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相向かいの関係性からの根源的な脱却~コンビビアルなマネジメント⑨

 素の自分と向き合い自己肯定感を獲得する姿勢についてこれまでお話してきましたが、もうひとつするべきことがあります。それは他者を理解することです。当然ですが人はひとりでは生きていけません。企業もひとりではできないことをするために存在します。前項において、自己理解を進めるために自然と人の関係性を見直すことを提案しましたが、ここでは人と人の関係性の再生についてお話します。

 他者を理解するためには、人と人の関係性を再生しなければなりません。

 もう少し具体的にいえば「差異を尊重し認め合う関係性」の構築をする必要がある、とわたしは考えています。
 現代社会は今、分断されています。この分断は差異(特に文化的差異)を許容できないところからはじまっています。これまでの社会はこの分断を「活用」して成長してきましたが、それは既に破綻し、新たな価値観、知の基盤の実体化が必要な時期にきています。「真に」差異を尊重し認め合うには「本音」で話すこと、コンビビアリストである個々人がこれまで獲得してきた(耕してきた)「生」の経験知や暗黙知、身体知を情緒的・非言語的なものを含めてフラットに語ること、が必要です。

 では、企業やコミュニティで、そのような関係性を築くにはどのようにしたらよいのでしょうか。それぞれ、個別具体的な環境/場所で事業を営んでいるので、そのプロセスはまちまちになります。企業も事業も生命体、動的な運動体、ですのでまちまちであるのが自然です。しかし、そのプロセスの根底に流れる姿勢は同じです。その姿勢の核となるのは、「相向かいの関係性」からの根源的な脱却です。

 「相向かいの関係性」、言葉の響きはよいように感じられるかもしれません。きちんと向き合って、話をする、そんなイメージでしょうか。勿論、それは大切なことです。

 しかし、それには前提条件が必要です。どんな前提条件か。

 それは「相手と同じ方向をみる」ということです。また自然のなかでの例えになりますが、森のなかを二人で散歩していることを想像してみてください。目的地があるかどうかは別としても、二人で森のなかを歩くとき、見つめ合っていると前に一向に進まないですし、進もうとしても転がっている石や枝などで躓きかねません。とても危なっかしく、まともに歩けたものではありません。歩みを進めるときには、相手と同じ方向をみる、という姿勢が必要とされます。

 日々の仕事でも同じではないでしょうか。上司部下の関係でも同僚との関係であっても、相手と向き合う(忖度しやすい関係性ともいえます)ことではなく、同じ方向をみることに注力する、この姿勢があるかないかで、関係性の基盤はまったく違ったものになります。これは精神的なことだけを指しているわけではありません。物理的にも、同じ方向をみる、という行為によって、その「場」の空気感は変化します。

 会議室で向かい合って対話しても、そこにフラットな関係性は発露しにくいものです。昨今、オフィスやミーティングスペースのあり方がどんどん進化してきていますが、その方向は「相向かいの関係性」からの脱却にあるように感じます。一度相向かいの関係性が築かれるとそこからの脱却には環境や機会を含めた何かしらの仕掛けが必要になるからです。この脱却に向けて、色々な仕掛けがあらゆる場所で模索されていますが、その場にいるだけで自然と相向かいの関係性から解放され、フラットな関係性が築かれる「場」があります。

続く

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