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【コラム】たまには人の意見も聞こう、という説

その日、私は渋谷のPARCOにいた。

10年前、一時帰国をした私は冬服を買おうと、今は無きBUONA GIORNATAのショップにいた。「黒」が好きな私は、フードがついた黒いブルゾンを試着をしていたのだが、ショップの方に「こちらもいかがですか?黒も素敵ですが、こちらもお似合いかと・・」と勧められた。

「ピンク?」

絶句した。黒と同じデザインで、値段も同じだったが、今までこんな色着たことがない。「着てみてください!」と催促されたので、とりあえず袖を通すことに。

「お似合いです!お客様。すごいカワイイです。お客様の肌の色にもあっているし、このソフトな素材感もイメージにぴったり」

私はこの時、ちょっと悟った。「人から見ると、こういう方が似合うのか・・」と。それにしても私の顔のイメージってピンクなの?と驚いた。今まで私はこれが好き、これが似合う、と自分で信じ込んで着てきた服は”黒”。黒のブルゾンを着なおしてみても、店員さんは、「う~ん、ピンクの方がお似合いですよ、断然」と言うばかり。

結局さんざん悩み、私は生まれて初めて「ピンク」の服、ブルゾンを選んだ。甘いイメージの服は趣味ではなかったので、ブルゾンの下は黒のトップスと黒スキニーパンツ、そしてこげ茶のブーツを合わせていたのだが、びっくりすることに、そのブルゾンを羽織る度に人から褒められた。終いには、道玄坂を歩いている知らない人にまで「かわいい!その服どこで買ったんですか?」と聞かれる始末だった。

※ちなみに・・今は黒は一般色だが、70年代後半までは黒一色というファッションは、DCファッションが流行する前までそれほど多くはなかった。黒一色で着こなすのは、当時は結構勇気がいることだった。雑誌an-anなどが出てきてからは、 黒=オシャレという考えが当時ティーンエイジャーだった私にはあったので、30代までは自分に似合うと思って着こんでいたのである。

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その後、ショートバケーションで訪れたベトナム、ハノイでも同じようなことを経験した。

決して高級なアクセサリーを買おうとしていたわけではない、スーベニアショップで見ていた”シルクボールネックレス”(シルクの生地で覆われたビーズ)を見ていた時だった。

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スカイブルーが可愛くて、自分にそのネックレスをあててみていたら、近くにいた西洋人の男性に、「あなたはブルーは似合わない、そっちのレッドにしなさい。あなたはレッドの方がかわいい」と声をかけられた。新種のナンパか?と思ったが、傍らにいたベトナム人のガールフレンドも出てきて、うん、うんと頷きながら赤のシルクボールにしろ、と言っている。そう言われて赤のシルクボールネックレスを、胸に当ててみると、その彼女は手をパチパチさせている。

「赤って私のタイプじゃないんだよね」と私が答えると、その男性は言った。

「自分に好きな物を選ぶのは大事だけど、似合ってないと意味ないんじゃない?」

キョ―レツ、な言葉だった。好きな物、すきなもの、スキナモノ・・そればかりを優先させていた私のファッションだったが「似合っていない」。それは同時に”自分に似合うものを自覚していない”という意味にも取れたのだった。

◆◆

自分の好きな物、を追求するのは大事である。でも似合ってない、見合っていない、それだと自分の持っている良さが発揮されないこともある。似合ってないものを着ていても、私はハッピーだろうか?

勿論、人の意見をすべて取り入れる必要はない、でも人の意見も参考にし、どうやって自分の好きな物を自分に似合わせるようにできるか、考えるのも一つの知恵ではないだろうか。

そして渋谷PARCOの店員さんが言った「お客様の肌の色にもピッタリ」。私は自分のことがよくわかっていなかったのだと思う。私のように色が白く、目がぱっちりした顔立ちには、少し甘い雰囲気の色が似合うのだ。それを理解した上で、好きな物を選ぶべきなんだと思う。好きな物を選ぶときには、自分のことをよく理解しておくことが本当に重要である。

人の意見も”参考”にする勇気をもつべきだ、私はその時から思っている。





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