自己分析を攻略する

自己分析とは何か

自己分析とはそのまま「自己を分析すること」です。

これが本当に難しいのは、明確に解が無く、かつ自分だけが解を出すにあたってのすべての「材料」を持っているからです。

材料とは何かと言うと、それは今までの人生での経験そのものです。

・今まで一番悲しかったこと
・今まで一番うれしかったこと
・中学高校で一番がんばったこと

と今までの経験が唯一、将来を考えるにあたってのヒントです。

もちろんここには、よし悪しはありません。
今までの人生のすべてのシーンを見ているのは当然、自分だけです。
人生にはいいこともあれば、正直思い出すだけでつらい、苦しい思い出もあるでしょう。

これらすべてを振り返り、自分の中に埋もれている「価値観」を理解すること。

それが自己分析です。

自己分析はどうして大切か

人にそれぞれ価値観があるように、企業にもそれぞれ価値観があります。

例えば、
「厳格に手順やルールを守るのをよしとする」企業もあれば、
「個を重視し、自由に発言するのをよしとする」企業もあります。

例えば同じ業界内でも「組織の三菱」と言われる三菱商事、「人の三井」と言われる三井物産のように、やはり企業にはそれぞれカルチャーがあり、カルチャーを形成する「価値観」があります。

企業毎にどういったカルチャーがあるのかを調べることも大切ですが、まず自分がどういった価値観を持っているかを理解していると、企業を選定するのに大いに役立ちます。

電通、JR東海、日本銀行、P&Gと人気企業に片っ端からエントリーする人もいますが、自分の価値観とギャップのある企業はやはり落ちる(もしくは受かってもギャップに苦しむ)ので、まず自己分析に基づいて企業を選定してしまう方が、無難でしょう。

ここが甘いとまず本選考で苦戦します。

自己分析の枠組み

自己分析は自分を理解することであり、最終的に自分で考えるものです。

ただ「じゃあ自己分析してみてください」と言われても多くの人は戸惑うでしょう。

書店で自己分析の本を読んだり、インターネットで「自己分析 やり方」と検索するのかもしれません。

(自己分析は結局人によるので、書店にある本を読んでもあまり役に立ちません、というのが僕個人の考えです)

そこでここでは一つの分析枠組みを簡単に紹介します。

「Will Can Must」という枠組みです。

内容はいたってシンプルで、自己分析をするにあたって、
・Will「自分は将来どうありたいか」
・Can「自分の強み、克服したい弱みは何か」
・Must「絶対に譲れぬ価値観、拘りは何か」
の3つを考えようというものです。

この3つを組み合わせることによって、より自分に合った企業を見つけられるでしょう。

順番に説明すると、

まずWillは簡単に言えば「将来の夢」であり、「将来自分が何をしたいか」です。これは無くても構いません。ぼんやりしていても構いません。
無理に作らず考えられる範囲で考えましょう。(将来の夢は普通変わるので)

ポイントは「出来るか否か」をいったん排除して考えることでしょうか。
現時点でギャップがあっても、それをこれからどう詰めていくかを考える方が大切です。

次にCan。これは面接の質問でもよくある「強み」と「弱み」です。

おそらくこれが一番わかりやすいです。

大学時代に取り組んだことを思い出し、自分が普段どういう役割を果たしているのかを考えてみましょう。ただし例えばリーダーと言っても色々あるように、「リーダーの中でも特に自分はどういう点で周りに貢献していたか」と掘り下げて考えることが大切です。

そしてMust。

これは端的に言うと自分の「拘り」です。
拘りはちょっとやそっとで作られるものではありません。

小学校、中学校、もしくはそれより前まで振り返り、自分が一貫して守りぬいている考え方を見つけてみましょう。

よく自分の拘りを「この経験で変化した(よくあるのは留学)」「この一言で変化した(同じくよくあるのは先生や先輩に叱られた)」と説明する人がいますが、Mustは価値観の中でも中軸に位置するので、そう簡単には変わりません。(むしろ簡単に変わったら恐いです)

仮に変化したとしたらどのくらいのスパンで変化したのか、どういった文脈で変化したのかを冷静に考えましょう。

自己分析の注意点

自己分析は繰り返しですが難しいです。

そのため分析を行うにあたっていくつかの注意点があります。

そこでここでは3つの注意点をご紹介します。

・結論を出すまでしっかり考えぬく

自己分析は明確に解がありません。

例えば「海外経験がある→海外の人とのコミュニケーション能力がある」と結論を出す人がいますが、

「そもそも海外経験とは何か、コミュニケーション能力とは何か」
「コミュニケーション能力を具体的にどういった場面で感じたのか」

と自分に質問をしてみて、具体的に掘り下げることが大切です。

また人間には自分の信念や価値観に合っている情報ばかりを支持し、収集する「確証バイアス」という心理的現象があります。

例えば「自分はリーダーシップがある」と考え、気づいたら自分の考えを正当化する情報や事実だけを収集し、自分を説得している場合があるので、くれぐれも「結論→それに合う情報だけを収集する」という現象に陥らぬよう気をつけましょう。

・自分の意見と他人の意見をしっかり区別する

よくキャリアコンサルタントや各界のビジネスマンが自分の「哲学」について語っていることがあります。(News Picksによくあるやつですね)

そういった人たちの話は大抵説得力があり、何かわかった気がします。

例えば、
「ビジネスは現場が第一だ。現場を経験するにはまず営業を経験することが大切だ」
という話があったとします。(よくあります)

多分これは正しいです。多くの企業経営者の方がおっしゃっています。

ただ「本当にそうか」と考えてみてください。

「営業を経験せず役員に上がっている人もいるのでは」
「そもそも現場と接するのは営業だけか。他の形で現場と接したらどうか」

といろいろ考えられるはずです。

これを考えずに、

「まずは営業をやりたいです。というのもビジネスでは現場が〜」

とまるで自分自身の考えであるかのように考えてしまうと、「自分の価値観、考え方」といった自己分析の結果を見失ってしまいます。

・プロでも外すことはある

自己分析は自分だけで行うことは難しいです。

まず自分で「Will Can Must」を考え、それをプロのキャリアコンサルタントや人事に見てもらうことが大切です。

つまり自分の中でまず自分自身についての仮説を立て、それをプロの人に問うてフィードバックをもらうことで仮説検証を行います。そしてギャップがあった部分、分析が甘かった部分についてもう一度考えます。

ただここで注意点は「プロでも外すことがある」ということです。

もちろんプロのキャリアコンサルタントや人事の方は多くの学生を見ているので、「この学生は前に見たあの学生と共通している」と推測するのは上手いです。(いわゆるアナロジーです)

しかし、一般的に一人の学生を見られる時間は30分〜1時間であり、すべての人生を見ているわけではありません。よってバイアスがかかっていることもあり、時には見誤ることもあります。

例えプロの意見であっても、あくまで一つの意見として受け取りましょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

僕自身も書いていて、やっぱり自己分析は難しいと感じています。
自分で難しいと感じていることを言葉で説明するのもやはり難しいです。

もちろんここに書いてあることも、一つの意見であり、価値観です。
僕は学生であり、プロのキャリアコンサルタントでも人事でもありません。

学生目線として、一つの意見として受け取っていただけると幸いです。

その上で、お役に立てる部分があれば何よりうれしいです。