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誤作動する脳

義父がレビー小体型認知症という症状であることを知り、さらにADHDという発達障害の一つと組み合わさっていたと。どうとらえればいいのかわかりませんでした。幻覚が見えたりするまだまだ認知されていない症状。
(その時の経緯はこちら https://note.com/cony/n/n45c4850ae0e6
あの俳優、ロビン・ウィリアムズさんもレビー小体型認知症だったと言われています。

義父の場合は、レビー小体認知症だけでなく、ADHDもあった為に薬の調整が出来ませんでした。
先生がずっと頭を痛めていたのは、不眠と突発的な行動。
うつ病的な症状とはかけ離れて、無茶苦茶元気があり動き回ります。
恐らく、これからそんな人がちらほら出てくると思います。

イタリアの学者アンジェラ・ゴリムストックは、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症のADHDの合併率を調べた結果、レビー小体型認知症は47.8%、アルツハイマー型認知症は15.2%、健常な老人は15.1%という報告をしています。レビー小体型認知症の患者さんの約半数がADHDということになります。

2020年3月、義父や義母の介護、ニュージーランド事業の休止、農業を始めて撤退など色んなストレスと闘ってきた私の頭も変調を始めました。
ヤバいぞ、これは。

そこで出会ったのがこの樋口直美さんの「誤作動する脳
レビー小体認知症の幻覚はこんな感じで見えるのか、モノを忘れるというのはこういう感覚なのか、嗅覚が衰えるとこうも世界が狭まるのか。

医者の立場での著書や、介護者の立場の著書はたくさんありますが、当事者の著書をはじめて見ました。
50歳でレビー小体型認知症と診断された著者さんのとてもリアルな情景と感情が混じっており、認知症はこんなプロセスで悪化していくのか、こんな気持ちになのかがよくわかります。
ストレスが症状を悪化させますが、ストレスは人によって感じ方が違う。
ストレスを与える人は何気ない一言でも、受取る側はそうではないのですよね。

そして、何よりも参考になったのがお薬への対処について。
短い項目ですがとても大切なことが書かれています。

そう、義父もそうでした。
薬が合わないから何度も何度も何度も何度も繰り返していく。
患者という人ではなく、何かのモノのように観察をしていく。
ただ患者家族視点では、ほんまにちゃんとやってくれてるのか?としか映りません。でも、医者は医者で結果が出ないことに焦ってもいる。
だからどんどん薬を出していくという悪循環なのですね。

「治療とは、視界のきかないジャングルを踏み分けて進む冒険のようだ」と著者さんはおっしゃっていますが、それは本人も、医師も、そして家族も一緒。向き合い方はそれぞれ違いますが。

ここで紹介されている別の著書からの抜粋ですが、

診断とは、治療のための仮説です。最後まで仮説です。「宣告」ではない。

中井久夫「こんなとき私はどうしてきたか」

病気だけを見るようになると、それに囚われ薬の大量投与しかありません。だから、常に患者に寄り添い、常に仮説を検証していくしかないと思っています。その為にも、医師、患者、家族が常に思っていることをオープンに話していける環境が大事だと思います。


私自身、2021年の後半から今年の前半、誰かに会える状態ではありませんでした。何も出来ない状況の中、会わなければいけない、話さなければいけない人とだけ話をしていました。
そんな状況を知っている中でも、自分の都合を押し付ける人がいることには驚きましたが、関わり方を変えるしかありません。

そんな中で鍼灸で身体の内を整え、運動により身体の外を整えることで徐々に復調してきました。
脳のことも勿論学びましたが、もっと身体全体で見る必要があり、部分的な誤作動は筋肉と内臓の誤作動だというのも感じ取れるようになってきました。
以前、うつ病は筋肉が冷えているから、というのを教えて貰いました。
これから色んな治療方法や薬が出てくると思いますが、何か、あるいは誰かに頼るのではなく自ら治す意思が必要なのではないか、と思うのです。

この著書を通じて、著者の自分の症状に向き合う強い意志を感じました。
そして、悪くなるだけだと思い込んでいたレビー小体型認知症が良くなることもあるんだ、と初めて希望を持てました(私がそれではありませんが)。

認知症であきらめ、希望を失った人たちに希望が持てる本だと思います。

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