付喪神から見る異形頭

※この記事は、怪文書アドベントカレンダー!! Advent Calendar 2021への12/11参加記事です。

【前日の記事】

 そういえば、ヤツハシの語源の一説として足が早く八日もしたら傷んでしまうから、と呼ばれだした「ヤツアシ」が転じた……なんて説がありましたっけ。 養殖技術も無く、輸送手段にも乏しかった頃には本当に新鮮なヤツハシというのは貴重だったのだろうなぁ、と思います。
 しかし天然物のヤツハシ、合法となった暁にはいつかは食べてみたいものです。

それでは、これより本記事の始始。

【私について】

・明兵衛(無機物・陶器製:コトシタ)
・ホルスト(異形頭・元地球儀→無:ハナ出身)
・Shannon(異形頭・コーヒーミル:茨街)
・佐之方(無機物・銅像:ハナ)

等をPCとしてきた、無機物から異形頭くらいの範囲を中心としている空定という辺境のPLであります。方針的に怪文書でも良いとされているらしいので、慣性の法則に任せて差し込んでみた。とりあえず全力で駆け抜けることとする。
一応、読める形の怪文書にはなっていると思う。

【異形頭とは】

 これ、といった定義こそ打ち出されてはいないもののこの記事では「常人と異なる造形の頭部を持つ者」とする。広義な物であればエルフのような長く尖った耳や1つ目のキュクロープスなども入ると思われるし、当然鳥類や獣の頭部を持った、獣人に近い者や無機物を据えた者も異形頭の一つである。
 しかし今回は「付喪神から見る」という題の通り、「道具」をPCの中心に据えた無機物的な異形頭をメインとさせて頂きたい。

【付喪神とは】

https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00013599/explanation/otogi_05

 こちらについては大体の理解で良いので上記URLにて大雑把に掴んでおいて欲しい。
……というのもあまりに不親切だと思うからざっくり説明すると、「年季の入った道具に魂が宿り、人の姿を取った妖異みたいな何か」である。とりあえずはこれくらいの理解で問題無い。

 PLとしてもこの「道具に魂が宿る」という考え方が割としっくり来るからか、どの創作世界を見てもどこかしらに転がっている。

【長短について】

 人の機動性と道具の機能性を持ち合わせ、片方で活躍すると思えば片方ではあっという間にポンコツと化す、それが付喪神系の異形頭の醍醐味ではないだろうか。
 何より、「頭が人と違う」というのはロールフックとしてはもってこいだ。絵があろうがなかろうが「確実に人間とは違う」ということを主張することが出来るのも大きなメリットである。

 そしてデメリット。リアル寄りの世界や場所にはその存在感の強さが故に「そんな存在いるわけが無い」となってしまう可能性が強く、行動範囲に制限が出やすくなる。何よりこういうことは多々あるから、そういうものだと素直に涙を呑んだ方が良い。
 あと、頭部へ据える物によっては飲食不可、発話が出来ない等人としての機能が制限されることも多い。不思議な力で解決を図るのも悪くないが、「異形頭が故に出来なかった」というのも特徴の一つなのでそこを潰すかどうかは困った時に決めても十分に間に合ったりする。とどのつまり、不思議な力で存在する無機物の延長線なのだから。

【頭を据える】

 では、どういう「物」を頭として選べばいいのか、という話。

 何を、で詰まってしまった場合はとりあえず目の前を見ることをおすすめしたい。天然であれ人工であれ、物は生活する限り全ての場所にある。それはスマホかもしれないしタンブラーかもしれない、時計なんかはオーソドックスなところだ。しかし、デジタル時計の頭はあまり見たことがない。一つくらいあってもいいかもしれない。
 部屋より外に出たなら尚更増える。なんならスケールを完全に無視して信号機や、彫刻、しまいにはクレーンやビル等でも構わない。
 何はともあれ、考えついたものを全て据えてみることが異形頭への第一歩なのだ、きっと一つくらい面白い組み合わせがある。保証はしない。

 しかし、何故人のサイズになったのかはきちんと考えることも忘れないでおきたい。さもなくば原寸大のクレーンヘッドな異形頭が地を轟かしながら闊歩しているか、己の頭部で首から下が圧潰することになるだろう。

……それもそれで楽しいかもしれないが。

【経歴を問う】

 次。「それ」はどのような経歴や背景を持つのか?という話。
 道具は道具である以上、そのバックグラウンドから考えておかねばならない。全ての道具には過去があり、その用途や扱いは道具を静かに変容させていくのだから。

まず考えられるのは

製造時期(When)
生産地(Where)
使用者(Who)
特技・特性(What)
人化の動機(Why)
人化の方法(How)

の5W1H。そこから思考を伸ばし

職業病(元道具としての所作や癖)
性格(それはいつ使われるのか?etc.)
外見(どのような人物の衣服がファッションの基準となったか) etc.

 といったこと等が、中心に据える物に対してのイメージから作れる要素だろうか。個人的には、ふんわりとでもキャラクターの履歴書や年表のようなものを意識すると若干作りやすい。
 この設定詰めの作業は擬人化に近いが、異形頭と擬人化は「完全に擬人である必要は無い」という違いがあるように思われる。

 例えば、未だ道具だった頃に出来ていた行動が人の身体を得てしまったが故に急に出来なくなったり、不便になったりすることが挙げられる。
 投光器が頭に据えられたとして、己の顔面が1500ルーメンを超える光を発し始めたらまともに前が見えるか、ということだ。

……私は見えないと思う。ついでにそういった強力な投光には瞬間的なエネルギーもそれなりに必要だろうからとにかく疲労だけが積もり、しかもその恩恵を自らが受けることはほとんど無い。なんなら「消灯している時がほとんどで性格的にも暗め」なんて設定があってもいいくらいだ。「点灯には外部エネルギーを要する」という条件なんかも付けてしまえば本格的に頭部だけでは機能しないことになる。日常から重い電源を背負っており、点灯時には真っ先に己の視界が奪われる投光器の頭部を持つPC。なんて面倒くさい奴だろう。

 これは擬人化ではあまり見ないケースだが、異形頭なら許されることがある。異形頭とはそういう物なんだ。多分。

【情報の開示】

 異形頭は、確かにそれが物であった時から外界を見ているかもしれないが「それらを全て覚えている訳では無い」ということも述べておきたい。USBメモリーにだってデータ容量がある。
 例えば、博物館に50年置かれていた古いタイプライターがかつての己の役割を完全に思い出すことが出来るだろうか。ましてや博物館に来た観客の一人を思い出すことなど、よっぽどのインパクトが無い限り厳しいことだろう。
 物であれ、人であれ記憶というのは常に有限である。日常的な忘却は勿論、PCにとってのキーとなることを自己防衛反応の為に忘却したり、損傷によって記憶が一時的に飛ぶことがあってもいい。

 そして、その使い方によってはそうした設定が大いなる闇となり、周囲へとロール的な影響を及ぼせることは明らかだ。
 しかしこういうところに暗がりを詰め込みすぎるとあとで苦労することは間違いない。付喪神になるレベルでぞんざいな扱いをされたとしても、そのように闇が深すぎると別の意味でロール的な行動に制約が掛かりやすいのだ。

【そこからの話】

 一つの道具が、人の形を取って動き出した。しかし道具はあくまでも道具であり、当然ながら動かしてゆく過程でも周囲の環境に合わせて変化していくことがある。
 例としては損壊だろうか。ロールの成り行きで損壊や消失といった事故があっても動く分には問題が無いと判断されたのならPC自体は動けるのだ。ここは人間とは大きな違いで、顔を吹っ飛ばされて半壊しようとも立ち上がる可能性がある。勿論そのまま倒れてもらっても構わない。修繕してくれるまで動けない、といった展開もまた良しとしたいからだ。こういうことも、無機の異形頭ならではのロールである。存分に堪能すると良いだろう。

 次に修繕。元々故障していたPCが何者かの手により修繕された、或いはオーバーホールの末に再び使える状態となった。そうであれば、これまでは長年そうであった「道具が道具の機能を果たさない」というコンプレックスが払拭されたこととなる。当然ながら心境的にも大きく変化するし、そこから始まる希望や新たな問題が次々と生まれてくることだろう。設定は生えるもの、とはよく言ったものだ。

【終わり】

 これまで異形頭について怪文書として語った訳であるが、如何だっただろうか。

Pitti1097さんの『いつかのための無機物PC入門』(12/08)
 https://note.com/pitti1097/n/ne8a6a32363a6

に触発された形で書いたが上記の無機物PCとはまた違った趣で作ることが出来る、ということがなんとなく伝われば嬉しい。
 無機物同様、理屈による説明は飛ばせるのに加え、「ルーツによる説明」が強力なキャラ付けと出来るのが異形頭である、という主張を最後に、この記事を終えたい。

 次の記事は野田ハレトキさんの『定期ゲ民もすなるあどべんとかれんだぁといふものを、私もしてみむとてするなり』。
 タイトルからは内容こそ推察出来ないものの、何やら古風な匂ひがします。

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