見出し画像

#2 緊張感とワクワク感。

一昨日のチーム練習での出来事。今シーズンが開幕してからもうすぐで2ヶ月近くが経過しようとしている中、練習の “質” が今年一番を更新したことを選手やコーチも含めてチームの全員が確信。練習直後のチェンジングルーム内では全員の表情が自信に満ち溢れていて、絶え間なく続いた選手間のコミュニケーションはコーチ陣に言われたわけでもなく自然と発生し、練習での興奮がまだまだ収まっていなかった。


7週間。

実は今シーズン第二節での試合中に左ひざのMCL(内側側副靭帯)を損傷してしまい、そこから約7週間のリハビリ期間を経て調子を取り戻し、一昨日のチーム練習で全てのメニューに参加&復帰しました。

リハビリ期間中はチームのサポート役に回っていたのですが、その間他にも怪我による多数の選手が一時離脱をしては戦力がダウンしてしまい、チームは昨シーズンと比べて大きく順位を落として現在(5/30の時点)リーグ戦最下位。そして残された選手たちの取り組む姿勢を含めた “プレーの質” は明らかに低下していました。その頃のチームはただ ”練習のための練習” を繰り返してはチャレンジすることを避け、おちゃらけることに ”楽しみ” を得ていたようにも見えたし、試合では交代でベンチに下がった選手たちがラグビーとは全く関係のないことで談笑してたりなど、 “夢中で楽しむ” という雰囲気からは遠くかけ離れていました。もちろんチームの全員がそうだった訳ではなく、キャプテンや一部の主力選手、コーチたちが何とかチームの再生を図ろうと奮闘していたことも知ってはいたので僕の中でも希望はしっかりと残ってはいました。
ただ、練習や試合を通してチーム全体の方向性がバラバラな様子をフィールドの外から見てはチームメイトたちに話しかけるなどを積極的に試みたものの、僕からは何も直接的かつ大きな影響を与えることが出来ず、怪我をしてしまった自分に腹を立たせながら悔しい気持ちで毎回の練習や試合を観ていた状況が数週間も経っていました。

チームにとっての自分の価値。

僕は今のチームに今年から新加入したばかりの選手なので、言葉よりも目に見える行動や姿勢を見せることの方がチームへのポジティブな影響力があると考えました。
まず最初に、松葉杖が取れて自力で歩けるようになった頃から、ホーム会場で試合が行われた際の 後片付けを自ら率先して黙々とやり続ける ということから始めてみました。
怪我人であるとはいえチームの一選手でもある僕が、観客や応援に駆け付けてくれたサポーターたちがいる前であえてその行動をすることで、戦績では連敗続きではあるけれど、競技とはまた別で見た時の “周囲から見たチームの価値” を落とさないようにする、もしくは上げることがこの取り組みにおいての個人的な意図でした。

スポーツにおいては正直、試合中の選手たちの熱量や姿勢を見ればすぐに普段からの練習の状態などを見抜けると思っています。もしそのケースが今のチームで起きた場合、チームの良くない状態を観客にも見透かされてファン離れなどに繋がり、悪循環が加速する可能性があると危惧したので、先ずはその様な状況に歯止めをかけたい一心で行動してみました。するとそれを二度ほどしたあたりから、僕からは特別何も言わなかったのにチームメイト数人も率先して協力してくれるようになり、この出来事がチームのOBやフロントの方の間で話題にもなっていたらしく、「連敗続きなチームをどうにかして勝たせよう!」と応援モードが活発になったことはまさに願っていたことでもあったので、しっかりと見てくれてチームを支えようとしてくれたOBやフロントの方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

そして第二段階として、自分のプレーを通してチームのモチベーターになるということを意識してみました。これまでの競技生活の中でキャプテンを務めた経験も何度かあったのですが、その度にチーム全体の雰囲気を操るほどの言葉選びや声掛けが上手くできなかったこと、チームを盛り上げることに反して自分の冷静さを保つことに苦戦した記憶などがありました。しかし負けている状況から後半の途中に交代で入った後、自らアグレッシブさを剥き出しにチームを盛り上げて逆転できた成功体験は沢山あったので、リーダーの側でチームを勢い付かせるモチベーターの方が僕に向いているような気がしたのです。
その意識変化のタイミングから、リハビリや自主トレーニングをしている間はただ怪我を治すという目的だけではなく、「復帰したその日から自分のプレーを通してチーム全体の雰囲気をガラッと変えて勢いづける為にも身体能力をレベルアップさせよう!」という意識を常に持ち続けるようにしました。

練習復帰。

5月28日、僕は怪我からチームの全練習メニューへ復帰することができました。
練習場へ到着するなり、アップテンポな曲を流し続ける大きめのスピーカーがあったり、激しい雨が降っていたにも関わらず多くの選手が普段と比べて早めに来ては既にウォーミングアップを各々始めている光景を目にして、「これは絶好のチャンスだ!」と感じました。
そして集合の合図がかかり、最初のチームトークでは仲間たちから「Welcome back!!」と自分の復帰を喜んでもらえたことからスタート。
僕自身を仲間として迎えてくれる選手たちや、それを取り巻く環境に巡り会えたことはとても幸せでありがたいことだなと改めて感じました。

プレー中は選手たちのコミュニケーションが全く途切れない。積極的なプレーも多い。ミスが起きても最後まで諦めずにカバーしようとしている。その勢いに応えるかのようにコーチたちも生き生きと指導している。

「みんなが真剣で夢中になっているこの雰囲気、めちゃくちゃ居心地が良い。」

そして練習は進んでいき、走り込みの時間を迎えて少し心配に。というのも、チームで一番体が大きな選手は走り込みの時になるとキツいという理由で途中で抜けることが多々あったのです。

でも今回は大きく違いました。
その選手本人も例えペースが遅くなったとしても全く諦めなかったし、周りの選手たちからは「Let’s go brother!! Finish this together!!」「We need you!!」という声掛けがわんさか湧いていて、その時に僕は “全員がモチベーターになれている” と実感しました。ここまで来るともう怖いものはなくなってワクワクしてきます。

練習後のチェンジングルームの中では、みんなそれぞれが手応えを感じて自信に満ちた表情を浮かべ、ギラギラとした眼差しはまるでもう既に次の練習や次節の試合に目を向けていつでも準備万端であることを訴えているようでした。
終わる前のチームトーク中に、全員の前で監督から急に意見を求められて軽いパニックのような緊張を感じてしまう。というのもやはりキャプテンのようなリーダー的振る舞いに対して苦手意識が強過ぎるのかもしれない。
でも一つだけどうしても伝えたかったことは勇気を出して発言してみた。
「パーフェクトな今日の雰囲気をスタートラインにしよう。これが勝ち続けるチーム文化の一番大きな要素だと思うから。」
過去にはリーグ戦全勝優勝をした強豪チームに所属していた経験もあるのですが、そこには国の代表選手やSuper Rugbyの選手がたくさん在籍していたけれど、全員が地位やレベル差関係なくアグレッシブさ全開で練習からバチバチしていて競争が激しく、試合の強度の方が軽く感じることも多々ありました。

もうすぐで28歳。選手としてはもう若手ではない今の僕の価値はそういった自らの経験から得たものを上手く当てはめて、周りを巻き込みながらモチベーターでもありナビゲーターのような役割を担うことなのかなと思ったり…

最後に発言したことがチーム全体に響いてるといいな。


徳田 光希

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?