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本人たちが笑っていても兵役は明るく伝えるニュースではないと思う

2023年4月、クローズドな場所に書いた文章を転載したものです。

日本も軍備増強を進めているうえ、自衛隊は隊員募集に苦労しているらしいので、いずれ徴兵のような話が出る可能性もあるけど、K-popファンとして私が見ている限り、「兵役義務につく」ってこんなカジュアルな雰囲気じゃないです。

昨年末からBTSの兵役が始まり今2人が服務中ですが、入隊前の様子はどちらも「見ていられない」という言葉がぴったりでした、私にとって。少なくともBGMはDynamiteじゃないです絶対。

事務所が「メンバーの〇〇が入隊準備を始めます」と発表して約2か月後に入隊日を迎えるのですが、当のメンバーのその2か月を見ていると、すごく痩せたり、やつれたり、ナーバスになっている様子があったり。

その原因は、いろんなコンテンツや情報を見て想像するに、

①兵役中の 1年半+α は仕事ができないので、入隊前に根をつめて仕事をして疲労する
(レコーディング、パフォーマンス、コンテンツ撮影など)

②兵役から戻ってきたときに自分の居場所があるかどうか不安
(韓国の音楽シーンの変化は日本以上に速い)

③自分の仕事や趣味、親しい人たちから離れ、好きなものを食べたり好きな服を着たりスマホを自由に使ったりできない、つまり、世間から隔離され基本的人権を制限された生活を送ることを想像するストレス

③' 特に、表現する仕事つまり「個性」こそが彼らのキモなのに、歌うことも踊ることも詞や曲を書いて発表することもできない。
しかも自身でかなりの裁量をもってグローバルレベルのプロジェクトを遂行してきた経験と力があるのに、個性を発揮する機会どころか、むしろ「個」を殺して管理される1年半…長い…

④軍隊生活の不安
新しい集団生活になじめるか? また、体力的なことや人間関係への不安など

⑤軍隊の不安
軍隊なので手りゅう弾や銃、ガスを使う訓練もある。事と次第によっては実戦投入されないとも限らない。ようは非人道的な世界への不安

‥‥って感じでしょうか。

①と②は芸能人特有の悩みだけれど、音楽シーンが激しく移り変わるのも、「軍白期(=軍隊服務中のブランクをこう呼ぶ)」を埋めるため、入隊前にハードに仕事をするのも、そもそも兵役制度があるから起こる現象でもある。(それだけが理由とはいわないが。)

一般の男性は、通常、大学を1年半休学するなどして二十歳前後で入隊するらしいので、仕事のキャリアに影響はさほどないにしろ、親元で暮らしたことしかないような若い子には「1年半も厳しい軍隊生活に耐えられるのか」というのは深刻な不安でしょう。

だから、芸能人でも一般の人でも入隊前はすごくナーバスになって、塞ぎこんだり荒れたり、酒浸りになったりする人も多く、「あいつはもうすぐ入隊だから」の一言で周囲は「ああ‥‥」と察し、そっとするものだとか。

それぞれの仕事で忙しいメンバーが、ソウルから遠く離れた新兵訓練所にわざわざ見送りに駆けつけるのも、たとえ「それも仕事(露出)」という部分があるにせよ、軍隊に入るメンバーを最後まで力づけたいから、1年半の別れがそれだけ重いからであって、写真だけを見ると明るく微笑ましいけれど、公開された動画を見ると、「こらえている様子」に胸が詰まります。
実際泣いていたりもするし。

韓国の男性全員に課せられた義務なので、みんなつらくても耐えるし、公式な場では「がんばります」「国防の義務を喜んで果たします」と言います。
兵役を終えると社会的にも一人前の男性とみなされ、本人の自信にもつながるようです。

でも、言葉にならない、言葉にできない不安や葛藤を抱えながら入隊する様子、見送る様子には、やっぱり「見てられない」という気分にさせられます。

軍事行動の決定権をもっているのは、現場に行くことのない上層部。
意思と関係なく徴兵されて苦しむのは若者。
国防上の必要性もあり、韓国の国民はこの制度を受け容れているのだろうけど。

BTSファンとして兵役の状況を細かく追っているので、
「実態はやっぱり悲惨だよ」
というのは、日本の人たちに伝えたいですね‥‥。

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