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【コラム】20年経ってから似合うネックレス

「あんた、したたかやわ~」

私は26歳の時にシンガポールに渡星をしたのだが、私がその当時の会社に入社して数か月後、本社から駐在で渡星してきた40代前半の女性にこう言われたことがある。

「あんた、したたかやわ~」

めちゃ、おっかなかったで~、と今ではその人に言えるだろうが、当時、”いけいけどんどん”の26歳の私は「ふん、何よ、このおばさん」と思っていた。

当時勤めていた会社で、日本人の女性はその先輩と私だけ。多分その先輩は、英語も話せなかったし、私とお食事に行ったりすることを望んでいたのだろうが、何はともあれ26歳の私は、その先輩に挨拶こそしていたものの、自分の仕事と遊びに夢中。彼女の寂しさを理解するには難しかったのだ。(特に90年代の女性は、先輩後輩の上下関係マナーは厳しかったので、なるべくその辺のわずらわしさをパスしたかった)

その先輩の2年の任期中、少しずつ歩み寄り、40代独身女性の寂しさを知り、いたわることを覚え、時には甘えさせてもらい、(お食事もいつもごちそうになり・・)2年後、その先輩は笑顔で帰国した。

このネックレスは、彼女の帰国時に「あんたに、あげるわ」とプレゼントしてもらったものだ。「私、あまりつけなかったのよね~。あんたアクセサリー好きでしょ。本物つけなさい。」と空港のお見送りの時にいただいた。

もっと大人になってから・・

ティファニーのTネックレスを思い浮かべるかのような、このネックレス。実際、ほとんど使ったことがなかった。というのも、このK18のゴールドだけで作られたエレガントなネックレス、「もっと大人になってから使おうっと」と思っていた。

20代の時は、まだ本物より、飾りがついているものが好きだったし、30代前半はセミプレッシャーストーン、ジルコニア、クリスタル、ダイヤモンドなどがペンダントトップについているものに夢中だった。その時も「あのネックレス、もっと大人になってから着けよう」と思っていた。

結局、「もっと大人」っていくつだろう?

シルクのブラウスを着始めるようになってから、線の細いネックレスや、ネックレスの重ね付けをするようになったのだが、その時このネックレスを「着けてみようか」と初めて考え始めた。でもやはり着けられなかった。地味に感じた。

そして40代後半で、初めて着けてみた。

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「ああ、そうか」と私は思った。そう、ちょっと鎖骨や首回りのエリアに年齢を感じてきた時、この18金の輝きが肌をキレイに見せてくれるのだ。黒いシルクのブラウスに合わせると「いい女」風にもなる。今、ようやく似合うようになったのだ。そうか、”もっと大人”になってしまったんだ・・。ちょっぴり寂しさを感じたりもする。(今思うと、先輩はあの時にこのネックレスを手放すべきではなかったのだろう。)

そして今・・

いただいてから、ほぼ20年以上一度も使ったことがないネックレス。20年経ってもゴールドの輝きは薄れていない。さすがの18Kである。最近は首元や鎖骨を見せるトップスを着ていないが、このネックレスの輝きを借りて、久しぶりに着てみようか。Vネックもいいが、久しぶりにスクエアカットのトップスなどに合わせてもいいかもしれない。

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少し前かがみになると、このネックレスのデザインが宙に揺れて美しい瞬間をプレゼンテーションできるかもしれない、など考えてみたりする。こんな戦略も、年を重ねてこそできるのかもしれない。







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