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料理本に学ぶ「おいしさ」を伝える言葉

3回目の緊急事態宣言下。
皆様はどのようにお過ごしでしょうか。

さて、そんな緊急事態宣言スタート直前の24日(土)は、日本ガストロノミー協会で「ドイツワインを学び楽しむ会」が開催されました。

前の出版社に就職する前、4月から10月末という最高に素敵なシーズンにドイツに滞在したことがあったものですから、私はもともとドイツ贔屓です。
東京ドイツワイン協会の上級ケナーから解説を聞きながらいただいたワインは、久しぶりにドイツの味を思い出すさわやかな香りに反するような後口のフクザツな変化に「これこれ!」と楽しくなりました。

それであらためて思ったのは、料理の世界よりもワインのほうがおいしさを表す語彙が多いということ。
今回は、料理と言葉について考えてみようと思います。

料理写真で伝わっちゃうから?

ワインの世界に比べると、料理の現場では、言葉はあまり重視されていない気がするんですよね。
作り方だけでなく、おいしさを表す言葉がワインに比べるととにかく少ない。

まあでもそれは、液体と物体との違いがあるからってことですよね。

ワインはどんなに高級だろうが有名ワインだろうが、グラスに入れてしまえば同じような液体です。
見た目だけで言ったら色合いが違うぐらい。
だからその場にいない人のためには語彙力を増やして、最大限に伝える努力をする必要があります。
また、ワインの世界には、ソムリエに代表される各種ワイン資格があり、合格するためには技術や試飲といった体感の部分だけでなく、知識が必要になるといった事情もあると思います。

料理は見た目が変わります。わざわざ言うなっていうほど当たり前のことですね。言葉で伝えなくても、上質な料理写真で表現できてしまいます。

料理本の言葉で真似っこしみて

では、料理「本」ではどうなの? ほんとにおいしさを伝えることばは少ないのか? と思って本を開いてみると、いやいやいや。
料理本編集者たちがたっぷりと工夫を凝らして表現していますし、プロのライターによる磨き抜かれた言葉に想像力が掻き立てられることもしばしば。
多彩な表現で伝える努力をしています。

試しにお手元にある料理本、なんでもいいから開いてみてください。
レシピには、料理名と作り方といった部分だけでなく、「その料理の何がどうおいしくてどう調理すればこういう味になるけれどもこっちの食材で置き換えたら同じように作れるしこうしたら新しい味わいになりますよ(←)」などと書かれた短い文章がついていることが多いですよね。

あるいは、レシピページのすみのほうに罫線などで囲まれて「Point」などと短いタイトルがついたカコミ文章があります。
本によってはまるまる1ページを使って、料理について語っていることもあります(シェフの本に多い)。

これらすべてが料理の「おいしさ」を表現するための最適な教科書です!

よく聞く話なんですが、料理家さんたちって、他の人の料理本を見ない、人のレシピに(自分のレシピが)引っ張られちゃうから、とおっしゃるんです。

でもそれは、レシピの、もっといえば食材の分量や熱の入れ方の部分だけを読んでいるからなんじゃないかなあと思います。
他の場所、たとえば「はじめに」とかレシピページのリードとか、もちろんコラムページなどをじっくり読み込んでみたらば、そこにはおいしさを伝える言葉があふれています。
著者本人の言葉がプロのライターや編集者によって整えられた素晴らしい教科書になって!

これらをぜひ読んで真似して書いてみてほしいって思います。
気に入ったページがあったら、自分のレシピに置き換えて、まったく同じように書き直してみても。
せっかくのご自分の料理をちゃんと伝えたいと思うならば、言葉による伝え方についても気にしてほしいなって思うんです。

「おいしさを伝える言葉」を再編集してみようか

コロナ禍で対面で味わっていただく機会が激減している今、料理のおいしさを伝えるにはネットを利用するのが最適かつ最強の方法。
とすると、言葉を磨くしかない、ですよね。動画であっても同様だと思うんです。
だから既存の料理本は、「おいしさ」の伝え方、書き方トレーニングのための教科書として、使ってみてください。
マネするって最強の練習方法ですよ!

そういえば私も、少し前にお年玉企画として、メルマガ読者とFacebookで見てくださる人に向けて、「おいしさを伝える言葉」をまとめて、電子小冊子にしたことがありました。
「おいしい」を伝えるため、「おいしい」という言葉を使わずともいろいろな方法、表現方法がありますよって内容です。

この自粛期間中に見直して、再配布してみようかしらー…欲しい人いますかー?


ありがとうございます。新しい本の購入に使わせていただきます。夢の本屋さんに向けてGO! GO!