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【#005】RVの外部電源

 アメリカのRVには通常、バッテリーが搭載されている。ただこれは車内の照明くらいしか電力を供給できない。それ以外の大電力を使う電子レンジやエアコンなどは外部電源を接続しないと基本的には利用できないわけだ。今回はその辺のハナシでも。

米国の外部電源事情

 簡単にいえば米国のRV界隈では3種類のソケットがある。それぞれ電流量および電線の太さで規定されており、50A用の4ピン、30A用の3ピン、そして15A用の2ピンがある。電圧は米国の基準である120V、もちろん交流だ。

左が30A、右が50A

RVの車種によっては50A用か30A用、そしてたまに15A用の配電盤が搭載されている。大きな違いは使用できる電気機器の種類だ。具体的には30Aならば3,600W、50Aならば12,000W(なぜならば50Aは240V、30Aのラインを2つ束ねている)。だから50Aのほうが大電力を消費する機器をより多く同時に使うことができる。そしてアメリカのRVパークやキャンプサイトではこの外部電源ポストを備えているところが多いのだ。もちろん3種類、すべてのソケットを備えていないこともあるが、変換ケーブルを使えば物理的には繋げられる。ちなみに50Aのソケットしか備わっていない場合でも30Aのソケットに変換できるケーブルを介せば30Aの配電盤をもつRVに外部電源を接続できる。理由は上述したように50Aラインは30Aラインを2つ束ねたもの。だから変換ケーブル(よく犬の背骨に形状が似ているからDog Boneと呼ばれている)は片方の30Aのホットラインを物理的に断絶させているだけなのだ。だから問題ない。ただその逆、30Aの外部電源から50AのRV側への接続は注意が必要。電力容量が30A(つまり3,600W)に縛られるので、それを越えると当然ブレーカーが落ちる。個人的には、そもそもそんな接続(たまにMoochdockingで15Aの外部電源から50AのRVという例もある)は避けるべきかと思うが、50Aのキャンパーのヒトはそうも言ってられないだろう。

それでは我が家のRVは?

 当初のワタシの目論見では50AサービスのRV購入するつもりでいて、自宅のショアライン(後述)も50Aの容量を選択したのである。ホントーにただの勘違いだったのだが、購入したThor Windsport 29Mは50Aサービスだと思い込んでいたのだ。実際には30Aだったので、自宅のショアラインに直接接続することはできない。したがって上述のいわゆるDogboneと呼ばれる変換アダプターが必要となる。

30AサービスのRV側の端子

 ここでちょっと細かいこと。RV側に取り付けられている電源ソケットはマリーン仕様の30Aの雄フラット3ピンのものである。それに対して一般的なRV用の外部電源側30Aのアウトレットは1ピンが丸形、2つのピンがフラットの雌3ピンとなっているので、アンビリカルケーブルの両端はそれぞれ雌のフラット3ピン、雄のフラット1+2ピンとなる。改めて自宅側の50Aアウトレットを見ると1(丸形)+3(平型)ピンのため、ケーブルの1+2ピンとは接続できない。それゆえに上の写真のような50Aの1+3ピンと30Aの1+2ピンを変換するアダプタが必要になるわけだ。

DOGBONEケーブル

 このアダプタがあれば50Aサービスのキャンプサイトあるいは自宅の電源から電力をRV側に供給することはできるようになる。ただRV側のソケットへの物理的負荷を軽減するために90度に曲がっているソケットを使うと良いらしい。しかし付属してきたアンビリカルケーブルを有効活用するためには、さらにマリーン仕様のソケットに取り付けられるアダプタが必要となる。これのお値段が20フィートケーブルとほぼ同等。また原則としてあまり多くの変換ケーブルをラインにつなげるのは好ましくないとのこと。だからちょっと古いケーブルを持っているならば新調しても良いかなと思う。

カミナリへの対策

  キャンプ場の電源のサーキットに不具合があると接続されるRVにも悪影響がある。RV自体が高価なこともさることながら、この悪影響でRVの電気系統にダメージを受けた場合、これまた修理に法外な金額がかかることは想像に難くない。そういうこともありネットにアドバイスを求めるとRVerにサージプロテクタは必須アイテムといって過言ではないとのこと。まあコレもピンキリなんだけどね。ワタシは3日ほど悩みに悩んだ結果、比較的高価なサージプロテクタ、Progressive IndustriesのEMS-PT30Xという機種を選んだ。まあ先行投資というか転ばぬ先の杖である。もっと安い機種もあったのだが、エラーコードが表示されるためキャンプ場でのフックアップに問題があった場合、素早く対処ができるのと、ソケット部分にカバーがあることで突然の雨などにも対応できることで、この機種を選んだわけだ。ちなみにAmazonで注文したのだが、思った以上の大きさでちょっとビックリした。

サージプロテクタはココロの平穏

 このサージプロテクタに電気が流れるとディスプレイにエラーコード、電圧値、電流値、周波数が順に表示される。キャンプサイトによっては電源設備の経年劣化などによりさまざまな事態が発生するのだが、このエラーコードがあればある程度はどうすればよいのか見通しを立てられる。実際、このエラーコードのみを吐き出すデバイスも市場では売られているので、将来は購入するかもしれない。だってこのサージプロテクタ自体が高価だからね。

接続のイメージ的にはこんなかんじ

 ところで我が家のサージプロテクションはこのように後付けのプロテクターを電源ケーブルと外部電源の間に挿入しているが、他にもRVにオンボードされている形式もある。この場合はRVからケーブルが直接出ていて、ソケットを外部電源に直差しできる。このメリットはRV側に一体となっているケーブルを巻き取るリール機構が備わるなど収納性などに優れる。ウチのような外付けのサージプロテクターなんかは意外と嵩張り収納スペースを食うのだ。まあいずれの形式でも良いのだが、このサージプロテクター、高価なのに実は消耗品である。そもそも落雷などによる過負荷があればトリップすると同時に自壊するわけだからね。サクリフェイシィアルなのだ。だからだいたい2年くらいで買い替えることを覚悟した方が良い。

自宅に外部電源を

 RVを購入するに先立ち自宅にRV用のShorelineを設置した。以前から自宅にRVを駐車している際にもフルフックアップのキャンプ場と同様に電気を供給できるような設備を導入しようと考えていたわけだ。すでに3カ月以上前から地元の電気屋に打診していたのだが、地元の2か所ともアポを余裕ですっぽかす始末である。結果、この辺では大手のHillerに依頼をしたのが約1カ月前である。最近はこの辺の開発ラッシュで電気工事の需要が多いのか、結構待たされる形になった。まあこれが理由で地元の電気屋もワタシの依頼のような小口取引を軽んじているのだろう。そういうわけでちゃんとアポ通りにテクニシャンがやってきたことにちょっと感動を覚える。Hillerに電話した際に、テクニシャンを派遣するだけでも$90のチャージがかかると聞いていたのだが、実際は$69だった。更に施工費用はこれに上乗せとの話だったんだけど、施工を決めたら$69はデポジット扱いだった(つまり$69は施工費用に含まれる)。これはうれしい誤算である。今回のRV電源の設置は$438との見積もりで、施工日は再来週。請求残高は$369となるわけだ。ちなみに、まだどれくらいの大きさのRVを手に入れるかわからないのだが、大は小を兼ねるということで50Aのサービス線を施工してもらう。

 素晴らしいことに地元のほかの電気屋と異なり時間通りにやってきたことに改めて感動を覚える。工事内容自体は簡単に言えば我が家の配電盤に50Aのブレーカーを追加してここから4極のプラグ用の配線をしてもらうことである。ただ50Aに耐えられる電線ということで結構ぶっとい導線をドライウォールの裏側にあるインシュレータの中を通して外に出さなければならない。この作業に1時間ほど費やしていた。あとはビニルの外壁にアウトドア用コンセントを設置、そして配電盤内のブレーカーへの配線を行い終了。だいたい2時間くらいの作業だった。我が家の主配電盤の電気容量は200Aなので50Aの分配線を増設してもまだ十分余裕がある。ただ30年ほど前に日本の実家に住んでいたころはたしか20か30Aで契約していた様なことを親が言っていた記憶があるのだが、それと比べると我が家の容量はずいぶんと大きいなと思う。まあ今の日本はまた環境が変わったかと思うけど。

ブレーカーを増設

 さてこの外部電源用ソケット、非常に重宝している。RVのHouse Batteryが伝統的な鉛蓄電池だからね。しかもディープサイクルじゃないから非常に充放電が脆弱。少なくとも充電し続けておかないとすぐにバッテリー上がりを起こすから、保管中は常に外部電源につなぎっぱなしになるスタイルになる。ただ近いうちにHouse Battery側にはキルスイッチを取り付けるつもり。なんだか経済的にどうなのとも思うし。不在の時はちょっとつなぎっぱなしは不安だ。また長期的にはリチウムバッテリー化も視野に入れる。まあいずれにせよだがキルスイッチは必要だ。一応、このRVにはBattery Disconnectスイッチが付いているのだが、どうもChassis Batteryとの回線を切るだけでHouse Batteryはつなぎっぱなしの様である。もちろんChassis Batteryの放電を回避するという意味ではある程度の効果はあるんだろうけど、今載っている鉛蓄電池の問題は自然放電がハンパないことだ。だから外部電源が繋がっていないとどちらのバッテリーも1週間たらずで上がってしまう。実際、秋の終わりに一度、どちらも上がってしまった。だからバッテリーのアップグレードは意外と近いうちに行うことになるかもね。

キャンプサイトの様な電源

 こんな感じで今回は北米RV事情の中で電源について取り上げてみた。RVerにとっては必須インフラであり、RVライフを楽しむ上でいろいろなTIPSを知っていなければならない。まずは入門編的なものではないだろうか?次回は水回りについてでも触れようかしらね。


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