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YBR125 2024#11 始動不能修理

はじめての車両だな。
朝、乗ろうとしたら、なかなか始動できずバッテリーをトばしたので、バッテリーとついでにスターターリレーを交換したら、キーONしても反応しなくなった、とのこと。

これくらいヒントがあるとわかりやすい。
バッテリーを載せるときに順序を間違えてヒューズが切れたのではないか、と考えた。
初対面の方なので、どのくらい整備知識を持っているか存じあげないが、プラス側のほうが重要だよね、とばかりに後から接続するとヒューズが切れることがある。

逆輸入車なのに配線図が出回っているので確認してみると、ヒューズは1本らしい。
そのヒューズが切れると、まったく電力が供給されない。
しかもこのヒューズ、スターターリレーと一体化している。
そこを外してヒューズの点検をしていないのではないか?

と、作業現場に到着してみると、すでに左のカバーが外された状態だった。
あいさつもそこそこに、改めて状況を聞くと、事件は雪の降る前日だったそうだ。
その前日まで不調は感じていなかった、と言う。

ならば、バッテリーの寿命だろうか。
突然、始動しないときにはバッテリーが原因の場合が多い、とくに寒い時期は。
だから、バッテリーを交換したのは間違いではない。
充電器を買い求めるのは、昨今の流行りではないらしい。

ついでだから、というか、バッテリーかスターターリレーかのどちらが悪いのか判断つかなかったので、両方とも同時に新品交換した、と言う。

では、見ましょう。
と、ヒューズを外してみたところ、切れてはいない。
うむ、第一案、はずれ。
次、第二案、メインスイッチ。
単純な二端子のON/OFFスイッチなのは調査済み。
ただ、ライトケースを開けないとならないので、期待を持って次点にしておいた。
が、はずれ、キーをひねると二本の端子は導通する。
たしかに、キーが回るからには接触不良は起きづらい。

では、配線をつないだときに、キーをひねると電圧が上がるか?を見ると、上がらない。
ん、導通はしているのに、バッテリー電圧が来ないとは、どういうことだ?

バッテリーとキースイッチは、スターターリレーのコネクタで接続されている。
リレーを通るのではなくて、ヒューズを通ってキースイッチにつながる。
ヒューズの反対側は、バッテリーになるはず。
たどってみると、バッテリーにつながってはいるけれど、黒い線が接続されている。

これ、接続線が逆じゃないですかね?
スターターリレーの配置からするとこうなんだよね。
いや、電気の流れからして逆ですよ
こうつながってたと思うけどな。

半信半疑のオーナーを説得するような体で、スターターリレーの接続を外し、取り出してみた。

この端子に、それぞれ記号がついているじゃないですか。
これはBとWになってますが、一般的にはBとMで、Bがバッテリー、Mがモーターの頭文字を表します。

Bがブラックで黒い線をつなぐ、と読んじゃうのも無理はないか、と内心思いつつ、元の線を入れ替えてつないだ。
そして、キーONするも、ニュートラルランプが点いていない。
が、たまたまハザードスイッチがONだったためにウインカーが作動した。

ですよ、やはり。
と言いつつスタートボタンを押すと、リレーがカチッとは音を立てるがセルモーターは回らない。

もう一歩だね。
と、オーナーは少し落胆したようでもあるけれど、ようやくゴールは見えてきた。
セルモーターの不良品ですよ、たぶん。
多少めんどくさいけれど、いったんスターターリレーの接続を外し、バッテリーに直結してみた。

回らない。

やはりね、けど、軽く叩いてみたらどうでしょうね?
って、昭和の電気製品じゃないんだから、それで変わるの?
できることはやってみるのがよいです。

と、プラスチックハンマーで叩いたあと、再度ケーブルを直結すると、鈍いながらもモーターが作動する音が出た。
運がいい。

これで接続を戻せば、エンジン始動までいけるかもしれません。
はやる気持ちをおさえて、いったんマイナス側のケーブルをバッテリーから外し、スターターリレーの接続を確実にした上でつなぎ直し、さあ、やってみて。
ここは、オーナーにスタートボタンを押してもらうことにした。

なるほど、根本原因はセルモーターだったのか。

一連の作業をつぶさに観察していて、ちょっとした感動があったようだけれど、案外たいしたことはやっていない。

ご自身でいじる方向なら、サーキットテスターは買われるのがよいですよ。
導通と電圧が測れるだけで充分です。
逆に持っていないと、カンで作業するか、感電することになります。

翌日、メッセージがきた。
セルモーターを替えたら、見違えるくらい始動性がよくなった、と。

同時にテスターを購入したかどうかは書かれていなかった。


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