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エログロナンセンスで記憶に焼き付いて離れない「インフィニティ・プール」。

「インフィニティ・プール」はエログロに加えてアホなテイストがそろった、“最近こういうのなかったよね”なホラー映画。

監督がクローネンバーグの息子ブランドンで、血は争えないことを証明してら。

「アンチヴァイラル」「ポゼッサー」など独自の世界観を持つ作品でカルト的人気を集める鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作。旧作見てないや、ごめん。

架空の小国・リゾート地の島にやってきた売れない作家ジェームズと金持ち家庭出身の妻エムは退屈な休暇を過ごしていた。ある日ジェームズは小説のファンだという人妻カビと知り合い、夫婦同士で近づ今日は親しくなる。売れてない小説をほめられ、人妻ガビに性的な魅力を感じているジェームズは積極的。悪女風のガビもエッチな仕掛けをしてくる。リゾートホテルは金持ちが金を落とすために作られたもので、敷地の外は危険なので行かないように警告されていたが、ジェームズたちはガビ夫婦に誘われるまま無断外出し、夜まで遊んでしまう。その帰り、酔っぱらったジェームズは現地の農民を車ではね殺してしまう。

ここからが奇想展開。その国では罪を犯すと即刻死刑になる。だが、その際自分のクローンを身代わりに死刑を受けさせればいい、という謎の科学力と法律があったのだ。ジェームズは罪を免れるため、体を提供する。

……んなアホな。

なのだがこの物語は、そのSF的な設定要素よりも、アイデンティティや尊厳、モラルといった人間の業に深く入り込み、観客を困惑・翻弄する寓話になっている。今、面前で死刑にされた「自分」は、オリジナルなのか。それを観ている「自分」は本物なのかクローンなのか。ディック的とでも言おうか。

まぁ正直振り回されるばっかりで、答えが導かれるわけではない。不快な描写の連続に目をそらしたくなってたんだが、ちょっと突き通すにはお話が弱いので、118分はさすがに長い。90分くらいで不条理をやりきってくれたら傑作だったかもしれない。

アレクサンダー・スカルスガルドとミア・ゴスの激しい裸対決は見もの。R-18なので成人映画です。ミア・ゴスの裸が見たい人はぜひ。

北米では23年1月に公開されたようだが、話題にならず。カナダ・クロアチア・ハンガリー合作で、プロデューサーのクレジットだけで28人いる。お金出した人は、後で家族に怒られてるだろうなー。「なんてひどい映画に出資してんのよ!」って。

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