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『フランケンシュタイン』 かきかず Jan.28

ミュージカル『フランケンシュタイン』。
初演は見逃したので、先日かきこにで初見だったのに続いてのかきかず。各1回だしアッキービクターは観てないけど、My楽。
ハマるつもりは全然なかったんだよ…。

2回目なので物語の構造が理解できていた分、歌詞や台詞のより詳細が入ってきたし、没入して観ることができた。
初見ではストーリーを追うのが少々難しく、以前観たNTLive『フランケンシュタイン』との描き方の違いに戸惑いもあったのだが、もうこのミュージカルはビクターとアンリの関係にがっつりフォーカスしちゃえば良いのだ!と開き直ることにして正解。

先日観たかっきービクター/ジャックに(たまたま最近見返したデスミュ柿ラなどによる相乗効果もあり)かなり魅かれていることを自覚しながらの観劇…果たして生きて帰れるのだろうか?
この作品の客席にこんな気持ちで座ることになろうとは。

戦場での、ビクターとアンリの出逢い。
ビクター最初から、ドキドキワクワクウキウキしながら、それを押し隠しながらアンリを訪ねて来てたね!登場してくる時の顔、目線の動きなどからそれが見て取れた。

ビクターが言った「偽善者だ」って、アンリには刺さる言葉だったんだなぁ。やりたいことはビクターと同じだった。怖気づいて辞めていただけだった。
もう処刑されてもいいやなんて思うほど人生や世界に嫌気がさしていたアンリ、同じように人類や世界を憂いているビクターがそれに立ち向かおうとする情熱に触れて、自分もすっかり熱くなっちゃったんだろう。
こんなにも真っ直ぐに懐に飛び込んできてくれる、ピュアな少年のようなビクターに…恋に落ちたんだな。
「パートナーです」って将軍に紹介する時のふたりのはにかみっぷりときたら☺️

ビクターが郷里に帰ってきた時のあの感じ…
「放っといてくれ!」と言って孤立することの根底には、「僕に関わると呪われる」という刷り込まれた可哀想な思いがあるんだなぁ。
いいんだアンリだけは僕のやりたいことを理解してくれるから!アンリが居ればいいから!
つまり…ビクターは意識していなかったかもしれないけど、この研究にアンリを誘ったのは、一緒に呪われよう、一緒に堕ちようということでもあったんだよなぁ…。

実験失敗してムシャクシャして酒場でヤケになってる酔っ払いビクターはなんだかとても可愛いし、実験室から出てきて階段に座り込んで頭抱えちゃってるところも可愛いったらない。
アンリを唯一の理解者として信頼し、心を許して甘えちゃってる。
そんなビクターを、アンリは優しい笑顔で包み込んでくれる。
アンリ…太陽はあんただよ。

非道な葬儀屋に逆上し殺してしまったビクターを見てアンリが咄嗟に思いつき取った行動が、あれだった…。
研究のため、ビクターが死刑にされてはならない、だけではなく…
ビクターに自分の身体をあげたい、って…
たぶん思ってたよね…
そしてビクターもそれを読み取ってたよね…

ある意味アンリに、覚悟を突きつけられた。

実は初見の時、それを受けていっそのことビクターが法廷で「アンリが殺した」と証言しちゃえばもっと地獄みが増してよろしいのではないか…などと考えてしまっていたのだけど…(鬼!)

部屋でひとり逡巡したビクター、やっぱりそれを全部真っ向から引き受けることはできなかったから、腹を括ってその策に乗るのではなく、結果的に叔父さんの発言からの状況に流される形でその道を行くことになった。
「違うんだ!」ってビクターが証言した時のアンリの残念そうな顔…。

牢獄で、アンリの胸に顔をうずめて泣きじゃくるビクター。お母さんのように、大丈夫だよ!しっかりね!って抱きしめるアンリ。
ビクターの脳裡にはきっと亡き母の姿も過ぎったよね。

アンリ…きみゆめを歌い断頭台へ行く時の笑顔が優しくて哀しい😭って思ってたんだけど…
あの晴れやかな笑顔は、ビクターにとってものすごく酷な激励だったんじゃないだろうかと思い至って、更に哀しい😭

思う道・目指すものはあるけど、独りでその道を行けるほどビクターは強くなかった(結局ジュリアと結婚したりして普通の幸せを手に入れようとしたもんね)。
だから、研究を成し遂げたいなら尚更、彼はアンリを失ってはならなかったし、アンリもそのことを分かっていてくれれば良かったのに。
アンリがビクターを買いかぶりすぎて、彼を独りで歩いて行かせようとしたことが間違いだったんじゃないかな…。

アンリの首を狂気的な目で見つめた後、込み上げてきたようにフッと寂しく切ない少年の顔になって、愛おしそうにそれを抱きしめながらドアの向こうへ行くかっきービクター…😭

♪偉大なる生命創造の歴史が始まる
サイコーだな。
「神よ、祝福を」のところかな…十字を切りながら一瞬だけ見せるハッとするほど明るい笑み。
苦しみながら、自分を鼓舞しながら、創造主になる!俺はフランケンシュタイン!って歌うこの曲の間に見せるいろんな表情・感情の出し入れを目撃しながら息を呑む。
あと、ビクターの思考が回っている時の旋律がリトルビクターの旋律のバリエーションになっていることに気づきミュージカル的満足感に浸ったりなど。

和樹さんの怪物演技ヤバかった!
あの美形なお顔の崩し方とか、目線がはちゃめちゃなのとか…直視できないくらいだった。
最初は、ほんと赤ちゃんだった。何も分からない、本能だけの、あまりにも無垢な。
あそこで着せてもらったビクターのコートを3年間ずっと着続けていたのがツラい😭

なるほど「めっちゃエグい」1幕。
2幕だって相当エグい。

まず最初、ビクターは穏やかな笑顔でジュリアと愛を歌うが…その歌詞に思わず戦慄してしまう。
永遠をあなたなしに生きることは苦しみ…
幼い日の悲劇、でも行かないで私のために、いっそあなたと死にたい…
死が訪れても永遠に離れることはない…
ビクター、残念…あなたがその言葉を交わし合う運命の相手はアンリだよ…😭

怪物が辿ってきた孤独な人生は、ビクターの生い立ちと重なるのだ。
異形・異能の者であるがために怖れられ、遠避けられ、蔑まれ…。
ビクターにとってのアンリ、怪物にとってのカトリーヌ…幻のような希望は残酷に奪われた。
ふたりはあまりにも似ている。でもそのことに彼らは気づかない。

彼らを受け容れない世界の中で、ふたりぼっちな彼ら。
その間に在る愛憎
どうしようもない。

かっきージャックの造形、秀逸だと思う。
振り切ったエキセントリックなゲス野郎で、ふざけた態度の合間に時折挟んで見せる鋭い闇が堪らんくて、そしてセクシー。
ビクターと同じ俳優があれになっている(エレン-エヴァもだけど)ことの絶望感。
アンリ⇄ビクターの愛と、
怪物⇄ジャックの憎悪と、
怪物⇄ビクターの愛憎が、
すべて綯交ぜになって同時に存在している光景を私たちは見せられている。地獄。
そんな地獄は観客席と現実世界にまで広がっているのだということを思わされて、更に震える。

怪物の無意識下にあるアンリは徐々に目覚め始めていて、だからこそビクターを探し求めて行くことにならざるを得ないんだ。

創造主への怨み・復讐。
これも、ビクターが神に対して抱いた反抗心と同じもの。

復讐…ビクターから愛する者を徹底的に奪う。
ジュリア、エレン、そして、アンリを。

怪物は、その憎しみで「ビクターから親友アンリを奪う」って考えた辺りから、アンリ⇄ビクターという愛が自分の中に在ることに光を見たような気持ちになることがあったんじゃないかな。
愛憎グッチャグチャで、とにかくビクターへと向かって行く。
ジュリアとエレン(叔父さんもルンゲもだったね)を亡くしたビクターも、勿論そのことに対する怪物への憎しみ・復讐心と、アンリを求める気持ちと、やっぱり愛憎グッチャグチャで、言われた通りに北極へ向かう。そうするしかない。
だってそもそもこの3年間ずっとアンリ怪物のことを探し求めていたんだ。

怪物は少年と話すとき「僕の友達の話…」って言ってたし(そこで自分でもハッとしてた)、もうだいぶアンリを取り戻してる。
自分も、ビクターも、人間世界の中に安住の地を見つけることはできないのだということを悟っている。

そして最後にはビクターを孤独にするという復讐を成し遂げると同時に、「ビクター」って呼んで、アンリの笑顔で死んでいったじゃん!😭
ビクターもハッとして、すがりついて泣いてたじゃん😭
誰も人間のいない北極で、ふたり。
ビクターはあのまま、アンリの亡骸を抱きしめながら死んでゆくのだろう…😭

それにしても、エグいわ。

初見時、わぁこれ!傷つきこぢらせた少年が狂気を帯びて神になろうとするが突き落とされ己の弱さに打ち震えながら泣き叫ぶ、って
私の大好物なかっきーテンコ盛りじゃん!
と沸き立ってしまったのだけど、「後悔」の歌詞で端的に表されていた。
「挑み、傲り、悩み、足掻き、今はただ泣いてる…」
更にジャック役のおふざけ感やエキセントリックさ・セクシーさも併せて、まさにこんなかっきーが観たい!の詰め合わせ。
でもゴメンねかっきー…こういう役は精神的にキツいよね。
実際、かっきー自身が追い詰められている感も勝手に透かして見ながらゾクゾクしてたりする。
ゴメンね。

やだ…この作品でこんなに感想書くことになるとは全然思ってなかった。
まんまとDVD買います😅


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