてみた

カナダで作られたコーポラティブゲームで遊んでみて、「面白い」と思った際に、外国人の友達や、外国で育った人に色々と聞いてみたところ、カナダやヨーロッパ、アメリカなどでは「まぁ、遊んだことはあるね」というものであることがわかってきました。
私が「おもしろい!」と思った感じとはちょっと違って、「学校でやらされた印象」とか「対戦型じゃないからつまらない」「教育的なんだよね」みたいな声も聞こえてきました。

では、そういう教育に良さそうなものがどうして日本では流行っていないのか?

私がコーポラティブゲームを知った頃の日本の教室には、ボードゲームはおろか、トランプさえも「雨の日のみ」というような学校が多く、そのルールのせいなのか?とも思ったのですが、少し違う世界も見えてきました。

ヨーロッパやカナダ、アメリカなどでは、移民も多く、多様な人たちが同じ国や地域で生きていかねばらないからこそ、小さな頃から「みんなで協力していくこと」をゲームで学んでいくことが学校の中でもある程度重視されていたようです。(もちろん遊ばない学校もあるでしょうけど)

でも日本は、なんとなく揃えたり、空気を読んだりすることは得意だし、むしろ美徳としてされているから、生活の中で学べるような「力を合わせること」を、わざわざ「ボードゲームで学ぶ」必要はなかったのではないかと予想しました。

でも。
じゃぁ、なぜこのコーポラティブゲームを、私はおもしろいと思ったのか。私のまわりの日本の友人たちは楽しそうに遊ぶのだろうか?
あたりまえにできることを、ゲームでやってみると楽しくなるのはなぜ?
そんなふうに思うようになりました。

むしろ、美徳とされている、「空気を読むこと」や「相手の気持ちを慮ること」で抑圧されていることや、我慢したり、見逃していることがあるのではないか??
ゲームを通して、私たちが楽しんでいることは、
「自分の考えをきちんと場に出してみたら、みんなの役に立つじゃんか」
ということや
「サイコロ1つで、みんなで一緒に喜んだり悔しがったりできること」
なのではないか???

そんなことに気がつき始めたのです。

「学ばされる協力」ではなく、「空気を読んでうまくいかせる協力」でもなく
それぞれの考えを、あーでもないこーでもないと場に出して得られる未来
がただただ楽しい。
しかもそこに「運」とか「偶然」が入ってくるからなお楽しい。

そういうことなんじゃないか。と。

だったら、あえて「日本っぽいデザイン」でつくってみたい。と思い、
デザインの方向性はなんとなく決まっていきました。

「日本っぽさ」と昔話

いくつかのコーポラティブゲームで遊んでみて、ボードゲームには「ストーリー」があるとよい。と感じていたので、日本で誰もが知っている「ストーリー」ってどんなものだろう?と考えてみました。

そこですぐに頭に浮かんだのが「ももたろう」。
と、「オニ」の存在でした。

コーポラティブゲームには、参加者みんなに「共通の敵」が必要です。
敵は、わかりやすい「キャラクター」でもいいですし、「時間制限」みたいなものでもよいのですが、今回は、「オニ」にしてみました。

それからは、もうあっという間でした。

ももたろうとはちょっと違うけれど、主人公が、5つの宝物を、オニが寝ている間にゲットして家に帰る。というシンプルなストーリーです。
(主人公とオニのどちらが悪者かはあえて決めていません。)

「オニが起きるー!こわいー!」
という人もいれば
「この宝物でオニをやっつければいい!」
という人もいたりします。

とにかく、参加者全員が物語に入っていける。
それがコーポラティブゲームの特徴でもあります。
そして、馴染みのある「昔話」のストーリーに、みんながスッと入っていけるのは、オニミチの最大の特徴でもあると思います。

対話することを楽しんでほしい

コーポラティブゲームをつくりたい、広めたい、と私が思ったのは
ただただ「対話することの楽しさを味わってほしい」ということでした。

協力することは善。ということではなくて、
色々な意見が対立したとしても、合意形成できたり、考えの変化が起きる楽しさを、現実の難しいことではなくて「遊び」の中でたくさん味わってほしい。そんな願いがあります。

ぜひとも一度、遊んでみてください。

遊び方の動画はこちらからどうぞ。