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2023年の『旅する台所』アーカイヴ

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『旅する台所』では毎号、世界の各地を、暮らす感覚で旅する【旅日記】と、見知らぬ土地で生きる日常を、スケッチのように描き留めた小さなお話【物語】を届けます。どちらもサブテーマは、料… もっと読む
毎日の暮らしに、旅する非日常と小さな読みものを。 雑誌の感覚で楽しめます。
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旅と料理のウェブマガジン『旅する台所』 01号を発行します。

あらためまして、こんにちは。 いつもこのnoteや、私のInstagram、Twitterを見て下さってありがとうございます。今日は、ウェブマガジン『旅する台所』再創刊、01号発行のお知らせです。 01号では、オランダ、スロベニア、スリランカなどを旅します。焦がれるような旅への渇望を吐露するしたエッセイ『私は、ずっと旅の途中みたいに、生きていたいんだ』、や、各地で口にしたお茶をモチーフに、世界各地を流浪するみたい巡るエッセイ『あるいはそれは、夢だったのかもしれない』、喪失

【旅日記・アゼルバイジャン】私は、ずっと旅の途中みたいに、生きていたいんだ。

今日の旅先:アゼルバイジャン 今日の料理:なし パンデミックのあとの、この世界で。退屈な午後。戯れにwanderlustという英単語に、しっくりと馴染む日本語は何かなどと、ただぼんやり考えていて、ふと。爆ぜるように泣き出しそうな気持ちになる。そのとき私の心に迫っていたのは、むせ返るような漂白の思い。脳裏に浮かんだのは、『奥の細道』のあの有名な一節の記憶。

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【旅日記・スロベニア】透明な水の景色は、こちらをも見透かしているようで怖い。

今日の旅先:スロベニア・ヴィントガル渓谷 今日の料理:羊のチーズと梨、オニオングラタンスープ、出来合いの豚と鶏のロースト いつかの画面の中で見たような、うつくしい旅の景色は、その具現化された美の均質性によって、早晩われわれの記憶の隙間に埋もれてしまう。他方、長いあいだ心に残り、折に触れて胸の中でひかるのは、自分にとって「かけがえのない一瞬」を捉えた景色。心のなかでシャッターを切った、その残像。海に沈む日の名残の、最期のの一息の緑の光線、夏の午後の強いひかりを受けて反射する

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【物語・スリランカ】恢復するたましい、草と花のちから

今日の旅先:スリランカ、東京 今日の料理:薬草のお茶 キッチンで、ニカが歌っているのが聞こえる。のびやかでか細い彼女の声が、とぎれとぎれに聞こえて、歌が終わると、今度は大きく僕の名を呼んだ。今朝は、彼女がお茶を作ってくれているらしい。 もう起きていたの、僕は隣室から声をかける。叶わなかった不滅の恋の歌は、彼女にとってはハーブのお茶を作るときのテーマソングだ。今日のお茶は、焙じ茶にカモマイルを混ぜて、少し蜂蜜を垂らしてあった。カモマイルの(林檎に似た)甘い香りと、焙じ茶の

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【旅日記・オランダ】多文化マルクトで、私たちはそれぞれに胃袋の郷愁を慰めている。

今日の旅先:オランダ、デン・ハーグ 今日の料理:ホウボウの黒胡椒煮付け、菊芋添え オランダはデン・ハーグの市民の台所、ハーグセ・マルクト(De Haagse Markt)は、市営住宅や小さなアパートメントのひしめく地区にあって、世界のさまざまな場所から移り住んできた人々が多く暮らしている。治安は多少悪い(とはいえ、スリに遭う程度)ものの、この界隈に来ると私はすこぶる安堵する。世界にはありとあらゆる種類のスタイルのファッションがあり、髪型があり、人々の容貌や体格や背格好も実

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【物語・オランダ】この幸福がどうか消えませんようにと、私は心のなかで祈った。

今日の旅先:オランダ 今日の料理:ヒイカと菜花のオレッキエッテ、胡桃のトマトサラダ柘榴のソース、レモン風味のローストチキン びっくりするくらいCの歩みは速かった。 トラムを降りて、雑踏の中を、見知った後ろ姿だけを見失わないように、私は歩いた。息が弾む。その小柄な背中は、その姿からは想像がつかないほどしっかりとした足取りで、軽快に人混みを縫って歩いてゆく。 ここは移民街だから、行き交う人の顔ぶれも様々で、色とりどりだ。伝統柄の長い上着を着た恰幅の良い紳士の腕には、金色の時

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【物語・世界じゅう】あるいはそれは、夢だったのかもしれない。

今日の旅先:世界じゅう 今日の料理:世界じゅうのお茶 マドレーヌではないけれど、匂いの記憶は、脳のごく深いところに留まる起爆装置だ。あの同じ香りに触れる刹那、それは私たちを忽ちいつかの時に連れてゆく。私が目の前のティーカップに、そっと唇をつける時、同じ私は、別の世界と別の時間に存在しているカップの縁から、そっと黄金色の茶を啜るのだ。

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