TNM分類による臨床病期(ステージ)とは?
今日は退院後2回目の外来受診日でした。今回もX線撮影をしたのですが、前回に比べると左肺の残ったところが少し縦に伸びているようですね、とのこと。
そういえば、切除したのは左肺の「上葉」なのに、撮影されたシルエットを見るとむしろ下のほうが少し欠けているように見えます。なるほど、よく考えれば胸腔内にできた空間が胸水、つまり液体で満たされているならば、肺胞は空気を含んでいるのだから上方にせり上がるのは当然のこと。
それ以外は特に問題もないようで、先生からは「で、抗がん剤はどうします?」と訊かれました。
術後補助化学療法のエビデンスに関しては、「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン」の中に、「病変全体径2 cm以上の術後病理病期ⅠA,ⅠB期(第8版)完全切除,腺癌症例に対してテガフール・ウラシル配合剤療法は勧められるか?」というクリニカル・クエスチョンがあります。
これによると、ⅠB期(T>3 cm)においては5年生存率で11%(74%→85%)の上乗せ効果が認められたとのこと。元になった論文はこれですかね。
Kato H, Ichinose Y, Ohta M, et al. A randomized trial of adjuvant chemotherapy with uracil-tegafur for adenocarcinoma of the lung. N Engl J Med. 2004; 350(17): 1713-21.
要するにこれをどうみるか、という話なのですが。手術単独でも4人に3人は無再発なのに、全員に術後補助化学療法を推奨するかね?ということ。
僕は抗がん剤治療は不要、と判断しました。先生もそれでOKでした。
ちなみに、今日は保険請求のために診断書をもらってきたのですが、そこに記された最終的な確定診断のTNM分類は以下のとおりでした。
T:2a, N:0, M:0
Tというのは、原発腫瘍がどのくらいの大きさであったかというもの、Nはリンパ節への転移の有無やその状況、そしてMは離れた別の臓器への転移の有無やその状況、ということになります。ここから決定される臨床病期分類--いわゆるがんの「ステージ」と呼ばれるものですが--今回の僕の場合は「IB」ということになります。
肺がんの分類については同ガイドラインのサイトから以下のページを参考として示しておきます。
UFT(テガフール・ウラシル配合剤)は副作用の比較的少ない抗がん剤として、その用法が確立されていますが、それでも副作用がないわけではない。QOLは間違いなく低下するでしょう。今でもただでさえ痛みのために普通の生活は送れていないので、ここで無理するだけの価値があるかどうかは自分で決めるしかないのです。
まあ、納得して治療を受けるためには、患者も勉強する必要があるということですね。
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