Vestar150 2024#30 ドレンホール再生
ヒマだ、なぜか。
梅雨入り直前のせいなのか、知り合いの車両をすべて整備し終わったからか、とにかく依頼されることが途切れた。
いっぽう、昨年の春先にエンジンを替えたVecstarから異音が出始めている。
とても小さい音で、もしかしたら勘違いかもしれないが、カムチェーンが鳴っているように聞こえる。
動けばよい、くらいに考えているけれど、動かなくなってもらっては非常に困るので対処を考えた。
結果、古いほうのエンジンをオーバーホールすることに決めた。
古いほうのエンジンは、合計で8万kmほど使っていて、ワンウェイクラッチが破損したのを機会に使用をやめた。
新しいほうのエンジンがそれなりに使えているので、古いほうは売りに出していたが、1年あまりの間、欲しがる人は一人も現れなかった。
そりゃあそうだろうな、キックで始動はできますよ、といっても、キックはオプション品だから、実質使用不能エンジンだもの。
さて、Vecstar 150ccエンジンだけでみても、148ccと、152cc前後期の3種類があって、今回オーバーホールするのは、152cc後期のものである。
サービスマニュアルは125ccと共通ではあるけれど、パーツリストは別れているので、交換部品の選択は、めんどくさい部類ではない。
とはいえ、ピストンやクランクシャフトベアリングを交換するかを迷って、いまだに迷い続けている箇所を残しつつ分解を進めていった。
なんだってクランクシャフトベアリングは専用設計なんだろうね?規格品は熱対策ができてないのだろうか。
首尾よくクランクシャフトを取り出して、補修箇所は手当てした。
さぁ組んでいくか、の段で、エンジンオイルのドレンホールからの漏れを思いだした。
ノーマルのドレンボルト、シールテープ巻き、少し太いものに変更、太いボルトにシールテープ巻き、と変遷したものの、じわりとエンジンオイルが漏れてきている状態だった。
ドレンホールを見下ろす状態で補修してしまおうと決めた。
ところがVecstar ドレンホールは単純な穴、ではなくて、オイル通路の一部になっている。
オイルポンプの真下で、横方向にも通路が切ってある。
これは、リコイルすると、オイル通路を塞いでしまうのではないか?
と、気づいたときは、すでにリコイル用のタップ切りが終わっている段で、選択肢は多くない。
ひとつは今のネジピッチに合わせたボルトを入れる。
ふたつめは予定通りリコイル挿入後にノーマルサイズのボルトを入れる。
3つめは、このクランクケースは捨てる。
クランクケースを替えると、クランクシャフトのシムも替えなくちゃならないので却下。
ゲージを挟んでサイズを測ってシムを注文して、なんてのはめんどくさい。
リコイルを入れないで、新しいネジ山に合うボルトを入れるには、ドレンボルト用ではないフランジなしのものにするしかなさそうだと判ったのでダメ。
リコイル用ではなくて、もう少し太いドレンボルトを使う方針でタップ切りすればよかった、と後悔しているが、今さら遅い。
という検討プロセスがあって、けっきょく計画どおり、元のドレンボルトを使うことにした。
ふと、PDCAってのは、失敗を前提にした手法なので、修理・補修むきではないんだな、と気づいた。
修理ってのは、いまここで手を入れたら、その後は手を入れないつもりでやっていくからな。
リコイルを挿入後にドレンボルトを入れて、オイル通路の横穴を覗くと、ボルトのミゾが確認できる。
要は通路を狭めているんだな、少しだけど。
この状態で、エンジンオイルがちゃんと巡るのだろうか。
To be continued